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「いやー、いい運動になったな!」
ぐったりとなっているハピ達を眺めてそう言う。俺としてはもうちょっと動きたいんだが、こいつらの体力的にもう無理だろう。見張りとかもしなくちゃならんしな。
「はぁ、はぁ…。」
「返事がないぞー?元気にいこうぜー!」
「…今はひたすら、うっとおしいな。」
完全にグロッキーなヒューイの周りを回りながら煽る。いやー、この悔しそうな顔が堪りませんな。
「まぁ、冗談は置いといて。ヒューイ達は先に風呂でも入ってな。」
そう言いながら桶型の転送石を取り出してヒューイに渡す。
「…風呂まであんのかよ。」
「ん!これすっごいんだよ!多分王様だってこんなお風呂もってないよ!」
呆れた顔したヒューイが言うがあるんだからしょうがない。
ハピが絶賛したのでそこそこ興味があるのかヒューイ達が覗き込んでる。
「中に入れば注意書きとか色々あるから使い方はわかると思う。」
「先に入っていいのか?」
「あぁ、俺はまだやることあるしな。」
そういいながら魔法訓練組の方を見る。先ほどから休憩を繰り返してるので魔力が切れ始めてるんだろう。俺なら分けれるからまだまだ頑張ってもらおう。
「中の物壊しちゃったらどうしよう…。」
「お風呂って何?」
「そう簡単に壊れないから安心しな。もし壊れてもすぐ直すしな。…お風呂ってのは暖かい水浴びみたいなもんだ。」
「ざっくりしすぎだな。」
ロイは心配性だな。お風呂の説明についてヒューイに突っ込まれたが簡単に言ったらそうなのでしょうがない。
「お、ちょっと維持出来るようになってんじゃん。」
「ひゃっ…!ちょっと!乱さないでよ!」
ルクが集中してるみたいだったので気配消して後ろから声かけたら魔法が消えた。
「マスター、遊んでないで手伝ってください。」
「はいはい。…今ヒューイ達が風呂入ってるから、それまで魔法の訓練だな。おら、ハピもそこに座るんだよ。」
「えぇ…、もうちょっと休ませて…。」
魔力を全員に分けながらハピにもついでに訓練するように促す。我ながらスパルタだと思うが詰め込めるだけ詰め込んでおけば後は一人でも鍛えれるからな。
「…あれ?気分が大分楽になったんですが…?」
「あぁ、俺の魔力分けたから。」
「…本当にあんたって大概よね。」
「そんな褒めんなよ。…これで魔法使い放題だな!」
休んでたエルが不思議そうな顔をしてたので軽く説明する。ルクの言葉にサムズアップしながら答えてやる、呆れた顔をされるのは慣れてます。
「ほら、ハピもさっさと魔力込めろ。アドバイスしてやっから。」
「んむむ、ありがたいんだけど…、しんどい。」
「黙ってやる。」
模擬戦してた分の遅れを取り戻さないといけないからな。
「んー、やはりまだ無詠唱はダメですね。マスターや私なら大丈夫でしょうが、ヒューイ達を交えて魔物を狩るには誤射してしまいますね。」
「やっぱり?しばらくは魔法名言わないとダメだよねー。」
「まぁ、焦ることはないですよ。私達もヒューイ達に配慮して、魔法名を言うようにするでしょうし。」
「…シェリーさん達の足を引っ張ってるみたいで申し訳ないけど。」
「私達は無詠唱を前提で動いてましたし、それなりに森に入って魔物相手にしてましたからね。」
離れたところでフランとシェリーがそんな会話をしているのが聞こえる。
無詠唱になったことで連携をどうするかシェリーと一緒に少し試してたんだろう。ちょっと辺りが荒れてる。
確かにシェリーの言う通りヒューイ達を交えて魔物を狩る場合は魔法名で合図したほうがいいだろう。…人数が多いからそれでも誤射りそうなのが怖いな。
その辺も考えないといけないなー、と思いつつもハピに対して魔力の乱れを指摘し、エルにコップを手渡してここに水を入れる様に促し、ルクが手のひらの上に形成した火の魔法を消し去って邪魔したりと俺のやることを優先した。




