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さて、原料は手に入れた。
後は売る場所だけなんだが、これはもう大陸越えるか。
実際に考えてたのはティスカ公国よりも東の方で売ろうと思ってたが、これだともし戦争とかになったら俺の武器でティスカ公国の人達が傷つけられるかもしれない。
いやー、きついっす。
それならいっそ大陸超えたらいいんちゃうかってそう思ったわけです。
これなら俺の事を知ってる人もいないし、多少の無茶しても大丈夫だ。なにより行動範囲を一気に広げられるわけですよ。
この大陸で出来ないことを他の大陸でやる。そう思えば別に移動は苦じゃない。ていうか全力で移動するなら距離は遠い方がいい。調整とか考えずにぶっ飛ばせばいいだけだ。
そう考えたらやはり候補としては獣人が治めているフォルス大陸だろう。
他の種族に排他的な龍人族のリュート大陸はきついだろう。領土のほとんどが海の海人族のウェルト大陸もちょっときつい。まぁ、そこに住んでる人達を見たいってのはあるけど今回の目的は転売だしな。
それに使う武具もあれだ。獣人が一番興味を示してくれそうだし。
てことでフォルス大陸に決定です。・・・いや、別に猫耳とか犬耳とか、狐耳とかうさ耳とかが見たい訳じゃないよ?それ考えたら龍人のしっぽの付け根とかどうなってんのとか、海人は絶対薄着だろとか。そっちのが気になるからね。
まぁ、そうなると後は全力で移動するだけっすね。
アトラス王国から一転し、ティスカ公国へ。ここが俺が知ってる中で一番東の大陸に近い。
狼達を保護した時の距離から考えると全力で飛んで夕方前には東の大陸に着くだろう。
そこから首都的なとこを目指し、転送石を利用したり飛んだりで夜までには到着する。
そんで一旦帰って来て明日には商売開始!・・・完璧なプランだな?
ティスカ公国の塀の上で頭の中でスケジュールを組んでまとまったとこで進軍開始。
目指すは新大陸、フォルス大陸ですよ、奥さん!
「・・・って感じでフォルス大陸まで行って、そっから転送石で帰ってきた。」
「お前なぁ・・・。ちょっと散歩行ってくる感覚で大陸を越えるんじゃない。」
「・・・ピンとこねぇけど、苦労はしなかったのか?」
「道中はまぁ特には・・・。一番きつかったのはあれかな。帰って来る時にトラベルワープで結構魔力持ってかれたってことかな。」
男共全員でお風呂に入りながら今日あったことを報告し合う。
父さんが呆れた感じで言ってくるがそんなにきつくなかったよ?多分シェリーでも風魔法で一日中飛んでれば東大陸までいけるんちゃうかな。
やっぱり転送石で大陸越えるってなるとかなり魔力が持ってかれるのがわかったのが今回の誤算であり収穫だった。やっぱりあれは距離でかなり変わると思っていいな。普通の人じゃまず無理だわ大陸越え。
「サラッとトンでもない事言ってるような気がする・・・。」
「東の大陸はどうだったの?」
「あー、最初についた村はあれだな。移動式の村らしくて家がテントみたいなので作られてたな。転送石もなかったからスルーしたけど。割りとそんな村が多くて、やっと転送石のあるとこ探し出して、3回くらい違う街とか経由してデカイ街まで運んでもらった。流石に街くらいになるとこっちと同じ様な家が建ってたな。・・・街の名前なんだっけ、えーっと聞いたんだけどな。忘れちゃった。」
「えぇ・・・。」
まぁ、別に覚えてなくても問題ないし!
それまで興奮した様子で聞いてたメルが一瞬で冷めてた。
「まぁ、お前の事だ。基本どこにいようとトラブルは起きそうだからどこにいても心配はするんだが・・・。まさか単身で大陸越えるとは思ってなかったぞ。」
「突発的な行動に定評のあるリードさんですから!」
「褒めてないぞ。」
知ってた。
「ところで、俺の事はいいんだ。ヒューイ達はどうなん?」
「んー、申し分ないぞ。しっかり働いてくれるしな。ヒューイは文句なし、ロイももう少し慣れれば問題ないだろう。・・・メルはしっかり自分に出来る事をしているしな。」
ヒューイが照れてるのをお湯で顔を洗ってごまかしてる。
「へー、・・・今更だけど父さんに任せっぱなしで大丈夫?」
「ん?逆にありがたいぞ?人手はいつも足りてないからな。今まで後回しにしてたのにも手が出るようになるしな。」
そう言ってもらえるとありがたい。・・・やっぱり両親に大分甘えてんな。
「そっか、ありがと。・・・そういや、メルは何してんだ?」
「えっと、体力作り!」
「お、ええんちゃう。的確だと思うぞ。」
「うん、朝におばさんから魔法を教わって・・・。午後からは雷牙さんと風牙さんに見てもらって運動してるんだ!」
「ほう?偉いな。」
「そうだな。本当に自分に出来る事をコツコツと繰り返すのが一番いいんだぞ。リーも昔からこそこそとやってたからな。」
「え、そうなの?」
「あぁ、俺との訓練でも手は一切抜いてなかったからな。」
「まぁ、努力してなかったら流石にね。」
「そうなんだ・・・。」
メルが驚いたように言うがあれだぞ。
ブーストかかってるとはいえかなり努力はしてるぞ。何しろ手探りで自己流で鍛錬してたんだからな。
普通にネトゲでボス張り付きつつ、他のブラゲーしつつ、アニメ見つつ、スマホゲー周回するくらいの努力はしてたぞ。・・・例えがよくねぇけど。
そんな様子を満足そうに見ているロイが見えた。うん、まぁ、少しはメルの好きな様にさせてくれてるな。
「・・・うん、やっぱり風呂はいいな。こう家族の時間が増えるってのは良い事だ。」
「まぁ、母さん達はいないけどね。」
父さんが大きく伸びをしながらそんなことを言った。
「・・・それもひとつのいいとこだな。」
母さんにチクリますよ?




