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まず目に入ったのはなんか悪趣味な机とか椅子だった。

なんでこの屋敷の中でここだけ変な趣味してんだろ。新品っぽいので買い換えたばっかりとかそんなんか?・・・なんだろ、机の端に変な模様とかあるし椅子の手すりにはまた変な彫刻みたいなのされてるし。厨二っぽさが溢れ出てる感じ。見ているこっちが恥ずかしい。

そしてやたら奥の方にこれまた豪華で悪趣味な椅子に座ってるぽっちゃり貴族風の男。

こいつが領主の息子のケンプとか言うやつだろう。前見たやつだわ。

そしてその隣に立ってんのが執事でもなく、あの護衛っぽい人相の悪い男。

・・・歓迎されてる感じが微塵もしないのが笑える。いや、笑っちゃいかんけど。

「リード様をお連れしました。」

「ふん、見りゃわかる。・・・座れ。」

おーい、これは歓迎されてるとかそういう問題じゃねぇわ。おもくそ敵意向けられてるわ。

「はぁ、失礼します。」

今すぐここ焼け野原にして去ろうかと考えたが滅茶苦茶シグニが申し訳なさそうな顔をしていたのでここは堪えるとしよう。

悪趣味な椅子を引いて自分で座る。

そして、シグニがお茶を俺の目の前に出してくれる。

「ん、ありがと。」

「・・・ふん、農民の分際でそこに座れるだけ感謝するんだな。よければその茶器も持って帰るといい。」

「あー、ありがとうございます?」

焼け野原がクレーターにレベルアップしたんだが?

愛想笑いをしながら適当に答える。シグニはもう少し離れたところで顔を伏せてた。

「・・・貴様、少し前までティスカ公国にいたらしいな。」

「はぁ、いましたけど。」

「城の方で何かをやっていたらしいが・・・まぁ、そんなことは関係ない。」

「そうですか。」

そっすか、に近い言い方だわ、こんなん。

こいつ、俺がティスカ公国にいた事調べたのか。・・・まぁ、城の方にまでは調べが行ってないみたいだが。

「妖精だと噂の魔法使いの女いるだろ、そいつを言い値でいいから売れ。」

「あ?」

「・・・え?」

自分でも驚くぐらい低い声が出て、ミシリと手元の手すりが音をたてた。いかんいかん、物に罪はない。・・・錬金で直しとこ。

シグニが驚いてる顔してるので本当にシグニは知らなかったんだろう。

「ついでにメイドも買ったんだろ?そいつらも元値より高く買ってやろう。」

「・・・。」

もう声が出なかった。

さっきからニヤついてるこいつの細胞全部ぶっ飛ばして帰りたい。ついでにとなりでニヤついてる奴も消し飛ばしたい、別にお前は偉くねぇからな?消しても問題はそんなねぇぞ?

「そ、それはいくらなんでも・・・、急にそんな・・・。」

「・・・誰が発言の許可を与えた?お前には口答えする権利はない。」

シグニが抗議しようとするとぽちゃ貴族がシグニを睨んでそう言う。

「別に悪い話ではないだろ?平民として一生遊んで暮らせる金が手に入るかもしれんのだぞ?・・・まぁ、平民の一生などたかが知れているが。」

さらに続けるぽちゃ貴族。・・・とりあえず、お茶飲もう。・・・うん、淹れたては美味しい。

「農民の分際でメイドを雇うとは身分に合ってないのではないのか?それを俺が買い取ろうというのだ、これ以上光栄な・・・。」

「ふぁっきゅー。」

「・・・なに?」

「あぁ、失礼しました。つい方言が・・・。」

あぶね、普通に中指立てそうになった。穏便に穏便に・・・、仮にも俺の村の領主の息子。

「・・・折角のお申し出ですが、すみませんが遠慮させていただきます。」

「・・・ほう?何故だ?金貨100枚程ならすぐにでも出せるが?」

「いえ、シェリーもエルもルクも。領主の館にはふさわしくないと思いますので。」

「それはこっちが決めることだ。・・・仮にふさわしくないとこちらが判断したとしても貴様には関係のないことだ。」

「・・・。」

「まぁ、仮にそうだった場合、こちらも元手を取るため・・・。」

「家族なんで。」

なんかもう豚に喋らすのしんどいわ。遮って話させてもらう。

「・・・あぁ?」

「シェリー達は家族なんで。・・・家族を売るなんて真似はしませんよ。」

険しい顔をした豚をまっすぐ見てそう答え、椅子から立ち上がる。

もう限界だ。ここに居たくない。

「・・・どこにいく?」

「いえ、要件は済んだようなので帰ろうかと。」

「チッ・・・。後悔するぞ。売っておけばよかったとな。」

「そっすか。」

「・・・おい、お客様が徒歩でお帰りだ。門まで案内しろ。」

「え・・・。は、はい・・・。」

背後で豚の鳴き声とシグニの声が聞こえる。・・・まぁ、別にいいけどね。徒歩でも。

ちょうどいいので鍛えながら帰ろう。最近ブッ飛んでしかないからな。

糞すぎてお話にならないので自分で扉を開け、部屋の外に出る。後ろからシグニがついてくる音がする。

「・・・申し訳ありません。まさかあんな事を仰るなんて・・・。」

「・・・あぁ、まぁ、気にしてないよ。それにシグニのせいじゃないからな。謝らなくていい。」

一刻も早くあの部屋から遠ざかりたかったので少し早歩きになっていたがシグニに合わせるように歩調を緩める。

正直すぐにでもここ平地にして領主なんてなかった状態にしたいが、それはかなり色々なとこで不備が出るだろう。・・・まだ直接何かされたわけでもないのでそこまでやらなくていいしな。

ただもうこれは親の教育があれってもんじゃないぞ。あの優しそうな領主からどうやってあれが生まれたんだよ。・・・俺が思ってる領主と同一人物だよな?

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