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「あなた!!やりすぎよ!…ごめんなさいね、リード君。昔からレヴと一緒にいたずらすることが多かったんだけど、…レブも出てきなさい。」
「…だとさ。」
アンジェに怒られてミストが肩をすくめる。確かに俺じゃなかったら避けれずに直撃してただろうに。
半透明だった精霊の姿がパッと色合いを帯びている。
「…確かにやりすぎたと思うわ、ごめんなさい。でも、前からこの子供は違和感があったの。」
レヴと呼ばれた精霊が現れて説明をしていく。見た感じは中位から上位の精霊だろうか、別にミストといる時にはボロはださなかったはずだが。
「…前からレヴと話していてね。最初に冒険者ギルドで会った時あるだろ?あの時には単に興味があるってだけだったが、…次に会った時、君は精霊の王様の話をしていただろ?」
「あー、はい。確かにしましたね。」
「あの後別れた時に後ろからレヴに見てもらったんだが、かすかだけど精霊の気配がするっていうもんだからね。」
「…。」
あの時は契約してなかったから特にミストに対して警戒はしてなかったが、そんなことになってたのか。
あの時は周りに人がいすぎて周りを見てる余裕があまりなかったからわからなかったが。
「そして、今回目の前でレヴを呼び出してみたんだけどね。それでレヴに見てもらったんだけど。」
「…あなた、精霊の気配が濃すぎるのよ、しかも前よりもずっと。それで確信に至ったわけ、絶対に何か隠してるってね。」
「…、うーむ。精霊の気配か、それは気がつかなかったな。」
それは想定外。つまり精霊から見たら俺怪しすぎるってもんじゃないな、これは。
気配と目が合ったのを含めてさっきの魔法ってことか。つまりまんまと釣られたってことだな。フランが不安そうな顔でこちらを見ているので、とりあえず念喋で大丈夫とだけ言っておく。
「…さっぱり話が見えないわ。」
「つまり、リード君も精霊使いってことさ。」
「でもリード君は詩人って話じゃなかったかしら?」
「そこだ。俺もリード君の詩人の力を見せてもらったが、少し変なとこがあったが確かに詩人として振舞っていた。…なぜ精霊使いのことを黙っていたんだい?」
「あー、んー、…。その時は精霊使いじゃなかったからです、はい。」
ここは正直に言っておこう、ごまかしてもしょうがない。ミストと一緒に依頼をしたときは精霊使いじゃなかったので嘘偽りは全くない。
「その時は?」
「…その後に契約したって事ですね。」
どこまで話していいのか迷いながら話を進めていく。
「そこがおかしいのよ。その短期間で私達精霊が異常に思えるほどの気配をまとってるのよ?いったいどういうことなのかしら?」
「あー、うーんと。」
あ、なんかもうめんどくなってきた。もう、いいよね。
「はい、じゃあ呼びます。見てもらってから説明します。」
適当に詠唱をつけ、ヒックス。ウンディーネを呼び出す。
「…今度はなんの用なのだ?」
「いや、なんだろうね。度々用がないのに呼び出してごめんね。」
銀以外の全員が絶句する。フランとミスト、アンジェ、レックスは精霊を呼び出したことに。レヴと呼ばれた精霊は呼び出した相手に対してだろう、完全に一歩下がってる状態だ。
「驚いた、本当に呼び出せるなんて…。」
「い、いや、ちょっと待ちなさいよ…。ま、まさかこんな…。」
「ほう、お前も精霊使いか。…あぁ、ウィプスのとこのお気に入りか。」
「知り合いかい?」
「知り合いなわけないじゃない!あ、あの方は、ウンディーネの王様よ…。」
「はっはっは、そんな冗談は…。」
ミストが笑いながらレヴを振り返り、その真剣な顔を見て言葉が止まる。
「はぁ、大体理由はわかったが…。またくだらないことに呼び出したもんだな。」
「まぁ、そう言わずにさ。…色々説明省くけど、精霊呼び出したら王様来ちゃったでござるってことで。」
「…それはちょっと無理があるかなー、なんて。」
絶句状態のミスト達に変わってフランがツッコミを入れてくれる。フランはこのくらい俺ならやるって感じで精霊が出てきたことに驚いただけだからな。
「待て待て…、色々整理させてくれ。…なんの冗談だ?これは…。」
「え、ええっと…。」
「ほう、お前にも精霊使いの素質があるな。鍛えればいい精霊使いになるだろう。」
「え、本当に!?やったー!!」
未だ混乱してるミストとアンジェを置いて、ヒックスがレックスに話しかけている。
既に銀は開放されててレックスの興味はヒックスに注がれてるので銀も定位置である俺の足元に戻っていた。
「ま、まさか王様方がおっしゃっていた、精霊使いってのは…?」
「ん?そうだな。こいつの事だ。」
「なんてことでしょう…、こんな結果になるなんて…。」
「こいつは実力隠してるからな。見抜けるなんて一部だけだろう。」
「それではあの話は本当の事だったんですね。」
「まぁ、信じれないのも無理はないがな。」
レヴとヒックスが会話してるが、敬語使うんだな。やっぱり。
「…結局、どういうことなんだ?」
混乱状態から戻ったミストが俺にそう言った。
まぁ、こうなるよな。と思いつつもとりあえず話せることを話していった。
俺のチートじみた能力のこと、もちろんボーナス云々の話は抜きにして。
大体なんでも出来て魔力も桁違いなのでこんな結果になったこと。ついでに銀もただの犬じゃないことも言っておいた。