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というわけでやってきましたティスカ公国。いやー、実に5日振りですね。
流石に帰還が早すぎでは?俺も思うので城に行くのは自重しよう、レイに殴られそうだし。
朝に家の事をシェリーに任せて俺は一人金策に。
現状任せれるのはシェリーただ一人だからな、雷風とセットなら並の奴らにはどうにも出来んだろう。
「いらっしゃ・・・って、えぇ・・・。」
「おう、繁盛してるようで何より。」
今回用があるのはトールのとこだ。呆れた顔のトールが出迎えてくれた。
「村に帰ったんじゃないんですか?」
「帰ったよ。・・・まぁ、ちょっとした事情がありましてな。」
「はぁ、・・・とりあえず奥に行きますか?」
「いや、お客さんもいるし。聞きたい事聞くだけだから。・・・トールが鉄買ってるのってどこ?」
お世辞でもなく繁盛はしてるようで普通にお客さんがいるのでほっぽり出して奥に引っ込むのはまずいだろう。
「あれ?あれで足りなかったんですか?」
「いや。・・・まぁぶっちゃけると金がねぇ。鉄で剣に加工して転売する。」
「えぇ・・・。」
うん、そうなるよね。
「まま、流石に質は落とすし、この近辺ではしねぇ。・・・もっと東の方にいって売ってくるわ。」
「うーん、それならいいのかな?・・・んー。」
「出来るだけ俺もこの近辺に金を落としたいんだけどな。商売敵になるよりはマシだろ?」
「うん、まぁそうなんだけど・・・。」
「頼む!この通り!」
そう言って頭を下げる。めっちゃ前に言ってた事とちゃうことしてるしな。まぁ私の手のひらはモーターついてて回転式だから。
「そんな頭なんて下げなくてもいいよ!・・・えっと、僕が鉄を買ってるのはゴルスク商会からで、注文して支部から送ってもらってるんだけど。」
「あ、あーそういう。・・・流石に支部に余りはねぇよなぁ。」
「扱ってはいると思うけど・・・、リード君がどれだけ使うかによるかなぁ。」
足りなさそう。・・・仕方ねぇか。
「本部にはあるよな。」
「そりゃああるだろうね。・・・紹介状を書こうか?僕のは効果なさそうだけど・・・。」
「いや、一回行ったことあるんだよ。うちのメイドはそこから引き取ったし・・・。」
「そうなのかい?なら問題ないじゃないか。」
「うー、そうだな。ちょっと気まずいくらい関係ないよな。」
背に腹は代えられん。今回は鉄買うだけやし、ゴルスク本人は出てこんやろ。
「ん、ありがとな。店の邪魔して悪かった。」
「いえいえ。相変わらず忙しそうだね。」
「まぁ、ちょっと規模が拡大してきたからな。それなりに備えはしときたいのさ。」
トールにお礼を言って店を出る。・・・次は鉄仕入れる為の資金作りだな。
ちゃっちゃと冒険者ギルドで怪しまれないくらいの魔石を売りに出す。
いつもの受付の人が依頼も受けてないのになんでこんな魔石持ってるのか不思議がってたが、ティスカ公と知り合いってのはこの街では周知の事実なのでそっち繋がりだってことにしといた。
てことでサクっと金貨4枚ゲット、これを元手に更に増やしますよ。
冒険者ギルドからアトラス王国に移動、そのまま正面の建物に。
「相変わらずでけぇな。」
そう呟きながら入口にいく。
前回来たときはマーカスの手紙を持ってたので門番に直接渡して通してもらったが、今回は完全な私用だ。同じ様に取引を求めて並んでる人達に紛れて順番を大人しく待つ。
しばらくすると俺の番が来た。
「いらっしゃいませ、今回は・・・ってリードか?」
「ん?あれ、トニー?お前ここで働いてたのか。」
「へへ、村によく来る商人のおっさんいるだろ?あの人に頼み込んで小間使いとして雇ってもらったんだ。まだ行商はきついってんで本店で修行中さ。」
目の前に見知った顔が。俺と同い年で同時期に正名の儀式をしたトニーがニコニコしながらそこにいた。
