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「お、惜しかったね!」
「リー君無茶しすぎだよー。」
「慰めが辛い。」
元の場所に戻るとハピとフランが口々に慰めてくれるがこれは逆に辛い。
「「お疲れ様でした、貴方様の実力の片鱗を見させていただきました。」」
「制御出来ないと意味がねぇんだけどな…。」
雷牙と風牙もこちらに頭を下げてそう言ってくれるが、俺としては情けない気持ちでいっぱいです。
「誰が大道芸やれっつったのよ…。」
「早すぎてわからなかったんですけど、…どうなったんですか?」
「はぁー、マジ、はぁー…。人間大砲リード君ですよ、どうせ。…力いっぱいかけだしたら飛んだ、ただそれだけです。」
ルクの軽口が逆に心休まる、大半の人はエルと一緒で見えてないので説明がいるんだろう。
ウォードにも説明してくれって言われて拡声器でやったこと説明したが大体の人がポカンとしたあとに爆笑してた。つまりはそういうことだ。
規格外の奴が規格外の事をやらかして自爆した、簡単に言えばそうなる。
「いやー、面白いもん見れたなー。まぁ、見れてないんだが。」
「そこまでにしとけよ、おっさん。もう結構腕とか血管血走ってるから騒ぐと危険。」
散々煽られてるのでそろそろキレそう。
「これ以上やったら国がなくなりますわよ。」
「そうだな、人間大砲に…いや、待て。俺が悪かった、すまん。」
無言で城に向かって水龍を浮かべておく、物理(魔法)で脅すしかない。
「…実際、どうなんだ?あれ制御出来そうなのか?」
先ほど完全に吐いてスッキリしたのでまた食事にありつく為にテーブルに戻ってる。
もう先ほどの失態はなかったことになってるので煽ってくるのはティスカ公だけだ。
実際えぐれた地面を見てほぼ全員が顔が真顔だったので笑えない話だろう。ちなみにちゃんと魔法で直しといた。
「…どうだろな。俺の反射神経でギリッギリだったからなー、実戦で使うならもうちょいスピード落とさねぇとな。」
徐々に慣れていくしかないだろう、ギアを一つずつ上げていくみたいに強化魔法を調整してなれていこう。
このところ忙しくて自分が強くなる為の訓練なんて出来てなかったのでちょうどいい目標ができた。目指すは完全制御。地面にクレーター作りながら移動してやるぜ。
「ほんとにまぁ、敵に回さなくてよかったわ。」
「これからも気をつけないとな。」
「流石にないよな?…な?」
にっこり笑ってそう言ってやった。
余興も終わり、宴も終わる。あんまりだらだらしてたら夜になってしまうので出発するのは早くしたほうがいいだろう。
流石に町の外まで見送りは何事かと民衆に驚かれるので別れの話は城の中でだ。
「私の事忘れないでくださいね!」
「毎朝食事頼んでたんだから忘れないって、リーゼさん。」
「な、名前覚えててくれたんですか…。」
先ほどからメイドが一人一人俺に向かって挨拶をしてくれる。もちろん神眼で覗き見して名前を見てるわけだが、涙目で別れの挨拶をしてくる子もいるのでちょっとびっくりだ。
あれ、俺めっちゃモテてね?
「…まぁ、リードは結構人気ありましたわよ?でもこんな人気でしたのね。」
「これくらいは正妻の余裕として見逃しましょう。」
ならその俺の足を踏んでる足をどけてくれませんかね、シェリーさん。
ちょくちょく道具の整備とかしていたが、そんな気配なかったのに…。
そのあとはムサイ男ども、もとい俺の教え子の兵士達だ。
「自分、先生に教わったこと忘れないです!」
「あれだけ綺麗な魔法見せられたら他の魔法なんてお粗末っすよ!」
「まぁ、ほどほどにね?油断が一番の大敵だから。」
「「「はい!!」」」
ノリが体育系だ、だが悪くない。
「たまにはこっち戻ってくるんだろ?」
「まぁ、様子見とかな。ほぼ一瞬で帰って来れるしな。」
「俺ももうちょっとは強くなっとかねぇとな。」
「いや、十分強いだろ。おっさんは。」
ティスカ公と対峙しながら会話を交わす。まぁいつでも帰って来れるし湿っぽいのは似合わないからこんなもんだろ。
「次にあうときには人間大砲卒業しとけよ。」
「ふぁっきんティスカ公。」
こんなもんだろう。
「前に言ってた話は無しにしますわ。」
「んん?どの話です?」
「一緒に迷宮に潜るって話ですわ。…実力差がありすぎてどうにもなりませんわ。」
クラウ婦人が大分昔の話を引っ張り出してきた。
「危険を回避する保険ってのならいいんじゃないですかね。」
「迷宮に危険は付き物ですわ。潜るたびにリードにお守りされるなんてみっともないですわ。」
毅然とした態度でそう言い切るクラウ婦人の姿はかっこよかった。
「まぁ、また機会があったら潜りましょうか。」
「それまでに実力を埋めれればいいのですけど、…逆に離されそうですわね。」
一理ある。




