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朝はいいぞ。
目覚めがスッキリといい感じだ。蓑虫にならないってのが一番いい。
早くも見張りのサイクルに俺は慣れたが他の奴らはそうはいかないだろう。だって完全に起きてるのエルしかいないんだもの…。
見張りをしてたヒューイとメルは普通に起きてるんだけどな、当たり前だけど。
「おはようございます。」
「うん、おはよう。」
エルと挨拶を交わし、軽く運動を開始する。周囲に魔物などはいないことは確認済みなのでゆっくりと体を動かそう。
別に動かしながらエルの準備をしてる姿をガッツリ見てるわけではない、体操にアレンジを加えて目線を固定出来るメニューにしてるのも別に他意はない。
そんな変な事してたらエルがめっちゃこっちをチラチラ見てきたので退散することにした。…ちょうどシェリー達も起きてくるし、雷牙と風牙と一緒に体を動かそう。
準備をしてるエルの姿もしっかりと目に焼き付けて、気分がとてもいい朝食を終え、出発の準備をする。
「んー、今日はどうすっかなー。」
手探りで訓練しているので少し悩んでしまう。昨日と同じ感じで同じ様な訓練を続けるのか、それとも完全に別のにして満遍なく訓練するか。
「あんまり無茶なのは勘弁してくれな。」
「そんな無茶じゃないだろ。…まぁ昨日みたいなのでいいか。」
「ということは。」「午前は魔法の訓練ということで?」
「まぁそうなるな。…俺も感覚掴んできたしな。」
ヒューイと一緒に雷風に馬具をつけて馬車の準備をする。
自重すればシェリーも怒らないだろう。うん、…俺の訓練は後。
でもパターン化しちゃうと慣れちゃうので多少変化は加えていこう。大丈夫だ、問題ない。
「…調子のってましたよね?」
「いやっ、ちがっ、…うん。楽しくてつい…。」
やっちゃった。
いや違うんですよね。皆馬車から好き勝手に魔法撃ってくるじゃん?それを馬車と平行に走りながら避けたり消したりしていくじゃん?それだけやってると慣れてくるじゃん?ちょっとジャンプしたり、こっちも魔法で相殺したりするじゃん?それでも慣れてくるじゃん?こっちの足場悪くしたりするじゃん?
昨日と同じになっておるのじゃ。不思議じゃな。
てことで途中でシェリーさんが乱入してきて昼飯前に正座させられました。
「本当にしょうがない人ですね。」
「いやー、でも皆もある程度セーブして魔法撃ってる感じしたし、大丈夫かなって。」
「途中で私が指示したんですよ。」
「あっ、そうなん?まぁ、そりゃそうか。」
途中から魔法の威力が全然違ってたしな。今までは普通に撃ってるって感じだったけど、足止め用、フェイント用は露骨に威力なかったからな。まだ威力さげて、その分飛ばす速度をあげるとか魔力の配分をコントロールするのは無理だけど、魔法自体を弱くすることくらいは出来るからな。
うん、俺的には全力の魔法をポンポン撃ってさっさと魔力の総量をあげて欲しいがちょっと無理があったな。シェリーがいい感じにフォローしてくれるな。
「マスターのペースに合わせられる訳ないですからね。勝手に走っててください、こっちはこっちのペースで教えます。」
「よし、それでいこう。」
「それでいこうじゃないんですよ、もう…。」
呆れた感じのシェリー。
「んで大丈夫かね、あいつらは。」
「フランがいるので大丈夫でしょう。大体マスターが行ったら過保護にも程がありますし…。」
「過保護て。効率落ちるんだけどなぁ。」
「効率とか気にしてもしょがないでしょう。…この辺りの魔物なら本来ヒューイ達だけでも倒しきれますから。」
ヒューイ達には森に入ってまた武器を慣らすために少し狩りをしてもらってる。…俺が説教されてる間に。
まぁ、そりゃそうだ。森の入口で危険な魔物がいたらまずいしな。普通に俺が気配探ってから問題ないと判断していかせてるわけだし。
ただ、俺がいないと魔物おびき出すのとかが出来なくなるのがな。…まぁフランが適当に釣ってくれるか。
とにかく俺の今すべきことは一つ。
「…あの、すごくやりにくいんですけど。」
「大丈夫、続けて。」
「…。」
「いたっ!痛い、痛い!」
昼食を準備しているエルをガッツリ見てたらシェリーに頭叩かれ、便乗してきたルクにも叩かれた。




