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「ほい、これで最後な。」

「わぁー、…これは確かに嬉しいかも。」

フランも指輪がある手を掲げながらそんなことを言った。

人数分の指輪を作るのに少し疲れたが、とりあえずの下準備は整った。

メルが泣くかと思ったがそんなことはなかったが、少し涙目だったので頭を撫でておく。

ちょっとびっくりしてたが嬉しそうだったので悪くはないだろう。現在の立ち位置的には無茶苦茶に強いが怖くはないお兄さんになってると思いたい。

「これで魔法が使えるようになるの?」

「気が早いっての、まだ下準備だから。」

そう言いながら軽く伸びをしながら体をほぐす、慣れない馬車の上での作業なので体がガチガチだ。

「…そうだな。魔法の練習は夜になってからだ。ここじゃちょっと都合が悪い。」

周囲を見渡しながらそう言う。先ほどから商人の馬車と思われる一行が通りかかったりして、その度にフラボーを隠したりしなくちゃいけなかったのでめんどくさかった。

魔法の練習なんてしてたらかなり目立つだろう。

「まっ、そうよねー。」

「でもうずうずするよねー、…魔法使えるようになるんだもん。」

「んー、そんなに便利なものじゃないよ?私も少しは使えるけど、シェリーさん達みたいに自在に操るなんて夢みたいな話だよ?」

「そうですね。馬鹿げた魔力を使って無理やりですから、普通の人がそんなことしたら一瞬で気を失いますね。」

「…魔法使えるようになれば、僕も戦えるようになる?」

シェリー達の会話にメルがおずおずといった感じで入ってくる。…ここはシェリーにぶん投げとこう。

「…そうですね。すぐには無理でしょうけど、出来るようになるでしょう。」

「本当に…?」

横目でシェリーに睨まれたが、質問されたのはシェリーなので頑張って欲しい。なにより、こうやって交流を深めて欲しい。

「何より私達にはマスターがいますからね。任せとけば大丈夫でしょう。」

「…。」

シェリーにお返しとばかりにぶん投げられた。しょうがないのでサムズアップして任せとけと返すしかなかった。

「まぁ、魔法は別に戦うことだけじゃありませんけどね。…こうやって心を和ませることだって出来ますから。」

そう言ってシェリーが妖精魔法を使い、手のひらの上に綺麗な花を咲かせた。

…あ、まずい。

「す、すごいですね。」

「わぁっ…。」

「まぁ、これは私専用って言いますか。妖精魔法なんで他の人には使えませんけど、…マスター以外。」

初めて見たであろうロイとメルが素直な感想を述べる。

その言葉を聞きながらそそくさとあー、体が凝ったなーなんて言いながらさりげなく馬車から降りよう試みる。

「あぁ、あの時にリードも使ってたけどシェリーさんも使えるんだー。」

「…あの時?」

ルクがポツリとそんなことを言ったのを聞き逃さずにシェリーが聞き返す。

その隙を逃さずにサッと馬車から降りて馬車と並行して歩くようにする。シェリーの腕が俺を捕まえようとして宙を舞っていたのが見えた。…危ない。

エルがちょっと顔を赤らめて恥ずかしそうにしてるのも見える。

「前にリードがそれ使ってお姉ちゃん口説こうとしてたよ?」

「えぇ!?ちょっとルク!ご主人様はそんなことしてないでしょう!?」

「…マスター?」

思ったとおりルクがにやりと笑いながら爆弾を落としてきたので俺の判断は間違ってなかった。エルが弁解してるが無理だろう。

シェリーが若干どす黒い魔力が流れてきたのでとりあえずはほとぼりが冷めるまで逃げようと思い、全身に強化魔法をかけ逃げた。


「ふぅ…、危なかったな。…んで?俺に会いたそうだったから出てきたけど、何かようか?」

「ふふふ、呼び出しに応じてもらって感謝いたします。」

シェリー達の気配が感じられる森の中まで移動して、声をかける。

「あれだけ俺だけにアピールされてたらな。…確かハイルズだったか?」

「えぇ、覚えているようで幸いです。」

「あれだけ強烈な挨拶しといて忘れろってのが無理だな。」

木の後ろからハイルズが出てきてそう言った。

先ほど、指輪を作り終えた後から俺に向かって強烈な魔力を何度か感じた。

無視出来無い魔力だったが不思議と殺気は感じなかった、そしてシェリーと銀が気がついてなかったところを見ると目的は俺一人のはずだ。

なのでどさくさに紛れてこうして見に来たというわけだ。

「いやはや…、あれはそちらの存在が不明でしたので仕方がなかったのです。」

「まぁ、それはいい。…なんの用だ?」

体中の魔力を戦闘用に、ここなら城も足でまといになる者もいない。全力で相手をすることが出来る。

「待ってください。今日はお願いがありまして、それを言いに来たのです。」

「お願い…?」

ハイルズが両手を挙げながら敵意がないことを表しながらそう言った。…確かに戦意は感じられないが、相手は俺のスキルが通じない相手だ。油断だけはしちゃいけない。

「私の主が、貴方に会いたいと申してまして。」

「はぁ…?」

「私の主が貴方に非常に興味をもちまして、それで会って頂けないかとお願いしにこうして戻ってきたわけです。」

申し訳なさそうな顔でハイルズがそんなことを言った。

確かに色々とおかしい。こうして俺だけをここに誘い、完全に敵意のないことをアピールしている。俺を倒すならシェリー達がいるとこで奇襲をかけてくるはずだ。俺が周囲の人を傷つけられるのを嫌うのは前に会った時に気がつかれてるはずだ。シェリー達の加勢を考えてもそちらの方が有効だろう。

そしてタイミングだ。なぜこのタイミングなのかがわからない。ハイルズの言う通りなら俺の事を主とやらに話し、そのままこちらに戻ってくる。それならばわかる。

「…考えが読めんな。」

「考えも何も、裏なんてないですから。…それで、」

「ハイルズー、まだー?」

とハイルズが答えを聞こうと口を開けた瞬間に、木の陰からひょっこりと小さな女の子が顔を出した。

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