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後半エル視点

「うーむ、物足りなさすぎるな…。」

試行錯誤しながらやるのはいいが、俺の訓練としてはぬるい。

まず、魔法の飛んでくる頻度が物足りない。そりゃ、教えだして一日目なのでしょうがないが、全員で打ちまくっててもシェリー一人分にも届かない。いや、まぁ、シェリーとか俺が規格外なだけだが。

なので自分から難易度を上げていった。

まず、足場を悪くする。

具体的には、進行方向に土魔法でちっちゃな柱みたいなのを何個も作り出し、それを足場にし、飛ばされてくる魔法を凌ぐ。

足場の不安定なところで戦う練習みたいなもんだな。実際フラボーに乗りながら戦うのも視野に入ってるのでやっといて損はない。

それに加えてこちらに飛ばされる魔法を把握し、魔力がつきそうな人に魔力を分ける。

ここまでやってもまだ物足りないのだ。…銀との運動の方がまだ体が動いてる、やはり銀は偉大だった。


「あいつ、本当に馬鹿じゃないの?」

「最初は躊躇しましたけど…、本当にいらない心配でしたね…。」

「いや、だってマスターですし。」

シェリーさんがそんなことを呟く。確かにご主人様は色々と規格外ですが、知れば知るほどその底がないように思えます。

今もヒューイさんとロイさんの魔法を空中に飛んで躱し、それを狙ったメル君の魔法を剣でなぎ払い、着地に合わせたフランさんの魔法も空中に留まるなんて何やってるのかわからない方法で躱してます。

私達7人の魔法がカスリもしません。

「これって終わりあんのか?」

「リー君が満足したら、じゃないかな?」

「不満そうな顔してるけど、満足するの?」

ヒューイさんとフランさん、ハピさんがこそこそと話すように詠唱の合間に話しています。

確かに、この訓練が始まってからご主人様は不満そうな顔をしています。その理由はちょっとわかりません。

私達の訓練としてはかなりいいと、素人の私でも思います。実際、ルクも私もちゃんと狙い通りに魔法が飛んでいって、詠唱にも慣れてきました。

シェリーさんもこちらの様子を見ながら雷牙さんと風牙さんに魔法の練習をさせていますが、特に何も言わないのは順調だという事でしょう。

そんなことを考えながら詠唱をして、ご主人様に向かってウォーターボールを放ちますが、また剣で消されました。

「まぁ、マスターの悩んでる事なんてある程度察しがつきますけどね。…大体、銀ちゃんの代わりが務まるわけ無いでしょうに。」

「…あの、それってどういう…。」

「あの人は強い…いや、そうですね。ある程度なんでもこなしてしまうので、退屈なんでしょう。今までは銀ちゃんっていう、対戦相手がいましたけど。…多方、皆が実力をあげてるので自分もって思ってるんでしょうが…、それだとこちらの訓練にならないって言うのに…。」

シェリーさんがため息をつきながらそうおっしゃりました。

「そうなんですか?…ご主人様は十分強いと思うんですけど…。」

「あれでも満足してないってことでしょ?どこ目指してんだか…。」

「さぁ?」

私とシェリーさんの会話にルクが混ざってくる。確かに、ご主人様は何を目指しているんでしょうか…。

「さて、これ以上マスターを退屈させないように私と雷風ちゃん達も参加しましょうか。」

大体教え終わったのか、シェリーさんが御者台から腰をあげ、そのまま馬車から飛び降りた。びっくりしたが、シェリーさんの足元から大きな蔦が現れ、そのまま馬車と並行に移動するように蔦がウネウネと動いている。

