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「夕食の前にやることだったんですか?」
「いや、一刻も早く夢を叶えようと思ってな…。」
呆れた顔のシェリーにそう呟く。
専属のメイドに夕飯を作ってもらい、それを受け取る。
前世では絶対に出来無いであろう夢。それが出来る。
そう考えただけでも感無量である。おしいのは作るときに渡すのを忘れてたことだ。
渡してたら絶対作ってるエルを眺めてるだけで時間が終わりそうだったが。
「そういえば、森の中でなんか取れたか?」
「ん、なんでかわかんないけど全然いなかったよ?」
「慌てて逃げたような跡があったし、…魔物が暴れてたのかな?」
はい、すいません。多分それ俺達です。
それでもボウズじゃないだけ流石と言わざるを得ない。鍋の中のうさぎの肉みたいなのはフランとハピが獲ってきたのだろう。
テントもしっかりと立ててあるようで野営するには十分だろう。ヒューイ達もちゃんとやってくれてるようだ。お椀片手に佇んでる姿がすっごい哀愁漂ってるけど。
しばらく雑談を交わしてるとエルとルクが戻ってくる。
「おぉ…、もう、おぉ…。」
紛れもないメイドが二人、そこに立っていた。
カチューシャがないので頭の辺りは寂しいが、エプロンドレスとなっているそれは上から下まで統一感が素晴らしい。
白と黒が中心に作られており、胸の辺りのリボンが水色。実に俺好みの色だ。今は食事の用意もしなくちゃなので折角のメイド服が汚れないように外付けのエプロンまでつけてるがこれはこれでいい。
スカート部分は最初見たものより長くなってるが、膝下まで。
足元はまだ何も手を加えてないのでいつもの靴だが、その辺は後々揃えていこう。これならハイソックスみたいなのかタイツが一番合うだろう。
「…見すぎ!」
「あら、可愛いですね。…マスターが滅茶苦茶不純な動機で用意したと思いますけど、似合ってるので不問にしましょう。」
「うわー、いいなー。」
「…大丈夫でしょうか?」
女性陣が騒ぎ、男共も視線が釘付けになる。
俺は無言でサムズアップしながら食い入るようにその姿を見るだけだ。
「いやー、うまかったわ。有り合わせの食材でこれだけ作れれば全然問題ないな。」
「ありがとうございます。…ご主人様も作ろうと思えば作れるのでは?」
「いや、どうだろな…。全部強火でいけば早く作れるって思ってる人種だから。」
「それは…。」
エルが苦笑して言葉を止める。確かにスキル習得して一気にあげれば宮廷料理人真っ青な料理が作れそうだが、エルの仕事を取るつもりはないのと別に俺が作らなくても満足してるのでいいだろう。
「うまかった。ありがとさん。」
「いえ、これくらいしか役にたてませんので。」
「そんなことはねぇと思うがな…。」
ヒューイがお椀を渡しながらそうエルに言う。ちょいとぎこちないが、こうやって親睦を深めてくれるのはナイスである。
同じようにお礼を言われながらロイとメルからもお椀を受け取り、シェリーと一緒に俺が簡易に作った洗い場に持っていく。シェリーが水魔法で手伝うつもりだろう。
「さて、食事も済んだことだし。…魔法の修行でも開始しますか。」
「待ってました!」
「やった!」
何故か座って寛いでたルクと元気いっぱいなメルが反応をしてくれる。
ルクさんもエルさんを手伝ってくれてもいいんだけど?まぁ、現状手が足りてないってことはなさそうだけど。
「とは言っても俺達は何も知らないぜ?」
「まぁ、最初っから出来るなんて誰も考えてないから。…うん、最初は魔力ってのになれてもらうところからやってもらおうかな。」
少しばかり考えながらそうヒューイに言う。
元々の魔法とは無縁、いや少しは使ったりしてただろうがそういう生活をしてたのだ。
いきなりってのは無理だろう。それにフランとエルとルクには色々付け足したがヒューイ達にはなんにもしてないからな。少しばかり丁寧に教えたほうがいいだろう。
そう考えながら少し離れた場所に教壇みたいなのを作りそこに大きな机を置く、それを囲むように長机と一人一人座れる椅子を合計7つ作り上げる。
「さぁ、勉強の時間だ。」
なんだかんだ言って先生と呼ばれてるのを気に入ってた俺は教壇に立ちながら皆に声をかけた。




