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「あれ?リードさん?馬車はどうしたんですか?」
「それな!聞いて、話蹴ったら歩いて帰された。笑えるよな!」
「えぇ・・・。」
そろそろ村に着くってとこで俺は少し寄り道をしてメルの様子を見にいった。
・・・すぐにでも気分転換したかったしな。
呆れた顔をしているメルがありがたい。
「いやー、別にそんな遠くないからいいんだけど。おかげで昼食を携帯食料で取ることになったわ。」
「まぁ、歩きながらですもんね・・・。」
「そんで今何してたの?」
「えっと、今は足腰を鍛えてて・・・。」
「主様。」「おかえりなさい。」
「あぁ、ただいま。・・・うん、息災だな。」
メルが説明しようとした瞬間に雷風もこちらに寄ってきた。
まぁ、俺がいない間家はシェリーが守ってるだろうし、メルの護衛だな。・・・出来るだけ日常は壊したくないし、やれることは自由にやってもらいたい。・・・なんとかするのが俺の仕事だ。
「なるほど、森経由してのマラソンか。今は休憩中か?」
「あっ、はい。・・・そんなこともわかるんですね。」
まぁ、聞いといてなんだが気配探ってたしな。
メルが自分で考えたんだろう。俺のお気に入りの場所を中心として森に入ったり出たりしながらマラソンして体力とつけてるんだろう。足場の悪いとこでも走るのはいいチョイスだ。
「・・・雷牙と風牙は的役か?」
「護衛も兼ねていますが。」「森の中と外に別れて一緒に走って魔法で的を作っています。」
「うむ、よきよき。」
ええやん、俺がなんも言わなくても自分達で考えてくれる。ええやん・・・。
こうなるとシェリーが最近自分の魔法をサボってるのが気になりますねぇ。俺とやるくらいしかしてないんちゃう、あの子。
「・・・これでいいんでしょうか?」
「ん、不安か?」
「・・・少し。」
まぁ、周りがアホみたいに強いしな。・・・未だにメルは置いていかれてる立場だろうし、不安だろう。ただ、今一番伸びてんのはメルだ。・・・これは言っといたほうがいいか。
「大丈夫だ。今一番強くなってんのはメル、お前だからな。」
「そう・・・ですか?」
「自覚はないかもしれんが。・・・一応聞いとくが、今そんな息切れしてないよな?」
「え、はい。そんなには・・・。」
「さっきまで森走ってたのにそれだぞ。村に来る前に森でちょっと狩りしてたときはすぐに息切れしてたのにな。・・・魔法の訓練もそうだろ。朝の訓練とかで頭が痛くなるか?最近はねぇだろ?」
「あっ・・・言われてみれば・・・。」
難しい顔をしていたメルがハッと驚いたように顔を変える。
「メルは見てる目標が遠すぎるんだ。まぁ、俺とかいるから仕方ないことだとは思うが。一歩一歩確実に、強く、そして戦えるようになってきてるから。」
「・・・。」
「・・・そろそろ父さんも試しで使ってくれるさ。」
これは俺が言っておこう。そろそろメルも体力は大丈夫だろ、連携面とかの強化を優先してほしい。
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、間違いないさ。ほら、休憩終わりだ。行ってこい。」
「はい!」
よほど嬉しかったのか飛び上がるほどに喜ぶメル、そのままの勢いで森の方に走って行った。・・・うん、自分が役にたてるようになるってのが嬉しいんだろうな。
「雷風も行っといで。俺はここで少し休んでから帰るから。」
「「はっ。」」
揃って返事をして雷風がメルの方に駆けていく。
さて、俺も久しぶりにここで演奏しましょうかね。
色々落ち着かせるためにも休憩は大事なのである。
「わ、わわ、っとと。」
「いいじゃん、大分様になってきてるぞ。」
割りと長く演奏してたみたいでメルが帰る時間になっていた。
なのでメルと一緒に雷風に乗って帰宅した訳だが。
幸い俺はすぐに乗れるようになった。雷牙がこっちの意思を汲んでくれるってのもあるんだろうが、歩かせるくらいなら問題ない。これで走らせるのはまだかかりそうだが。
一方風牙に乗ったメルはめっちゃ苦戦してた。
最初は風牙が歩く度にバランスが崩れるのでその度に風牙が止まるってことになってたが、普通はそうなんだろう。むしろ、誰も補助に付かないで乗るってのが間違ってる気がする。
「正直メルが雷牙達を自由に乗りこなせるようになったら、平地じゃアホみたいに強くなるんだが。」
「わわ、そう、なん、ですか、あっ。」
まだグラグラとバランスを取ろうとあがいてるメルが返事をくれる。
・・・正直、バランスとるのは風牙に任せたほうがいいと思うんだがな。ま、それは言ったがイマイチわかってないみたいだが。
もう俺は今は雷牙にほぼ任せてる様なもんだ。
「・・・。」
「すいませっ、風牙さっん。」
「いえ、いいのですが・・・。」
風牙の上でさっきから何度も風牙に謝ってる。
「・・・主様とどこが違うのでしょうか。」
「んー、さっきも言ったけど俺は普通に雷牙に任せてるだけだからなー。・・・メルの場合は自分から合わせに行ってるからバランス崩すんだろうさ。」
「なるほど、・・・次の訓練にはメルを背に乗せる訓練もしたほうがいいでしょうか?」
「あぁ、余裕があるならやればいいさ。・・・訓練する場所に行く時とかな。乗馬って結構筋肉使うらしいしな。」
「わかりました。」
こう馬に乗って散歩とか、やっぱり思った以上にいいですねぇ。
この速度でも十分気持ちいいってことは走らせたらもっと気持いいってことだもんな。楽しみです。




