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「…ほらな?」
最後のゴブリンを切り捨てたヒューイ達に声をかける。
「確かに実戦だと色々勝手が違うな…。」
「それだけだといいんだがな、うん。」
ヒューイは別によかった。
獲物の形状はほぼ変わらず性能があがっただけなのでそれに振り回されてる感は拭えなかったが、それでもうまく使えてたと思う。
問題はロイとハピ。
「…。」
「まぁ、言わなくてもわかってると思うけど。もうちょい、状況によって使えるようにしないとな。」
「はい…、どれ使えばいいか迷っちゃって…。」
ロイが外れたクナイを回収しながら反省する。
距離によって使い分けることは勿論の事、クナイの命中率もよくなかった。
半分くらい外してるうえに、持ち変えるのに手間取ってヒューイの負担が増えてた。
かなり形状が変わってるので苦労しそうだが、手応えはありそうなので頑張って欲しい。
「すっごい切れるね!」
「お前ははしゃぎすぎだからな。自分が遊撃って事わかってるな?」
ハピに至ってはもうはしゃぎすぎてて戦況が見えてないどころの話じゃなかった。
ヒューイの抑えてる横から攻撃するのが理想なのに別のに突っ込んでいくし、それで倒せてるのが尚タチ悪い。
武器の性能に頼ってしまってるのが丸分かりである。
「これなら正面でも戦えそう!」
「あかん。…その武器な、まともに敵の攻撃受けると折れるからな。」
「えぇっ!!」
「マジで。だから遊撃に徹しろ。状況によっちゃ敵を引き付けるのもありだが、あくまで引き付けるだけにしとけ。まだ自分の武器の性能を把握してないのに変な事しようとすんな。」
「はーい…。」
ふてくされた様にハピが返事をする。扱い難しいが使いこなせれば強力な武器になるんだからちゃんと使いこなして欲しい。
「んで、メルはちゃんと見てたか?」
「うん…、でもあんまりわかんなかった。」
「…前の訓練の時に俺が言ったこと覚えてるか?」
「えっ?」
座ってる俺の横で真剣な眼差しでヒューイ達の戦闘を見ていたメルに向かってヒントをあげる。
「…!うん、覚えてる!!次も攻撃しない!」
考え込んでた顔がパッと笑顔に変わる。
ちゃんと覚えててくれたようで何より。実際フランなんかは一応危ない時に援護しようと木から木へと場所を変えている。
「よし、まだまだ行くからな。…フランも大丈夫そうだから戻ってきていいぞー。」
「んー、でももうちょっと見ておくね!」
木の上で陣取ってるフランに声をかける。まだ心配なのか、戻ってこようとはしなかったがまぁいいか。過保護もよくないが、俺がいるって時点で過保護な気がするのでいまさらか。
「次いくぞー!」
とりあえずもう一回手頃なゴブリン辺りをオカリナを吹いて呼び出すことにする。
何回かそれを繰り返し、しっかりと構成を固めていく。
メルも攻撃に参加し、しっかりと当てれたので大丈夫だろう。初めて当てた時にはしゃいでたのはしょうがない。
それでもまだまだ問題点はあるのだが、繰り返し戦闘していくにつれて直していってくれればいい。
完璧を求めたらキリがないし、完全な正解なんてないものを求めてもしょうがない。
「まぁ、上々やな。」
「リー君だらけすぎ。」
暇過ぎて椅子じゃなくて、ソファー作り出し、寝そべりながらそんなことを言う。
「…本当にもらっちまっていいのか?」
「そりゃお前達が戦ったわけだからな。」
魔物達の亡骸の前でヒューイがそんな事を言う。
「リードってやっぱりお金持ちだよね。」
「…、嫌なこと思い出させるなよ。」
お金ないのを度々攻撃されて、その度に頭を抱えることになってしまう。
村についたら雷牙と風牙とシェリー連れて森を大規模に掃討して魔石稼ぐか。
「…なるほど、やっぱりそうやるんだな。」
「あ?何がだ?」
「いや、なんでもない。」
狩り終わったオーガを解体しているヒューイを見る。
普通の魔物も解体するんだな。今まで動物型のやつらはフランが解体してたのを見てたけど、そいつらもやるんだな。
でも亜人系のやつらって解体しても何も得るものなさそうだけどどうなんだろ?
普通に魔石になるの待てばいいんじゃね?…うん、解体する必要ないな。
素材になりそうなのは解体すればいいか。




