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「いやいや、・・・おかしくはないかい?聞けば魔法はラトニス殿以上の使い手なのだろう?それに武力の方も・・・。なのに詩人なのか?」
「えぇ、詩人です。」
はい、私のメインジョブは詩人です。誰がなんと言おうと詩人なのです。
「えぇ・・・。」
これにはディムルも黙ってしまった。
「そういえばリーはどうして帰ってきたの?詳しい話は聞いてないんだけど。」
「ん、んー。簡単にいえば仕事を辞退したって感じかなー。」
詳しい話はディムル達がいるので出来ないが簡単に言ったらそんな感じだろ。
「えー、もったいないなー。」
「まぁ、そのへんの話はまた後でするよ。」
姉ちゃんを窘めながら話を切り上げる。ディムルがめっちゃ何かいいたそうだし。
「・・・あー、えーっと。リード君、単刀直入に言いたんだが。」
「はい?」
「君を城の方に招待したいのだが。」
「いえ、お断りします。」
オコトワリー。そんなん秒殺に決まっとるやん、何言い出すのこの人。
周りがめっちゃハッとした感じになってるが知ったこっちゃない。ディムルもポカーンとしてる。ていうか姉ちゃんもびっくりしてるってことは知らなかったのか。・・・怪しい感じがプンプンすっぞ!
「な、何故だい?」
「いや、めんどそうですし。」
「そ、そんなことで?あぁ、費用はもちろんこっちで持つ・・・。」
「いや、そんなことじゃないですよ。・・・そうですね、大体どんな感じなのか当てましょうか。」
途端にディムルの目が光った。
「まぁ、過程の話ですけど。姉ちゃんの師匠が俺に興味持ったんじゃないですか?変な魔法の教え方してますしね。んでディムルさんに護衛のついでに俺の事見てきてほしいって頼んだって感じですか。そんで実際に見たら、おかしいのがいる。・・・こんな感じですか?」
「ううむ・・・。」
ディムルが何か言いたそうにして、口を閉ざす。・・・大体当たってたか、これ外してたらめっちゃ恥ずかしいな。
・・・とは言え俺が異質ってのは見抜いてるみたいだが、どの程度かは全然わかってないな。シェリーの事にはノータッチだし、・・・たた単に魔力関係には疎いってだけかもしれんが。・・・雷牙と風牙は散歩に行ってて正解だったな。
「まぁ、そっちが色々と隠してるっぽいので俺は行きませんよ。」
「・・・わかった。話そう。」
とディムルが堪忍したようにそう言った。
ディムルが語ったのはほとんど俺の言ってる事と当たってた。城に連れてきてほしいと言うのは姉ちゃんの師匠であるエドランの頼みであること、あと普通にディムル個人も興味が湧いたらしい。
「・・・そういうことだ、黙っていてすまない。・・・なので正式にたのみたい、エドランに会ってはもらえないだろうか。」
ディムルがそう言って頭を下げ、となりの女の子がびっくりしたように慌てて同じ様に頭を下げていた。
母さん達はこの話に入るつもりはないらしくさっきから無言を貫いてる。・・・俺の好きにしていいってことだな。
「では正式に、お断りします。」
まぁそうなるな。
「・・・そうか、ではこうしないか?君も武術は嗜んでいるのだろう?」
「はぁ、まぁ一応は。」
「うちの弟子と一勝負して、その結果で決めるのは。」
「はい?めっちゃ嫌ですけど。」
何勝手な事言ってんだこの人。・・・って思ったけどあれだよな。
姉ちゃんの手前一方的に断るのは悪いと思ってるんだよ、姉ちゃんの師匠が会いたいって言ってんだし。
でもなー、そのお弟子さんさっきからめっちゃ俺の事睨んでるし、何より今の一言にめっちゃ不満そうなんですけど?
「まぁ、そう言わずに・・・。こちらとしてもそのままわかりましたと引き下がれないんだ。・・・友人の頼みごとなんだ。」
「えー、いや、言いたい事はわかりますけど。」
つまり落としどころをつけてくれるってことだろう。ディムルとしてもここまでやったのにダメだったらエドランにも話せるし、何より俺もそれなら納得は出来る。
「・・・本気ですか?私と?」
「・・・不満かい?」
「えぇ、全くもって。・・・年下の男をいじめる趣味はないので。」
「・・・そうかい。」
ん?あれもうこの女の子勝った気でいるのかな?ちょっとおらボコボコにしたくなってきたぞ?
「なるほど?じゃあやりましょうか?」
「・・・私が女だと思って舐めているのですか?曲がりなりにも【死線】の直弟子ですよ?」
「あぁ、じゃあハンデつけましょうか。貴方の得意武器は槍ですよね?それでやりましょうか。」
「なっ・・・!!」
必須スキルの挑発をしてやるとものの見事にはまってくれた。いやー、こいつチョロいわー、行動が手に取るようにわかるわー。さっきまでのクールな顔が台無しですよ?
毎朝準備運動はしているので問題はないが一応軽く手を振ったりしておく。
現在は場所を移して戦いやすいとこに移動している。まぁ、たんぽ槍での訓練みたいなもんだから広めの場所ならそれでいい。
「・・・リー、それでいいの?」
「まぁ、相手が落としどころをつけてくれたから。ここは乗っといたほうがいいかなって。」
母さんが一応心配してそう言ってくれた。
「マスター、くれぐれもやり過ぎないようにしてくださいね。・・・男の方はまだ信用ならないですし。」
「わかってるさ。・・・てゆうか俺が負ける事考えてないな?」
「当たり前でしょう。」
シェリーがさも当然みたいに言ってくる。
「・・・なんか変な事になっちゃったね?私、師匠がリーに興味あること知らなくて・・・。」
「姉ちゃんのせいじゃないよ。・・・むしろ姉ちゃんに直接頼まないってとこに好感が持てるさ。」
姉ちゃんの頼みだったらホイホイついてくからな、俺。本来の目的を隠していたとは言え城に招待って形で話を持ってきたのは良い事だろう。
「んー、リー君って槍使えたっけ?」
「いや全然?持ち方すらわかんねぇや。」
フランにそう返し、貸してもらったたんぽ槍をくるくる回す。
「ご主人様・・・、大丈夫なのですか?」
「まぁ、コイツのことだから大丈夫じゃない?」
「おう、心配すんな。槍の事はわかんねぇけど、身体能力じゃ負けねぇから。」
まぁ、ディムルって言う7騎士様がいるからリミットはかけさせてもらうけどさ。
「さて、純粋な初PVP。しますか。」
一応正式な形では初だろう。見知った奴とではなく、初対面の相手だ。・・・楽しませてもらいたい。




