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ある日のお姫様2

「…こんにちわ。辛気臭い顔をしてどうかしたんですか?」

「あっ、お兄様…。」

「…ごきげんようですわ。アサイルズ、さん。」

「イルズで良いって、ね?」

長めの金色の髪を揺らし、にっこりと笑みを浮かべる青年。

アサイルズ、アスにはお兄様と呼ばれた青年が二人の前に姿を現す。

「…キノンさんもごきげんようですわ。」

「ちい兄様もいたんですのね。」

「…。」

その後ろにひっそりと佇んでいた短い金髪の青年が会釈で返事を返す。

「ちょうど二人で帰る所だったんだけどね。アスも一緒にって探してたら、浮かない顔のお姫様がいたから気になってね。」

「なんでもないですわ。…朝食の焼きたてのパンを落としてしまったという話をしていただけですわ。」

「おっと、それはいけないね。食べ物を粗末にしてしまうのも残念だけど、それが焼きたてのパンだとしたら尚更残念だね。」

にっこりと微笑みながらそんな軽口を返すアサイルズ。


アスには悪いが、正直に言ってレイはアサイルズが苦手だった。

誰にでも気さくに接し、笑みを崩さない。軽口も気軽に話せる人柄だと思う。

まるで笑み以外はリードのようだ。だが決定的に違うのは全く考えてることが読めない所だ。

リードはなんとなくだがわかる、表情を滅多に崩さないが何故だかどのような事を考えてるかある程度わかってしまうのだ。

だけどアサイルズは違う。全くわからないのだ。今もにっこりと笑みを浮かべているが何故そんな笑みを浮かべているのかわからない。見え透いた嘘にも上手く軽口で返されてしまう。


「そんなことよりお兄様は私を迎えにきたのでしょう?でも今日はレイの所に遊びに行くつもりでしたわ。」

知ってか知らずか、アスが助け舟のような一言を発してくれる。

「あぁ、そうだったのか。それを邪魔するのはダメだね。じゃあ、またの機会にしようか。」

「…。」

残念そうな顔をしながらアサイルズがそう言う。後ろにいるキノンも無言だが、雰囲気は残念そうだ。

「久しぶりにティスカ公にも会いたいが…、公的にじゃなくてね。」

「…それはお父様に言ってください。お父様なら二つ返事できょきゃ!!」

突然レイが奇声を上げ椅子から立ち上がり、周囲を見渡した。

「ど、どうしたんだい?急に…。」

「レイ…?」

「…。」

三人ともレイを見ながら訝しげな顔をする。

そのレイ本人も驚いた顔をしているのだから三人は何が起こったのかさっぱりだろう。

「ちょ、ちょっと…。あぁもう、すいませんですわ。席を外しますわ。」

頭を抑えながらレイが頭を下げ、部屋の隅の方に移動していく。

「…?一体どうしたのかしら?」

「うーん、よくわからないな。何か急用でも思い出したのか…。」

アサイルズが困惑した顔だが笑みを崩さずよくわからないと返す。

「ま、どちらにせよ私達はもう行かせてもらうよ。」

「…。」

にっこりと笑みを浮かべながらアサイルズがそう述べる。キノンもそれに従うようだ。

「わかりましたわ。」

「レイさんによろしく言っておいてくれ。それとあんまりハメを外しすぎないように。」

「大丈夫ですわ。」

「その大丈夫が心配なんだが…。レイさんと一緒だと無茶をするからな。」

「もう、本当に大丈夫ですわ。」

過保護なのか心配そうにアサイルズがアスに念を押す。

活発なレイに釣られてかアスも時々レイと一緒だと色々な事をやらかす。それを心配しているのだろう。

苦笑いを浮かべながらアサイルズはキノンを連れて去っていった。

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