「マジか、よかったじゃねぇか。ここデカイとこだろ?」
「あぁ、・・・ちょっと待ってろ。案内変わってもらうから。」
そう言ってトニーが他の小間使いのとこに走って行った。何やら頭を下げて頼んでる。
「わりぃ、待たせた。・・・んで今日はどうしたんだ?本店に来るって事は相当な取引か?」
トニーがそのまま俺を連れて商会の中を案内する。
「んー、そうでもないよ。ちょっと魔石の売却と鉄を買うだけだから。」
「へー、そういえばお前はよくシェリーさんとフランと森に入ってたな。魔石も結構あるんじゃないのか?」
「いうてそんなにねぇよ。」
ごめん、嘘ついた。個数覚えてないけどかなりある。
「ほんとかー?・・・あぁ、ここだ。すいません、お客様をお連れしました。魔石の売却と鉄の買取をご所望です。」
トニーが急に丁寧な口調になった。若干吹きそうだった。・・・シェリーから見た俺もこんな感じなのか、そりゃ笑うわ。
「はーい。・・・あら、あなたどこかで・・・。あぁ、例のメイド騒ぎの子かしら?」
「えぇ・・・。」
噂になっておりました。・・・来るんじゃなかった。
「・・・メイド騒ぎってなんだ?」
「聞かんでくれ・・・、マジ無理・・・恥ずかしい。」
受付の女の人がクスクスと笑ってる。
「目の前であんな騒ぎしてたら覚えてるわよ?」
「うわぁ、死にてぇ。」
「・・・メイド騒ぎってなんだよ。」
トニーが小声で聞いてくるがそれどころじゃねぇわ。
「それで、君の名前は?今回は魔石の売却と鉄の買取って話だけど・・・。」
「あー、リードです・・・。」
「リード、ね。ちょっと待っててね。」
そう言って受付の人は席を外した。
「なぁ、メイド騒ぎってなんだよ。」
「・・・ここでメイド雇ったらこの場所で出会い頭に頭ひっぱたかれた。」
「マジ?・・・く、くくく・・・。」
トニーが肩を震わしながら笑うのを堪えてる。
「く・・・、雇った、メイドに、・・・くくっ。」
「今俺の心めっちゃ抉られてんだけど?こっちお客様やぞ、不快な思いをさせるのはこの商会のやり方なんか?おぉん?」
「ぷくくっ、・・・いやすまんすまん。そう怒るなって。」
「肩震わせながらそんなん言われても許せへんし。」
トニーの顔がクシャついてるのを見ると腹たってくる。
一応理由などを話していたら結構な時間が経ってた。待たせすぎでは?
「・・・失礼します、お客様。ゴルスク様が直接お取引をなさりたいそうです。いいでしょうか?」
「は?」
さっきの受付の人がガラッと口調を変えて戻ってきた。
そして、それまで笑ってたトニーが急に真顔になった。
えぇ・・・、個人的な取引にも親玉出てくんの?マジかー。
「・・・いいですよ。ただ今回はティスカ公国とはなんの繋がりはないですよ?」
「ゴルスク様は特に何もおっしゃっていませんでした。リード様本人と取引をしたいとだけおっしゃっていました。」
「そう・・・、じゃあ案内を。・・・ついでにこの小間使い連れてっていい?」
「は?ちょっとまて、いやいやおかしいだろ。」
「・・・道連れ。」
顔面蒼白のトニーを巻き込んでいくゥー。
「・・・わかりました。どうぞこちらに。」
奥の方に進んでいく受付の人にトニーの手をがっちりと掴んで着いていく。
「おい、マジやめろって。なんでお前ゴルスク様直々に取引してんだよ、てゆうかティスカ公国との繋がりってなんだよ。お前そんな出世してたのかよ。」
「はっはっはー、なんか俺ってトニーに笑われるくらい情けないらしいし?いっちょ本気の俺も見せとこうかなって?」
「本気の俺ってなんだよ、マジやめろって!流石に一介の小間使いが会える人じゃねぇって!」
「いやいやいや。トニーは大切な友人だし、ここはひとつ推しとこうかなって、な?」
「おい!変な事すんなっての!」
笑いながらトニーを引きずっていく。さぁ、地獄へ行こうぜ。




