218
そうやって何故か演奏会をしてたら野営の準備の時間に。
喉を酷使したので若干痛いが問題はないだろう。
眠ってたハピとメルを起こし、昨日と同じように準備に取り掛からせる。
「…なんで寝ちゃったのかなぁ。」
「疲れてたんじゃね?色々あったし。」
「あの後も歌ってたんでしょ?聞きたかったなー。」
「はいはい、また今度。」
ハピが若干拗ねながらそんな事を言ってきたが適当に流す。
野営の準備を終え、エル、ルク、シェリー、雷牙と風牙をテントの場所に残し、森の中へと入っていく。
武器の使い心地を確かめるためとちょっとした食事前の運動をするつもりだ。
「…これだけ大人数だともうちょっと中に入らないと獲物もいないかも。」
「せやな。まぁそこまで大規模な狩りじゃないからな、十分よ。」
俺、ヒューイ、ロイ、メル、ハピ、フラン。合計6人での仮パーティーだ。
「…そこまで念入りに武器の調子整えなくてもいいと思うがな。」
「おま、ばっか。ちょっとでも違和感あるなら直しとけよ。致命的なミスになるかもしれんからな。」
「そんなもんか?」
「使い始めが一番危険だぞ。俺もこいつに変えてから基礎練習多めにしてたしな。」
「…そうなのか。」
意外そうな顔をするヒューイ。そりゃ俺だっていきなり剣変えたら違和感あるに決まってる。
ネトゲでも武器ごとにモーション変わるんだぞ。いきなり実戦やるなんて以ての外、まずはトレーニングで扱いやすさやモーションの癖を把握するのが先だろ。
「大体、あれだぞ。ちょっと言いにくいけど、お前ら俺達の中で一番弱いんだからな?」
「…。」
「えっ、エルちゃん達よりも?」
ヒューイが苦い顔をしてる横でロイがびっくりした顔でこちらを見てくる。
「いや、エルとルクは戦闘員じゃねぇから除外だ。条件付きだけどお前ら4人よりもフラン一人のが強いぞ?」
「えぇ?それはいいすぎじゃ…。」
今度はフランがびっくりした顔でこっちを見てくる。それでも周りの警戒をしてるのはいいぞ。
「場所を森、そんで制限時間つけたら絶対捕まらんだろ?下手したら全滅させるだろ?」
「…色々やっていいなら、多分…。」
「フラン姉ちゃんそんなに強いの?」
「前から俺と一緒に狩りしてたしな。」
森で罠駆使しつつ戦ったら普通にヒューイ達全滅するだろうな。
それでなくてもフランの居場所特定は厳しいだろうし、そこから無詠唱で魔法飛んできたらもうどうにもならんね。
照れた顔のフランを見ながら宝物庫からオカリナを取り出す。
「とりあえずフランは見てるだけでいいかな。まずはその辺のゴブリンからいくからな。」
ザッと気配を探り、良さそうな相手を見繕っていく。
そして、オカリナで適当に音を出し、呼び込んでいく。
そこでようやく、戦闘準備にヒューイ達が入る。遅い、遅い。俺とフランがいるから気を抜いてるってのがありそうだが、森に入る前から準備くらいはしておいて欲しい。
「…やっぱ軽すぎるな。」
「えっと、最初にこの大きいやつで…。」
「魔法の弾使ってみる!」
「魔法使わない相手って僕あんまり意味ない?」
それぞれがわいわい言いながら敵を待つように陣地を構築していくが不安すぎる。
「あー、うん。あんまり口出さないようにしようかと思ったけど。最初の一戦はメルは様子見な。このタイミングなら撃てるってのを見つけるように。」
「えっ、うん…。わかった。」
意気揚々としてたメルの顔が曇る。折角戦えるようになったのにいきなりお預けじゃそうなるよな。
「大切な事だからな。んで、ヒューイ達はいつも通りに戦えばいいからな。」
「そろそろ来るよ!」
いつの間にか木の上で待機してたフランがそう言う。相手は普通のゴブリン3体。
来るのもこいつらに見つけて欲しかったがフランが見つけっちゃったのでしょうがない。
木々の間からゴブリン達が顔を出したのを合図に土魔法で椅子を作り出し、そこに座り観戦タイムに入る。




