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200m程の間隔を開けてティスカ公達と対峙する。

思ったとおり銀を先頭に置いているので、俺の動きを制限するつもりだろう。

ここからは魔力が漏れないように上手く操作しないとな。

演奏で強化された身体に更に上書きして強化魔法を掛けていく、どうせ魔法での攻撃は禁止されてるので気持ち悪くなる寸前まで強化に回していいだろう。

「…うーむ、実感がねぇな。」

全開の強化だが、イマイチパッとしないしないと言うか。いつも自分の魔力を身近で見てるからこんな感じなんだろうか。確かに包まれてる感はあるんだが。

「では開始の合図はこちらの鐘を鳴らしますのでそれが合図で始まります!よろしいでしょうか!?」

ウォードの声が聞こえてきたので手を上げて大丈夫のサインをする。ティスカ公達も手をあげてるので準備完了だろう。

「さて、奥の手もやっときますか。」

そう呟いて全身の魔力。いや、自分の内側にある魔力を爆発的に加速させる。


これは前々から気にはなっていたが別に試す必要がなかった【気功】のスキルだ。

レイが元々そのスキルを持っていたので訊いてみた所、曰く自分の中に流れている魔力を操作し、強化するスキルらしい。

いわゆる気合を入れればなんでも出来る系スキルだ。

レイはまだ使いこなせてないのか、攻撃を当てる瞬間や受ける瞬間などにその部分に魔力を集めるようにしてるらしいのであんまり効果を実感していないらしい。

しかし、俺は昔に鍛えてるので既に達人の域に達している。

その時は魔力の流れなんて見る事が出来なかったのでなんとなく体内に流れてる気っぽいのを操作してたがあれは魔力を操作していたらしい。スキル上げてから使う気なかったからわからなかった、いや今の状態の俺を見ても何もわからないので神眼でもわからないのか。ちょっと注意しないといけないスキルだ。


とにかく呼吸を整えて体内の魔力を加速させ巡回させていく、気持ち的になんとか拳3倍とかそんなノリだ。

「それでは…!!試合開始!!!」

ウォードの声と共に鐘が鳴らされる。息を吸い込んでこっちに集中しなければ。阿修羅丸を腰から外し、刀身を魔法で保護していく。

案の定銀が開始の合図と共に飛び出すのが見えたのでこちらもそれを迎撃するべく両足に力を込め、思いっきり踏み出す。

その瞬間体が飛んだ。


「はっ、ちょっ。」

ありえないスピードで銀に向かって飛んでいく。どれだけスピードが出てるかわからんが、俺の思考スピードでもギリギリ、既に銀にぶつかりそうだ。これはどっちもミンチになってしまう。まずは危ない阿修羅丸を遠くに投げなくては。

【習得:神速 説明:生物が出せる速度を超える速度が出せる。】

おっしゃひさびさの習得、じゃなくてかなりまずい。阿修羅丸を投げるが、銀はまだ俺の姿に気がついてないのでこっちも俺がなんとかしなくちゃならない。

「くうぅ…!!」

目の前の銀をなんとか体を捻り、受け流すようにし回避する。未だに銀はこちらの姿が捉えれてないのか、前を向いたままだ。くるくると回る体をなんとか元に戻そうとするが、視界の隅に仁王立ちしているティスカ公の姿が見える。

「っ…!!」

そうだ、銀を回避してもその直線上にはティスカ公達がいる。このままだと巻き込む。

強引にでも進路を変更させる為に無魔法でスロープ状の壁を作り、それに自分の体を預ける。

当然受身をとることも出来ずに無茶苦茶になりながら体を回転させて勢いを殺していく。強化魔法のおかげか痛みはそれほどでもない。

ちょうどシェリーのいる方とは逆の方に向かって無魔法の壁を転がる。既に目が回って何もできそうにない。

そのままの速度で地面に叩きつけられ、数回バウンドしてごろごろと転がりながらようやく止まる事が出来た。最初の位置からゆうに1キロ程は空を飛んでたことになる。

「オエェェ…。」

我慢できずに先ほど食べた物が胃から逆流する。今の俺には止めることは出来なかった。


「あれだけ啖呵切っといて自爆する糞雑魚なめくじおるかー?…おるでー。」

「ま、まぁ、マスターは私達を守ろうとしてあぁなったわけですから…。」

あの後時が止まったみたいになってたが、我に返ったシェリーが俺を心配してこっちまできてくれた。無様な姿をなんとか隠そうとゲロだけは処理出来たが、この発想が既に無様だろう。もう地べたを這い蹲るしかない。

「…いや、規格外すぎんだろ。」

「気がついたらリードがわたくし達の後ろで転がってたんですけど、…なにしたんですの?」

「凄まじい轟音がしましたわね…。」

「…。」

真顔でティスカ公がツッコミをいれてくる。やはり誰も俺の姿を捉えれてなかったらしい、気がついたら俺が遥か後方で転がってたみたいだ。

「…銀?一応全力で避けたけど、大丈夫だったよな?」

「…あっ、はい。大丈夫です。」

銀が無言だったのでどこかぶつかったのか心配になって地べたに這いつくばった姿勢のまま声をかけたが大丈夫だった。

「はぁ…。一応説明すると、全力で自分を強化したら制御出来なかった糞雑魚なめくじです。」

「もう、いじけてないでさっさと立ってください。」

シェリーがそう言いながら地べたに這い蹲る俺を立ち上がらせる。まだちょっと頭がくらくらする。

「地面が抉れてんな…。」

「軽々しく本気出せとか言わない方がよかったですわね…。」

ティスカ公とクラウ婦人が遠い目をしながらそう呟く。

「ほら、凄い汚れてますわよ。」

レイは俺の服を叩いて土埃を取ってくれてるが、服が既にボロボロでズタズタに裂けてるのでもういっその事着替えたい。

「…これだけ服がぼろぼろなのに怪我はしてないんですのね。」

「それはまぁ、強化魔法のおかげなんだろうが…。」

「一体どれだけ強化すればあんなことになるんですか。」

「いや、演奏で強化したあとに自分にも全力で強化魔法かけて、んで前にレイから教わった気功を試したらこうなった。」

「…あほですね。」

「…あほですわね。」

「返す言葉もありません。」

全然自分の力がわかってなかったです。

このままだとみっともないのでいつもの土壁を作り出し、その中で素早く着替えることにする。怪我はないのだが、全身が筋肉痛みたいになってて痛い。

すっかり静かになっていた観客席は今はざわめきが大きくなってるのでかなり恥ずかしいんだけど向こうに戻らなくちゃ。

途中で投げた阿修羅丸も回収しなくちゃいけない、多分今の俺はトボトボって効果音が一番よく似合う男だろう。

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