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立ち話もなんなのでとりあえず庭に椅子を乱立させ、話す場所を作り出す。
・・・人だけでも11人いるし、風牙と雷牙も含めると結構な大きさになるな。
「さて、それじゃあ話を聞こうか。」
「お母さんの納得の行くように話してね?」
「・・・こう並ぶと立派な旅人の様に見えますね。おかえりなさい、坊ちゃん。」
俺の両親とミューに向き合う形で俺達は並んで椅子に座ってる。
順番で言うと、雷牙と風牙を俺の右側に並ばせ、左側から順番にシェリー、エル、ルク、ハピ、ヒューイ、ロイ、メルだ。
「ただいま、ミュー。・・・えーっと、まず簡単に言うと・・・。」
「簡単にじゃなくて、ちゃんとわかるように説明しなさいね?」
母さんが俺の言うのを遮ってそう言う。俺の普段の説明不足をわかってるのだろう。
ただ俺としてはどこまで言うべきか、それが問題である。
ここは隠してる場合じゃない、ちゃんと両親にも言っておくべきだろう。
「最初に言っとくんだけど、これは俺の冗談とかではなくティスカ公も関わってる事だから結構な大事で。そんでもってこれが異常に厄介なことで。」
ティスカ公の名前が出た途端に父さんの目が一層真剣な目になる。
「ティスカ公のとこに魔族が出たのは父さん達も知ってると思うけど、その後にまた違う魔族が現れたんだ。それで、そいつは俺を狙ってきた。」
「な、なんですって・・・?」
「・・・。」
途端に母さんが心配そうな顔になる。父さんは無言だ。
「場所やタイミングの問題でその魔族は何もせずに帰ってもらったんだけど。それでティスカ公やその周りの人達と相談して俺達を城に置いとくわけにいかないと言う結論にいたって、・・・あっもちろんティスカ公が一方的に出てけって言った訳じゃないよ?俺としてもあそこを戦場にするつもりはなかったし、俺から出て行くって決断を切り出したからね。」
「・・・。」
「それで家に戻ってきたんだけど。」
そう言って一旦区切り両親を見つける。
母さんは何を言っていいか迷ってる様子で、父さんは難しい顔をしている。
ミューはそれを横目に口を出すべきではないと思ってるのか口を開くつもりはないようだ。
「・・・事情はわかった。問題は色々あるが、今は帰ってきたのがわかればいいだろう。」
「・・・そうね。今重要なのはそれよね。」
色々と言いたい事はあるだろうが、俺の両親はそう言ってくれた。
「それで、この大所帯はどういうことなのか。その説明をしてもらおうか?・・・見たところ、リーよりも小さな子供もいるようだが?」
「そうよ、そっちのが大事だわ。一体何事なの?」
「あーっと。」
今は目の前の出来事のが大事なのだろう。そりゃそうだ。
みんなを見るとシェリー以外は大変居心地悪そうだった。そりゃそうだ。
「えっと、メイド雇ったら二人増えて。魔族騒動でまた四人増えた?」
「リー・・・?」
「はあぁ・・・、シェリーのがいいわね。説明してちょうだい。」
「そうなると思ってました。」
父さんがニコニコと拳を固め、母さんがため息をついた。
いや、確かに端折りすぎたけどその前の説明が俺にとっては長かったんですよ。
シェリーが母さんの言葉を受け、説明を開始する。
「まずはこちらがエル。マスターが突発的にメイドが欲しいと言い出して連れてきました。・・・。」
「あっ。はい、エルと言います。ご主人様に・・・、えっと、連れ出してもらいました。今はメイドのお仕事をやらせてもらってます。」
シェリーが目配せをするとエルは立ち上がりそう挨拶をして頭を下げた。
「なるほどな。」
「・・・。まぁ、リーが自分で稼いだお金についてあれこれ言うのはやめておくわ。」
「・・・、いいですね。」
うちの両親は別に文句はないみたいだ。ミューも何か満足そうな顔をしている。
「それでこっちはそのエルの妹でルクです。同じ様にマスターが連れてきたメイドです。双子だそうです。」
「は、はい。ルクです!あい・・・、リ・・・、ご、ご主人様にお姉・・・、姉と一緒に雇ってもらいました。」
ルクがそう言って勢いよく頭を下げる。・・・滅茶苦茶嫌そうにご主人様って言われてもなんか、・・・いやそれもありだな!
「双子か、なるほどな。」
「・・・やっぱりお城の給金って高いのね。詳しくは聞かなかったけど。」
「・・・なるほど?」
父さんは合点がいったという感じで手を叩く。母さんはなんか別方向に考えを巡らせてた。
ミューはなんとも言えない顔で頷いている。
「そして、ここからが難題なんですが。・・・そうですね、はっきりと言ったほうがいいですね。こちらの四人は元盗賊団で、少し前までは指名手配までされてました。」
「元じゃないよ!」
「何・・・!?」
すかさずハピが訂正を入れるがそれと同時に父さんが腰の剣に手をかけようとしてびくりと体を震わす。
「・・・とりあえず話を聞くか。」
「はい。とは言ってもマスターによって完全に牙を抜かれてますので。魔族騒動を目撃したのでティスカ公国の立場も考え口封じの為表向きは追放、本来の目的は野営の準備など旅に必要そうな仕事を受け持ってもらいました。」
父さんは別段変わらない俺をちらりと見て座りなおす。
「リー。後でちょっと色々言いたい事があるわ。」
「あっ、はい。」
母さんは色々我慢してたのだろうが、こらえきれずと言った感じで俺に言葉を投げてきた。
笑顔なのがめっちゃ怖い。




