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「それで?用事は一体なんだ?…そこの奴らと関係がしてそうだが。」
ティスカ公が玉座に座りながらそう言う。
流石にバツが悪いのか爺達は一応跪いてるが俺が自由にやってるので納得のいってない感じ。
「…なんであいつ公爵の前なのにあんなに自由なんだよ。」
「それだけ関係が深いってことじゃろうな。…とにかくわしらは従うしかないじゃろう。」
「どうなるんだろ…。」
「だろ…。」
こしょこしょと爺たちが話す声が聞こえる。言うて俺はおっさんに紹介と爺の仕事の許可を貰いにきただけなんだが。
「んっと、さっき言ってた奴らがこの人達なんだけどさ。とりあえず旅には連れて行こうと思ってたんだが、あの爺さんが旅についてこれそうになくてさ。それでこの城で雇ってもらえねