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お客様が来てるなら一応遠慮しとかなきゃいかんからな。
家の邪魔にならない場所に荷台を置きつつ雷牙と風牙を開放してやる。
「とりあえずお客さんが立ち去ったらうちの家族紹介するからちょっと待っててな。あっ、なるべく喋らんでいいから。」
口を開こうとしたので慌てて止める。
一応他の人がいる手前喋らすのはまずいだろう。まずはうちの家族からだ。
「それではまた来させてもらう。」
「ふん。」
「・・・わかりました。」
「はっ・・・。」
村長と父さんが苦々しい顔をしてお客様を見送る。
お客様は二人。やたらと着飾ってる太った貴族っぽいのと護衛にしては風貌が荒々しい感じの奴らだ。
まぁ、俺らには関係ないだろう。ていうか馬車の紋章からしてここの領地を収めてる領主の人たちだからどうせ年貢とかそのへんの取り決めとかじゃねぇかな。
一応邪魔にならないように俺達は家に近づきつつも横に避けるようにして待機し、頭を下げておく。
「・・・へぇ、これはこれは・・・。」
馬車に帰る途中の太った貴族が足を一瞬止める。
こちらとしては話しかけられたのか判断しかねるので一応ちょっと頭を上げるが、別段こっちに話しかけてるわけではなさそうだ。
・・・なんかあれだな。完全に太ってる訳じゃないが、みっともない肉のつき方だな。
あれ?てか領主様は確かもっと年取ってるはずだからこれはその息子とか孫なのか?
「・・・ふん。」
そうしてるとまたそいつは鼻を鳴らし、足早に馬車へと帰っていった。
護衛の目つきが気に入らんかったが、それは俺よりもヒューイに向けてるみたいなので別にいいか。ヒューイはどこ吹く風でうっとおしそうにしてたが。
「・・・気に入らないですね、あの目つき。」
「まぁ、はっきり喧嘩売られてたからな。ヒューイが。」
「そっちじゃないです。あの肉団子ですよ。」
「・・・気持ち悪かったわ。」
「ん、そうなん?別段感じなかったけど。」
「・・・なんか感じ悪かったね。」
シェリーとルクとフランが揃ってそんな事を言う。
別に俺は感じなかったんだけどな。
そうしてる間に馬車は去っていった。
「・・・では私は家に帰らせてもらうよ。話がこじれるようなら渡してもいいと今のところは考えてるが。」
「そうですね。私としてもそれでいいと思いますが、・・・これからの話し合い次第でしょう。」
「そうじゃな。・・・リードも久しぶりじゃ、また家によってくれんかな?腰の痛みが時々出るのでな。」
「うん、村長も元気そうでなにより。長生きして欲しいから俺頑張るよ。」
「うんうん、リードも元気そうじゃな。・・・いっぱしの旅人みたいじゃな。」
そう言って村長は腰を摩りながら道を笑いながら歩いて行った。・・・後ろから軽く聖魔法をかけておく。
「さて。お客が来てたから遅れたが。・・・お帰り、リー。それにシェリーとフランも。」
「うん、ただいま。」
「はい、ただいま。」
「あの時はありがとうございます。ただいま戻りました。」
それを見送ってると後ろから父さんに頭を撫でられた。それを甘んじて受け取りつつそう返す。
父さんはフランがティスカ公国に行くのを後押ししたんかな。苦笑いしてるのが伝わる。
「ま、なんだ。色々言いたいことはあるんだが・・・。」
そう言って父さんが周りを見渡す。
そりゃそうですよね。結構な人数ですから。
「母さん呼んでくる方がいいだろうな。・・・全く、今度は何をしてるんだか。」
「んと、結構迷惑かけるかもしれない。」
「おう。んじゃ母さんに説教してもらわないとな。」
そう言って笑いながら家の方に母さんを呼びに行った。
「あ、フランも帰ってきたなら家の方に顔を出しておきなさい。あれでも親父さんは心配してたからな。」
「はい。・・・じゃあ一旦家に帰るね?」
「おう。」
後ろを振り返って父さんがそう言う。
それを受けてフランは一応俺に断りを入れてから輪から抜けていく。
確かに早く顔を見せるべきだろう。・・・そのへんはほんと俺は抜けてんだよな。さすとう。
「・・・本当に立派なお父様ですね。」
「なんであの親からこれが生まれたんだろ・・・。」
エルと会話してるルクの失礼な内緒話が聞こえる。
「・・・今更だが、この人数が押しかけて大丈夫なのか?」
「最悪村長のとこにお世話になるかもしれんな。・・・いや俺の部屋と姉ちゃんの部屋で男女分ければギリギリ寝れるくらいはスペース取れるが。」
「・・・まぁ、俺達は外でテントでもおっ建てるか。」
「それはねぇから安心しろ。」
ヒューイにそう返す。
「リー!!帰ったんですって?・・・えぇ、何がどうしたらこうなるのかしら。」
後ろを振り返ると母さんが扉を開けてこちらに駆け出そうとして留まってるのが目に入った。
「えーっと、とりあえずただいま。」
「もう、・・・おかえりなさい。」
戸惑いつつもこっちに駆け寄ってきて俺を抱きしめて挨拶をする。
家から苦笑しながら父さんとミューも出てきた。
「んーと。結論から言うと、仕事なくなっちゃった。」
「「は??」」
母さんがガバリと俺の体を引き剥がして声を上げ、それと同時に父さんも真顔で声を発する。ミューも声はあげてないがびっくりとした顔をしていた。




