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「よう、飲んでるか?」
「…飲んでるがよ、こう騒がしいとな。」
端の方で集まっていたヒューイ達の方にお邪魔する。
椅子を引っ張ってくるのも面倒なので自分で作り出し、座ることにした。
「まぁ、そうなるな。」
「こうやって目の前で軽くやってるけど凄いことなんだよね?」
「魔法使いって凄ーい。」
「魔法使いが凄いんじゃなくて、俺が凄いだけだから。そこんとこ間違えないように。」
ロイとメルが若干目を輝かせながら言ってくる。雰囲気に酔ってるので随分な言葉が出てしまう。
「そんなことより、いい馬車選んでくれたみたいだな。ありがとう。」
「俺は別に選んじゃいねぇよ、…シェリーさんがな。」
「ついて行かせて正解だったな。」
「確かにな。内装までは俺も気が回らなかったからな。」
なるほど、内装はシェリーの提案らしい。納得。
「それより、あの馬は俺が買ってきた馬だよな…?」
「あぁ、使役したらあぁなったから。雷牙と風牙って言うんだけど、よろしくな。」
今はシェリーと銀と一緒に中央に陣取り話を聞きながら料理を食べてる雷牙と風牙に目線を移す。
「…大概だろ。」
「褒め言葉として受け取っとくわ。」
「かっこいい!…後で触ってもいい?」
「そりゃな。…乗ってもいいぞ?」
「やったー!」
メルがめっちゃ目を輝かせてる。俺の魔法でもこうはならなかったのに、おそるべし。
「危なく…ないですよね?」
「流石に振り落とすなんてことはしないだろうが、…一緒に乗ればいいんじゃない?」
「普通の馬ならまだしも…。」
「確かに。…そういえば、俺も馬なんて乗ったことねぇな。」
魔法とか駆使すれば乗れる自信があるが普通に乗るとなるとどうなんだろうな。凄くお尻が痛そうなんだけど。
まぁ、俺専用の乗り物あるし。銀もいるから乗れなくてもいいか。…ちょっと悔しいけど。
「…そういえば爺は?」
「あぁ、これを機に挨拶してくるって色んなとこ回ってるぜ。」
「…なるほど、流石だな。」
辺りを見渡してみると爺がお酒を片手に談笑してるのが見える。
お酒が入った席なら話がしやすいだろう。こういう場なら多少の無礼は許されるだろう。それを狙って取り入られようとしてるに違いない。
「まぁ、爺も折角だから楽しんでくるって言ってたからな。…この状況が楽しいらしいな。」
「ほー、昔の血が騒ぐってやつなのかね。…んでハピは?」
「あ?さっきまで…。」
「あぁ、発見したわ。」
ハピのうるさい声がしないと思ったらどうやら動き回ってるらしかった。今はエルとルクと一緒になって料理を運んでて実にフリーダムである。
「まぁ、静かだからいいんだけどな。」
「確かにな。まぁ、楽しんでくれ。」
ヒューイと意見が合致したとこで椅子を消し去り、移動することにした。
「それでマスターに買ってもらったんですか?」
「うん!シェリーさんも買ってもらったんだよね?」
「この髪飾りですね。…かなり強引に買ってもらいましたが。」
「でも似合ってるよね、シェリーさん髪の毛に。」
「ありがとうございます。フランも似合ってますよ。」
適当に会場を散歩して元の中央に戻る。途中で色々絡まれたりしたが、丁寧に相手することを忘れなかった。俺偉い。
「ねぇリード!僕にも何か買ってよ!」
「はぁん?…機会があったらな。」
「絶対だよ!約束ね!」
「あー、その言葉はずるいわ。」
フランとシェリーの会話を聞きながら料理に手を伸ばそうとしたらいつの間にか居たハピに絡まれた。
約束って言葉出されちゃうと弱い。
「やったー!買ってくれるって!」
「「「…はあぁ。」」」
「いや、まだ約束してないし。それになんでそんな溜息つくんすか。」
フランとシェリー、ついでにレイにも溜息をつかれる。ハピの中ではもう約束してる事になってるので喜んでる。
「まぁ、いいんじゃないですか?マスターの好きにすれば。」
「リー君のことだからねー。」
「リードの悪い癖ですわ。」
「いやいやいや、まだ買うなんて言ってないし。」
「じゃあ、買う約束して!」
「…、まぁ、いいけどさ。」
渋々約束することにした。まぁ、別にいいだろう。適当に見繕ってやれば済む話だ。
ぶっちゃけ今回の騒動に巻き込んだ手前少し罪悪感があったのでこれでチャラにしてもらおう。
何を買うか今から考えとかないといけないな。と、考えていたらティスカ公が目の前に来て。
「リード!!ここらで一発模擬戦でもしねぇか?」
と素っ頓狂な事を言い出した。