195
完全に虚を突かれたので心底驚く。
俺の気配察知に引っかからなかった、周りには小動物くらいの気配しかなかったのに。
そして、その女の子を見て納得した。
【シュルツェ】【161】【メイン職業:魔王3】
HP:13
MP:21
力:3
敏捷:2
健康:3
知識:4
知恵:5
威厳:1
運:10
【EXスキル:魔眼】
【パッシブスキル:】
【アクティブスキル:】
弱すぎぃ!
これはひどい、いや魔王?これが?流石に冗談だろ。
「あぁ、少し待ってくださいって言ったじゃないですか。」
「だって話長いんだもーん。もう直接みた方が早いしー。」
ハイルズが慌ててその女の子を庇うように隠しに行く。
見た目は普通の女の子、格好がかなり露出の高いワンピースのような服を着ているがそれよりも頭にちょこんとついてる角が目立つ。
それを除いたら10歳くらいの美少女って感じだ。
ただ、状況が状況で油断は出来無い。
「ちょっとハイルズ、退いてて。…初めまして、あたしはシュルツェ。」
そう言って女の子はスカートを少し上げて、ちょこんと頭を下げて挨拶をした。
「…俺はリード、説明してほしいんだが…。」
いつでも動けるように腰の阿修羅丸に手をかけながら頭を押さえるハイルズに言う。あぁ、苦労人の匂いがする。
「うんうん、やっぱり直接見ると凄いねー。…異常すぎてあたしの目が信じれないくらいだー。」
ハイルズを押しのけてシュルツェが俺の近くまで来て俺をジロジロと見る。
当然身構えたが、別に敵意はない。もしあったとしてこのステータスなら問題ないだろう。
EXスキルである魔眼、これがどんな効力を持つか怖かったが俺の神眼と同じような効果だった。
当然石化なんてしないし、死の点や線が見えるなんてこともないだろう。
「まだ話が終わってないんですけども…。」
「いいじゃん?もう目的は果たしたんだし?」
「強引すぎるでしょう!あぁ…、やはり連れてくるのは間違いでした…。」
「いやいや、話が読めないし。説明しろよ。」
くすくすと笑いながらシュルツェが俺の周りをくるくると回る。
もう警戒とかするだけ疲れるような気がするけど、ハイルズだけは注意しとかないと。
「んー、今回は見るだけの予定だったけど…。まぁ、いっか!実はね、貴方にたのみたいことがあるのよ。」
「あぁ?初対面でいきなり頼みごと?魔王のあんたが?」
「主!もうちょっと計画性と危機感を持ってください!」
「大丈夫ー。こいつに危害を加えるつもりがあるなら、もうここは更地になってるからー。」
ハイルズが庇うようにして、俺とシュルツェの間に入ってくる。
「それでねー。頼みってのは…。魔王を倒して欲しいの。」
ハイルズの腕の中からシュルツェが顔を出して、そんなことを言った。
「はぁ?何言ってんだこいつ…。お前をたおしゃいいのか?」
「ぶっぶー。あたしなんて倒してもしょうがないでしょ?別の魔王、ってゆうか大魔王を倒して欲しいのー。」
「はぁ…。」
頭を抱えてため息を吐くハイルズの周りをくるくると周りながらシュルツェが素っ頓狂なことを言い始める。
こうしてみると見た目通りの年齢。いや、ロリババアなんだけどかなり行動が幼い。
「却下です。その辺は勇者とかに任せときゃいいだろ?」
「んー、ダメなんだよねー。あれは【人の勇者】だからねー。」
「いや、意味わからんし。」
初めてシュルツェが真剣な顔をしてそんなことを言った。
「んー、んー、やっぱりそう簡単にはいかないかー。」
「いや、誰だってそうなると思いますよ?主の行動が早すぎるんですよ。もっと時間をかけて…。」
「あんまり猶予がないってのはわかってるでしょ?」
「それにしたってもう少しやり方ってのが…。」
「あーあー、小言は聞きたくなーい。」
「いや、置いてけぼりはやめろよ。」
完全に二人で言い争いを始めたので流石の俺も突っ込みに回らざるおえない。
まぁ、もう警戒する必要がないわけで。
目の前を炎の塊が通り過ぎる。狙いはシュルツェだろう。
それをハイルズが庇うようにして、シュルツェの盾になる。
「主様!大丈夫ですか!?」
「おう、別に何もされてないな。」
銀がシュタっと俺の横に着地する。
ちょっと遅いからシェリーが迎えにでもよこしたんだろう。銀なら鼻が効くし、シェリーだと俺が全力で逃げるからだ。
「…ここまでですね。帰りますよ、主。」
「あー、怖かった。…まぁ、目的は果たしたし十分かな?」
全くの無傷のハイルズがシュルツェを片手に掲げながら炎の中から出てくる。
「くっ…。」
「まぁ、帰るなら追わねぇけどさ。」
「主様!?」
「ほっとけ、あいつらに敵意はねぇよ。」
驚いた様子の銀を宥めるようにして追撃させないようにしておく。
「感謝します。…それでは。」
「まったねー、今度はちゃんと説明するからねー。」
そう言ってハイルズが消えるように去っていった。ハイルズの気配はすぐにわからなくなるがシュルツェの気配が遠ざかっていくので完全に退いたと見ていいだろう。
「…何があったんですか?」
「いや、俺にもよくわからん。」
正直な感想を銀に述べる。




