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ざっと気配を探る。
どうやら目の前の3匹だけらしい、木剣を片手に構える。
頼りないかもしれないがこれしかないし、俺の相棒だしな。魔力で強化してるし壊れるなんてことはないだろう。
「マスター、どうしますか?」
「ちょっとまて、調べる。」
楽勝かもしれないが実戦は初だ。ちょっとした油断で死んでしまうかもしれない。しかも今はフランがいる。
どうやらこいつらはコボルトライダーというらしい、ステータス的にも大したことなかった。
下半身が犬みたいに四足だが上半身はカードゲームの絵柄で見たようなゴブリンそっくりだった。さながら気持ち悪いケンタウロスの槍持ったバージョンだな。
特殊な能力はないらしい、だが気を抜くのは倒してからだ。いや倒してから気を抜いてってパターンは死亡フラグか。
「特殊なことはしてこないらしい。一匹は頼んだ。」
「いいんですか?一瞬で倒せるでしょうに。」
「フランがいるからな、あんまり派手なこと出来ないだろ?」
そうこうしてる間にもコボルトライダーはじわじわと距離を詰めてくる。睨みつけながら会話を続ける。
「それはそうですね。では行きます!」
シェリーがそう言って飛び出していった。
先手必勝ってことだろ、コボルトライダーが警戒して身を固める。俺も続くか。
シェリーの後に続く、片手を前に出しながら詠唱の真似事をする、繰り出すのは水の刃。
「~~~~~、ウォーターカッター!」
ごにょごにょと口を動かして魔法を発動させる、威力を調整して中魔法程度に設定。
手の平から勢いよく水が飛んでいく、一匹のコボルトライダーの右肩に命中。当たるとともに腕がふっとんでいった。
「…加減ミスった?」
「マスター、もっと優しく!」
シェリーは既に一匹倒していた。草木に絡まれて動けなくなったコボルトライダーが見える。
「そうはいってもこれむずいぜ?」
怒り狂った声をあげながらコボルトライダーが突っ込んでくる。
うまく威力を調整しながら距離を詰められる前に魔法を詠唱する。足から狙っていった。
「うーみーはひろいーなー、ウォーターカッター!」
コボルトライダーの足がふっとぶ、まだ加減が足りねえのかと思いつつも続けて残った足もふっとばす、動けないようなのであいつはもういいだろう。
木剣を片手にコボルトライダーの前に対峙する。
一瞬でやられてった仲間見て逃げればいいのにこいつはやる気らしい。知能が低いのかな?
コボルトライダーが体重を込めて槍を上から振り下ろす。フランの悲鳴みたいな声が聞こえる。
「槍は突くものだろ、隙だらけすぎるわ…。」
軽々躱す。前にたった瞬間にわかったが一瞬でバラバラに出来る、フランに対する言い訳が出来ないのでやらないが。
「______!」
何言ってるかわからない声をあげながらコボルトライダーが槍を振るう。
「…こんなもんか。」
さっさっと躱しながら、足を執拗に剣で攻撃しておく。格闘ゲームで言う下段キックで壁ハメするみたいに。
「_____!!!」
さらに激しく槍を振り回すコボルトライダー。
「だから、槍は突いてなんぼのもんだろが!!!」
ガツン、とした音と共にコボルトライダーの頭が消えた。頭かち割ってしまった。リーチが圧倒的に足りないのでジャンプで反動をつけ、無魔法で自分の体を飛ばして。ついイラついてしまった、後悔はしてるが反省はしていない。
「マスター、やりすぎですよ。」
「いやだってさ、槍って普通突きが基本だろ?こいつ全然しねぇもん。」
「所詮魔物ですよ…。正式な槍術を習ってるとは到底思えません。」
「いやだけど本能ってやつでわかるだろ、お粗末すぎる。」
「言い訳はどうするんです?」
「どうにかするしかないだろ…。」
木剣をさっと振り色々なものを振り払う、一応風の魔法で木剣を覆っておいたので木剣自体には汚れはなし。証拠0である。
フランがこっちを信じられないといった顔で見ている。
シェリーが相手していた奴も植物に絞め殺されたのか既に事切れている、魔法ぶっぱした奴も出血?がひどいのでもう長くはないだろう、一応もう片方の腕もふっとばしといた後に頭をふっとばす。
俺の初陣はあっけなく終わったのだった。
「すごい!すごいです!」
フランがぴょんぴょんと跳ねながらこっちに近づいてくる。
「まだ危ないかもしれないから近づいちゃダメだよ。」
それを優しく制しながらシェリーの方にいく。
「どうする?これの後始末とかめんどうじゃない?結構ぐっちゃぐちゃになっちゃってるけど。」
「あぁ、そういえばマスターは魔物みるのも初めてでしたっけ。大丈夫ですよ。見てください。」
とさきほどコボルトライダーがいたあたりを指指す。ちょうどコボルトライダーの死体が消えかかっていた。
「どういうことなの?」
「魔物は絶命するとあぁやって消えるんですよ、そして魔石を残します。」
完全に消えたコボルトライダーの代わりに小さな光る石みたいなのが落ちていた。微かに魔力の反応がする。
「…なるほど、これが魔石か。」
近寄ってその小さな石を拾い上げる、黒く光っているその石にはうまくやれば初期の魔法くらいなら出来そうなくらいの魔力が詰まっていた。水出すだけとかね。
シェリーが他の魔石も持ってきてくれる、全部同じような大きさで同じくらいの魔力がこもっていた。
「これで全部ですね。ここまで小さいと全然価値はないでしょう。」
「価値とかあるのか。」
「一種の宝石みたいなものですからね、噂ですが魔石を加工したりする職業もあるらしいです。」
シェリーの一言を聞いてそういえばそんなのもあったなと、魔石を手に持って魔力を込める。すると3つの魔石がひとかたまりになり、少し大きくなってた。
「…出来るんですか。そうですよね、規格外ですもんね。」
シェリーの呆れ顔。見慣れてるけど可愛い。
「出来ちゃったもんは仕方ないな、しまっとこう。」
宝物庫を開いて魔石を放り込む、なにげに実験以外で初めてちゃんと利用するな。
「…さて、最後の大仕事が残ってるな。」
「マスターに任せるんで頑張ってください。」
キラキラしてるフランの方へと足を向ける、どう説明したらいいのやら。




