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「おばちゃーん、串焼き二つくださいな。」
「あら?お久しぶりだねぇ、帰ってきたのかい?」
「んーん、ちょっと野暮用でこっちきただけ。」
「そうなのかい?・・・それにしてもまた別の女の子かい、なんていうか・・・。」
「あー、この子は知り合いの妹さん。妙になつかれちゃって・・・。あとちょっと事情もあってね。」
「ぅー?」
いつもの。
世間話ついでに腹ごしらえをする。
ちょうどいいので試験も兼ねて設定を取り出す。
クフーは知り合いの妹さんでその知り合いってのがアインツ達ってことだな。懐かれたってのはまぁ、口から出まかせですけど。
「へー、そんなことがあるんだねぇ・・・。」
「まぁ、それで少しでも力になれるならって思ってね。」
「大変だねぇ・・・。はい、これサービスだよ!」
「あー!」
「きっとありがとうって言ってますよ。」
そしてそのまま設定を流し込む。話し好きのおばちゃんならアインツ達を見た時話したりして多少なりとも広がるだろう。
まぁ、別にそっちはおまけだ。
おばちゃんからサービスでもらった串焼きをクフーが美味しそうに頬張る。一個目は俺の真似して恐る恐るだったもんな。
初めて食べる物はどうやら気に入ったようです。
「んー、口についてる。」
「ぅー!」
齧り付き方式なので口についてますよ。
適当な布で口元を吹いてやる。
「仲よくていいわねぇ。」
「誰とでも仲良くなれるのが俺の強みっすからね。」
「そのおかげでシェリーちゃんは怒ってるんじゃないかい?」
「それはそれ、これはこれでして・・・。そういえばおばちゃん、最近変わったことない?」
「ないよ!至って平和だねぇ。」
おばちゃんがきっぱりとそう言う。
こっちは別に平和そうっすね。いや、俺が備えすぎてるだけともとれるが。
それから少し世間話をして、おばちゃんと別れた。
結局クフーは串焼きを4本食べました。・・・服の端っこ引っ張っておねだりは正直狡すぎると思いませんか?
「こちらが商品です。」
「ん、確かに受け取りました。来るのが遅れてすいません。」
「いえいえ、・・・それでそちらの方の服ですが。」
「えぇ、ちょっと私はわかんないので選んで欲しいのですが・・・。」
「ぅー!」
「・・・この通り言葉が不自由でして、それとちょっと幼児の様な行いもします。」
「ぅー・・・。」
「・・・はい、なるほど。・・・大丈夫ですよ、お子様に接するようにすればいいんですね?」
「はい、お願いします。」
「ぁー?」
そして、そのままメイド服を受け取りに服屋に。
注文通り、前のと一緒のメイド服を受け取る。
これで毎日メイド服のエル達が見れるわけだな。目の保養にほんといいですね。
ついでにクフーの服も何着か買いますよ。店員さんも慣れたものなのか、普通に承諾してくれる。
クフーは別に暴れるって事はしないからな。ちょっと手間がかかるってだけで。
そしてそのまま店員さんが見繕った服を持って部屋の奥にクフーを連れて行った。めっちゃ悲しい目をするのはやめてほしい、俺がついていって着替えを見るってわけにもいかねぇだろ、恥ずかしい。
「これで最後です。」
「あぁ、いいですね。・・・結局全部いいんで、全部買いますよ。」
「ありがとうございます。」
「あー!」
安心と信頼の店員さん、クフーがまるで着せ替え人形みたいにどんどん服を変える。
5着程、見繕ってもらったがどれも似合ってる。なので全部買います。・・・俺に見せられても似合ってるって感想しかでないのであんまりよろしくはないと思うが、まぁクフーが楽しそうなのでよしとします。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
現在黒いドレスみたいな服を着てるが、気に入ったっぽいのでそのままそれを着ていく事に。
店員さんに見送られて店を出る。・・・都合金貨4枚くらい使ったぞ。やっぱ服って金かかるわ・・・。
「うー!」
「うん、似合う似合う。・・・あんまり裾あげないようにね?」
それでもクフーが嬉しそうにドレスを見せてくるので問題はねぇな?
燥いだクフーを連れてそのまま冒険者ギルドに戻る事にした。
「お待たせしました。」
「あぁ、いやおかげでよく話せたよ。」
「はい、ミストさんの事もよくわかりました。」
「冒険者ってやっぱ大変なんすねぇ・・・。」
戻ってみるとそれなりに会話が弾んでたようでアインツ達は楽しそうにおしゃべりしていた。
「結果から言うと、特に問題はなさそうだね。預かろう。」
「お、ありがとうございます。・・・ではこれ報酬です。」
「前払いでいいのかい?」
「えぇ、ミストさんは信用出来ますしね。」
信用出来るのでこうして頼んでるのだ。前払いくらい問題ない。
「・・・ん、ちょっと多いな。相場が難しいと思うが・・・。」
「まぁ、ちょっと面倒な仕事ですし。前例があまりなさそうなのでその金額で。それに衣食住もお世話になるわけですし。」
「・・・わかった。責任を持って預かるよ。」
交渉成立である。
後ろの机でアインツ達がハイタッチして喜んでる。まぁ、ここでこけたら元も子もないしな。
「・・・クフーちゃん、その服よく似合ってるね。買ってもらったのかい?」
「うー!」
ミストが仕事の話が終わって気がついてただろうクフーの服を褒める。
クフーが嬉しそうに見せびらかしてるので褒めてもらうのが嬉しいんだろう。
そのままアインツ達の方に行って見せびらかしてるし。・・・うん、いいですねぇ。