シェリーさんも大概なことをしていると馬車に乗ってる皆が思ったことだろう。

「マスター!今から私と雷風ちゃんも参加するので頑張って防いでくださいね!!」

「はっ!?いや、お前参加したらシャレにならんだろうが!」

「皆と連携とれるようにしておいた方がいいでしょう!?大丈夫ですよ、ちゃんと狙いますから!」

「それ大丈夫って言わねぇから!!」

シェリーさんがご主人様に聞こえるように大声で喋ってる、物凄い笑顔で。

反対にご主人様はさっきまでの不満そうな顔ではなく、若干焦っているように思えます。ちょっと足場から足を踏み外しそうになっていました。

「援護に徹しますから!」

「そ、それならいいのか?…いや、てゆうか雷牙と風牙を変な呼び方するんじゃねぇよ!」

「いいんですよ!…じゃあいきますね!」

そう言った瞬間、シェリーさんの背後に水玉が物凄い数出現する。どの水玉を見ても私達の物より強力そうだ。

「いぃ!それちょっとマジでやばいだろ!」

「不満そうな顔してる輩にはちょうどいいでしょう!…ほら、皆も早く詠唱してください、私が上手く誘導しますので。」

牽制なのか数個の水玉を飛ばしながらシェリーさんがそう言う。飛ばす速度も私達とは大違い。

見れば、馬車に乗ってる皆がシェリーさんの魔法を見て惚けていた。改めてわかる、シェリーさんの規格外さ。

「えぇ…、大丈夫なのか、それ…。」

「いいんですよ。どうせ体に当たる瞬間に消されますし。」

「…どっちもどっちだな、こりゃ。」

ヒューイさんの呟きにシェリーさんが何事もないように返す。

その後、シェリーさん達を加えて訓練を再開したが、ご主人様の顔から表情が消え、真剣そのものだった。

何しろ、シェリーさんの魔法が物凄い。数は私達以上、速度も私の目でかろうじてそこを魔法が通ったな、と見える程度、威力も地面に無数のクレーターが出来上がってるのを見れば相当あるんだろうとわかる。

実際、シェリーさんを加えたことで私達も魔法を放つタイミングが身に付いてきた気がする。シェリーさんが上手く、ご主人様の体制を崩してくれるからだ。

私達の魔法を上手く使い、シェリーさんの魔法でご主人様が若干よろめく、そこに私達がまた魔法を放ち、ご主人様が避けた所にシェリーさんの魔法が襲いかかり、それをかろうじてご主人様が剣で打ち消す。

そんな展開が続いていた。

「やめやめ!!…くっそしんどいわ!!」

ついにご主人様が根を上げた。肩が上下しているので本当に疲れているのだろう。

それでも2時間近く、あの魔法の雨を避けきっていたのは本当に凄い事なんだろけど…。

「あら、もういいんですか?」

「お前は俺になんの恨みがあるんだよ…。」

「別にないですよ?ただ、皆の訓練にかこつけて自分も鍛えようとして、期待外れって顔してた人の力になっただけです。」

「…いや、すまんかった。」

トボトボとご主人様がこちらに帰って来る。シェリーさんも蔦から馬車に上手く着地して、ご主人様を迎えるように声をかけていた。

「…そろそろお昼ですが、食事はどうしましょうか?」

「…休憩も兼ねてしっかりとろうか。」

「かしこまりました。」

ちょうど良さそうなので昼食の提案をしてみる。

私もそうだけど、皆若干ぐったりしている。魔法を使うのも集中力がいるので、いくらご主人様から魔力が貰えると言っても無限に撃てるわけじゃない。慣れてるシェリーさんはあれだけの魔法を使っていてもケロっとしてるけど…。

「あうぅ…、頭痛い…。」

「確かにちょっと頭痛い…。」

「私はまだマシかな…。」

ハピさんが頭を抱えるようにして、うめき声をあげる。ルクも若干しかめっ面をしているが、フランさんは案外大丈夫そうだ。

同じようにヒューイさん達も馬車から降りて体を伸ばしながらも頭を振っているところを見ると頭痛に悩まされてるんだろう。

私もちょっと頭が痛いけど、食事の準備は私の仕事だ。頑張らなくちゃいけない。

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