214
「お待たせ、次はメルな。」
「うんっ!」
めっちゃ笑顔でいい返事が貰えた。
「この変な形の?」
「おう、ゴムがねぇからちょっと工夫してるから扱いが難しいし、歪な形になっちまったんだけどな。」
「???」
ちょんちょんとメルが鉄の塊を指でつつくが頭から?マークが出てる。
「…ある意味それが一番危険ですね。」
「まぁ、扱い間違えなけりゃ大丈夫だから。」
シェリーに答える声が若干震え声になってしまったが。大丈夫だ、問題ない。
「んじゃ説明だ。これはパチンコ…、いやスリングショットっつったほうがいいな。」
「?????」
更に頭の上に?マークを浮かべるメル。うん難しいよな。
「弓の矢を球にして小型化したものだ!」
「???」
「それじゃ尚更わかんないよ、私ですら今わかったのに。」
フランが容赦ない突っ込みをいれてくる。
「実演します!」
メルの頭から?マークが消えないので自作のスリングショットを手に持つ。
まず形状が本来のものと大分違う。通常のスリングショットはYの字の棹を軸にし、ゴム紐で弾を引っ張り飛ばす仕組みのはずだ。
ゴムがない現状ではそれは無理なのでYの字よりもTに近い形にし、両側をしなる用にし、その反動で弾を飛ばすようにした。弾の発射を安定させるために中心に台座を取り付け、それを発射台にする。
うん、これ弩だ。そっちのが近い。
手に持って気がついたがそれだわ。小型なのと鉄製なのでちょっとパチンコっぽいって思っただけだわ。
「…まぁ、こうやってな。」
気を取り直し、馬車から立ち上がり、一緒に作った木製の弾をセットする。
「んで打つ。」
棹を持ち、弦を引き絞り、道に生えてる手頃な木に打ち込む。
パシンと音がし、木製の弾が砕け散る。
「…とまあこんな感じだ。メルの腕力でも十分扱えるようにしたから問題ないと思う。」
「うんっ!うんっ!!」
めっちゃ目が輝いてる。んで早速使うつもりなのかこっちに腕が伸びてる。
「まぁ、待て待て。もうちょい説明っすから。」
「はい…。」
座りながらメルを制す、露骨に残念そうだが扱いが難しいからしょうがない。
「本体はな、ちょっと無理して作ってるから何の効果もないんだ。」
「…ないの?」
厳密にはある。鉄製なのでしなりをよくするが耐久力にも気を配らなくちゃいけないからそこで色々と頑張ったのだ。
まぁそれは言ってもしょうがない。
「代わりにな、この弾がちょっとな。」
そう言ってコロコロと転がってる木製の弾を一つ摘む。そして魔力を込める。
「わっ、わわ!」
「こんな感じに魔法の弾になる。」
火の弾になったそれを木に向かって投げる。パシンと音をたて、焦げ跡を作り、弾が弾ける。
「メルには魔法の才能があるからな。少ない魔力でもそれを活かせるかなって、な?」
「…私は何にも言ってないですけど?」
シェリーの方をちらりと見ながら言ってみたが文句はないっぽい。
「ほい、最初は難しいかもしれんが頑張ってな。」
「うんっ!ありがとうございますっ!」
スリングショット、もとい弩モドキを受け取って気持ちいいくらいいい返事をするメル。
さながら新しいオモチャを受け取った子供のような…、うん、まぁそのまんまだけど。
「危なくないかなぁ…?」
「お兄ちゃんはちょっと過保護すぎんよ。俺達がいるから大丈夫っしょ。」
「マスターがいるから心配なんですけど。」
「シェリーさん、一言多いです。」
早速遊びだしたメルを心配そうなロイが眺めて呟いた。
シェリーさんほんと厳しいっすね。




