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私はあの子供は好きになれない。

師匠が重要な護衛と言っていたので気合を入れて望んだのに。

やったのはただの子供の護衛だった。もちろん重要なのはわかっていたが、緊張感がなかった。

最年少で魔法団に入った少女の事は話には聞いていたのでどんな子だろうと興味があったが実際会ってみれば本当にただの少女だった。

見た目は確かに可愛いく、人懐っこい性格をしていると思う。

しかし、纏ってる空気が気に入らない。凄いという空気がないのだ。

魔法を使ってるところを見た訳ではないが、これでは町娘となんら変わりがない。

まぁ、今回の護衛でそれっきりだ。後は自分に関係はないだろう。

だが、送り届けた先でさらに不愉快な事が起きた。

はっきり言って私はあの男の子供が嫌いだ。

第一印象からいるのかいないのかわからないくらいはっきりとしない子供だなと思った。

師匠がお城に招待すると言った時には飛び上がりそうになった。

それを子供が間髪いれずに断ったときなど殴りかかりそうになった。

7騎士の一人に城に招待されて断る事が出来る人がどれだけいるのだ。

それをきっぱりと興味がないといった様子で断ったのだ。

それだけで嫌いになるには十分だったがさらに子供が反論までしてきたのだ。

師匠の言うことにケチをつけ、師匠に頭を下げさせたにも関わらずまた断ったのだ。

そして、事もあろうか師匠が言った、私と勝負すると言う事に乗ってきたのだ。

それだけでも【死線】の名前に泥を塗るようなものなのに、さらにハンデをつけると言う。

私はもうあの子供が大嫌いでハラワタが煮え繰りかえそうだった。


「フィロ、決して油断はするな。」

「わかっています。・・・自分は詩人などと言ってる輩には負けはしません。」

「・・・わかった、もう何も言うまい。」

油断?そんなのはない。あるのは余裕だろう。

あんなアホな子供に油断などするわけがない。

話によれば魔法はなかなかの使い手らしいが、これは槍での勝負だ。関係がない。

さっさと勝負を決めてしまおう。

「・・・一本勝負でいいのかな?」

「十分だ。・・・もっとも、泣きつくなら何本にしたって構わないがな。」

アホヅラを下げて子供が目の前に立つ。

・・・こいつは本当に舐め腐っているな、槍の持ち方すらまともに出来ていないではないか。

師匠が審判をつとめてくれるがこんな茶番さっさと終わらそう。

「・・・では、一本勝負。・・・始め!」

師匠の声と共に一足で飛び込む。



やっべ、槍の持ち方全然わかんね。

「・・・一本勝負でいいのかな?」

「十分だ。・・・もっとも泣きつくなら何本にしたって構わないがな。」

おぉ、挑発返し。やりますねぇ!乗らねぇけど。

見よう見まねで槍を持ってみるがしっくりこないな?

「・・・では、一本勝負。」

ディムルの声がすると同時にフィロだったっけ?そいつの体が沈む。

「・・・始め!」

と開始の合図と共にフィロが槍を構え飛び出してくる。

「ん。」

それをくるりと躱しながら相手の出方をよく観察する。てゆうか思いっきり鳩尾突きにきてたやん、絶対痛いやつじゃん。

「チッ!」

「ん。」

最初の一撃を躱されたのがお気に召さなかったのか後ろを振り返りながら槍でなぎ払うように顔面を狙ってきた。それをしゃがんで躱す。

「フッ・・・!」

「んー?」

フィロが一瞬息を吸い込み、槍を引き絞り小さくタメを作る。

そこから怒涛の攻撃が始まった。

突きから始まり、なぎ払い、足払いなどを交えながら徐々に鋭い攻撃が飛んでくる。

まぁ、しょっぱなから本気じゃなかったんだろう。フィロの顔はまだ余裕を持っている、そろそろ避けきれなくて痛い目を見るぞって顔してる。

まぁ、まだまだ避けるんですけどね。


そこから5分くらい避け続けた。

徐々に息が上がってきているフィロに比べて俺はまぁ、そろそろ体が温まってきたって感じだ。

もう見るのやめるか、フィロが多彩な攻撃してくれたから槍の使い方わかってきたしな。

「ん。」

「ッ!!」

避けるのをやめ、なぎ払ってきた槍を受け流すようにして弾く。

予想してなかったのか、フィロが驚いたようにたたらを踏んだ。

「ほい。」

「くっ!」

そこに突きを入れる。慌ててフィロが槍で弾く。

「ん。」

弾かれた衝撃を利用してクルリと一転し槍を叩きつける。フィロが唖然としながら避ける。

「知ってた。」

そっちの方向に滑るように槍で足払いをする。慌ててフィロが飛び退く。

「40点やなぁ。」

飛び退く距離と勢いが足りねぇな。すぐさまそれに追いつくように飛び出し、槍を向ける。

「グゥ・・・!」

それを辛うじて防いで反撃に回ろうと槍をこちらに突き出した。

「んー!0点っ!体制がくっそ。」

「アアァァ!!」

それを軽く体制が立て直しやすいように受け流す。

それがわかったのか、フィロが雄叫びを上げるように激昂し、槍を振り回した。


「うぅ・・・ヒック・・・うぇ。」

「えぇ・・・。」

何故かフィロが泣いてしまった。

はじめの合図から10分くらいたったのかな?それくらい打ち合ってたんだが。

突然動きが遅くなって、終いにはうずくまって泣いてしまった。

嘘だろ?何がいけなかったんだ。めっちゃ普通に打ち合ってたやん、俺楽しかったんだけど?

槍の使い方ちょっとわかってきたし、こんな俺と打ち合ってくれる人他にいねぇし、すっごい楽しかったんだけど?

あれか?あの二連突きを弾いたのがいけなのかったのか?完全に突き返したのが悪かったのか?

「・・・えーっと。」

「まぁ、ここまでだろう。・・・正直ここまでやるとは思わなかったが。」

流石に困惑したのでディムルに視線で助けてと合図をする。

「な、・・・ヒック、なんで、こ、んなやつに・・・ヒック。」

「・・・なんかごめん。楽しくなっちゃって。」

「う、うぅ・・・ウワーン!」

流石に悪いと思って謝ったらさらに泣かれた。なんでや。

「・・・ここまでプライドをズタズタにされると流石に・・・。」

「えぇ・・・、正直に言ったんだけど。」

ディムルが顔を顰めながらフィロのフォローに回る。

「えぇ・・・、俺が悪いってのはわかるけど、えぇ・・・。」

ハッと我に帰って皆の方を振り向くと皆呆れた顔をしていた。

いや、泣かせたのは悪いと思うよ?でもそんなんわからんやん!急に泣き出すんだもん!

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