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「おう、ボウズ。お前もこっちこいよ。」

「いやー、いいっす。」

「お前が助けたんだろ?」

鋭い眼光でそんなこと言われましても。

回りの人達はもう何もなかったかのように皆離れていってるし。ていうか虎っさんにしかあれ見えてないから、店の人困惑ですよ。

「なんのことやら。・・・俺ここでごはん食べてただけだし。」

「はー、あぁそう。お前もそういう感じなのね。」

心底呆れた感じで虎っさんがこっちに戻ってくる。

露店の人は頭下げてお礼を虎っさんに言ってるが、虎っさん興味なさそう。

まぁ、別にこう俺が出てってあいつらぶっ倒してもよかったよ?

でもめっちゃ見られるし噂になるし、そんで絶対厄介事になるじゃん?今もちょっとなってるけど。

後露店の人が女の人じゃん?獣人で全体が猫だとしても。・・・絶対シェリーがなんか言ってくるじゃん?また女の匂いがするとか絶対言うじゃん・・・。

そんなのお断りじゃん?

だから俺は食べ物の匂いだけつけて帰ります。

「あー、つまんねぇ。なんでこう強い奴に限ってそんな態度なんだ。」

「んー、さぁ?厄介事が嫌いなんじゃない?」

「お前もそのタイプかよ。・・・はー、つまんねぇ。」

穏やかじゃないですね。

「強い奴と会ったら戦いたくなるってのが当たり前の感情だろ?」

「いや別に?てゆうかさ、なんかそれだと俺が強いみたいな事になってんだけど?」

「いや、お前強いだろ?あんな芸当やれるんだからな。」

さも当然みたいに言われる。いや、まぁ、鍛えてるからそうですけど。

「ふーん、あれ見なかったら気がつかなかった?」

「いや?こんな近い場所で喧騒が起きてんのにビビらずに飯食ってる子供がいるってだけで興味が沸いたぜ?・・・雰囲気もちげぇしな。」

そういいながら俺の頼んだ料理を食べ始めた。・・・これ追加案件かな?

店員さんに追加の料理を頼む。まだ夕方にもなってないのでツマミ程度だが、夕食は家に帰って食べるつもりなのであんまり食べ過ぎないようにしたい。

「お?んじゃあ、ついでに酒もよろしく。」

「流石に自分で払えよ。」

「いいじゃねぇか減るもんじゃねぇし。」

「減ってる減ってる。」

えぇ・・・、虎っさん金持ってないの?

「冗談だ、冗談。ほら、酒の金。」

「料理はこっちもちですか、そうですか。」

「気にすんな。」

「ご注文のお品ですー。」

虎っさんが料金を机の上にポンと置く。料理と酒がついでに運ばれてくる。

「んー、いい匂いだ。これは酒がすすむな。」

「・・・てゆうか初対面だよね?なんで友人みたいな感じで飯食ってんの。」

「お?別に気にしてないだろ?ボウズはそんなん気にする感じしねぇけど。」

「いやまぁ、気にしねぇけど。虎っさんはどうなの、興味はもうなくなったんじゃねぇの?」

さっきの呆れた感じを見てると既に俺に対する興味はなくなったと思うんだが。

「あーん?まぁ宛が外れたってのはあるが。興味はなくなってねぇなぁ。」

「ふーん、・・・なんでこんな子供が強いのかとか?」

「いや、そっちは別に興味ねぇよ。」

「ん?あれ?そうなん?」

きっぱりと言われた。よく色々なとこで聞かれるからそっちだと思ったわ。

なんで君みたいな年でそんなことが出来るのかとか、実は魔族で人族に化けてんじゃねぇのかとか、若作りの秘訣を教えてとか。いや、俺見た目通りの年齢だし。・・・精神年齢はちげぇけど。

「そんな過程の話を聞いてもな。重要なのはどれだけつええかってことだ。」

酒をゴクリと飲みながらこっちに鋭い眼光を飛ばす。

「どれだけ鍛錬を繰り返し、どれだけ魔物を屠ったって。今強くなけりゃあ意味ねぇな。・・・そうだろ?」

「んー、まぁそうかなぁ?」

俺としては暮らしが便利になったりするほうが重要だと思うんだけど。

「あー、その態度な。・・・まぁ、ようはお前がどんだけ強いのかって興味があるわけよ。」

「そう言われてもな。」

「だろ?そんな態度だと望み薄いんだよなぁ。」

つまり俺と戦いたかったってことか?いや、別に理由がねぇし、やらねぇけど。

「・・・この辺血祭りにしたら戦ってくれねぇかな?」

おいおい、こいつやべーやつだ。

「冗談でもやめろよ、そんなこと言うの。」

「あぁ、冗談だけどよ。デメリットがデカすぎるし。・・・つうかお前そんなんじゃ本気になんねぇだろ?」

あー、まぁ別に今のとここの街に愛着はねぇしな。

虎っさんが暴れたとこで遠距離から狙撃して終わりっすね。姿を現すこともしねぇわ。

「その顔で大体わかるな。・・・んー、力比べとかもやってくれねぇんだろ?」

「うん、やだ。めんどくさい。」

「はー、これだから平和主義者は・・・。」

心底つまらなそうに虎っさんがそんなことを言う。

「何虎っさんは強いのと戦いたいの?」

「そりゃお前、男に生まれたからには強くなりてぇだろ?」

「子供かよ。」

「ボウスにそんなこと言われたくはねぇなぁ。」

なんかこの人あれだな。本当に子供っぽいな。

まぁ、俺も強さには貪欲な方だとは思うが。それはあくまでも狩り重視だ。対人戦は全く考えてない。

ネトゲでも一緒だ。狩り装備でもPVP、所謂対人戦はそこそここなせるだろうがあくまでそこそこだ。本気のやつらにはどうやっても勝てない。

それは装備云々の話でもあるし、心構えの話でもある。気軽にほいほいやって成績を残せる場所ではないのだ。

この世界の俺もそうだ。

対人なんて考えただけでやだし、それ専用の装備を作ることもめんどい。つまり初心者だな。

まぁ、軽くあしらうことなら全然出来るが、それはこの虎っさんの言う本気の戦いではないな。

「まぁ、残念でしたってことだ。」

「はぁ、本当につまらん。」

大げさにため息をつきながら虎っさんが俺の料理をバクバク食べて酒で流し込む。

・・・まぁ、虎っさんの為に頼んだみたいなもんだからいいけど。俺も夕食がはいらんくなるし。

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