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ある日のお姫様

「うーん…。」

「なんだか今日は元気がないね。」

ガヤガヤと五月蝿い部屋の中、一人の少女がうめき声をあげる少女、レイニーに向かって声をかける。

この場所は、それなりの身分以上の子供たちが通う学校のような場所。ここで色々な事を学び、それを生かし、自分達の国に繁栄をもたらす様に作られた場所である。

個人的に学ばせる貴族達もいるが、教師の質、学ばれることの幅広さ、そして何より交友関係が広げる事を考えたらここに通わすのが賢いだろう。

「…思ったより静かになってしまったんですわ。」

「なんの話?ちゃんと説明してくれなきゃわからないわ。」

心ここに在らずといった感じで少女に話しかけるレイニー。

「前から話しをしていた人が城を出て行ったんですわ。」

「あぁ…、あの?」

少女の顔がなんとも言えない顔になる。

「もう、アスったらまたそんな顔して!」

「だって、ねぇ…。」

アスと呼ばれた少女はレイニーの顔色を伺うように返事をする。

この話は大分デリケートな話だ。レイニーはいるはずのない男の子の話をしているかもしれないのだ。

「実在するって言ってるでしょ?」

「レイの言うことだから信じたいけど…。」

そう、レイニーは基本的に嘘はつかない子だ。だが、その男の子の話となったら別である。

レイニー曰く、一人で国と争っても勝てる男の子。そんな空想のような話なのだから。

「信じる信じないも何も何回か証拠を見せたでしょ?」

「とは言っても手甲とかだとねぇ…。確かに魔法が使えるようになったのは凄いと思うけど、それはレイが努力しただけでしょう?」

確かに色々見せてもらってはいた。数日前まで普通の手甲が効果つきの手甲に変わっていたり、魔法が使えないはずのレイニーが使えるようになり、最近では無詠唱でこなすようになっていたり、レイニーの城に遊びに行ったときにはその男の子が使役していると言うバトルウルフまで見せてもらったり、それでもその本人は見ていないのだ。

どれもこれも別の人に作ってもらったり、と代わりがきくようなものばかりである。

「うー、リード本人を見せれなかったのがここまで痛手になるとは思いませんでしたわ。」

「だって言ってることが無茶苦茶すぎるんですもの。もしレイが私からこの男の子の話を聞かされたとして、それを信じれますの?」

「…無理そうですわね。」

「ほら見なさい。…だから私も冗談半分でいいのなら聞いてあげますわ。」

それでも話だけは聞いてあげようとアスはレイニーの話に耳を傾ける。

「…、まぁリードの事を話すのはアスだけにしてますから、それでもいいのですけど。どうせあまり口止めもされてませんし。」

「確か、目立ちたくない、でしたっけ?」

「えぇ、本人曰く取り合って戦争が起きるらしいので。」

「いやー、そこまででもないような気がするけど…。」

話が大げさすぎる。もしレイニーが言ってることが本当だとすれば確かにありえない話ではないが、戦争にまで発展はしないだろう。どうにか自分の国に勤めてもらおうと各国が色々と躍起になるくらいだろう。

「それでなんでその男の子はもう出て行っちゃったの?確か、もうちょっといるって言ってなかったかしら?」

「えーっと。…これは一応極秘だけど、アスも無関係じゃないからいいわよね。魔族がリードを狙ってうちの城まで来たんですわ。」

「え!!…って、それって大分前のやつでしょ?ティスカ公が仕留めたって言う。あれで各国が大慌てしたんだから。」

「違いますわ。その後ですわ。」

「はぁ!?その後って…また?ティスカ公国はよく無事でしたわね…。」

「それが、私もその場に居たのですけど、普通にリードと会話して去っていきましたわ。」

「いやいや、そんな魔族いないでしょう?作り話にしてもバレバレですわ。」

魔族が何もせずに話をして帰る。なんてことは聞いたこともない。

「本当ですの。それでどうやらその魔族はリードを狙っていたみたいで、この国を戦闘に巻き込みたくないという理由で城を旅立ちましたわ。」

「…それが本当なら凄いわね。」

そう、凄いの一言に限る。

魔族に狙われながらも会話だけで追い返し、戦力として十分すぎるほどのティスカ公国を当てにせずに城を去る。

「まぁ、確かに私達がいたら邪魔になるでしょうけど、急すぎましたわ。」

「邪魔になるって…。」

邪魔になると。英雄として名を馳せているティスカ公、その片腕であるクラウ婦人、そして同年代では頭一つ、いや二つは飛びぬけてるレイニー。ティスカ公国の兵士達も手練が多い、曰く新兵でも古参兵のような動きをすると。

その全てを邪魔になるとレイニー自身が言い放つとはどれだけリードと言う男の子は強いだろう。

「まぁ、話はわかりましたわ。つまり、好きな人がいなくなって寂しいってことですわね。」

「…、身も蓋もない言い方でしょうけど、その通りですわ。」

顔を赤くしたレイニーが照れながらも認めたようにうなづく。

そう、問題はここなのだ。

レイニーはそのリードの事が好きなのだ。これが空想とも言い切れないところである。

多分、本当にリードと言う男の子は実在しているのだろう。

もし、レイニーが話している通りの人物ならとんだ詐欺師にも程がある。色々とティスカ公やレイニーを騙しているんだろう。

そうではないのならレイニーが誇張してるのだろう。そういう子ではないが、恋は人を惑わせるものだ。

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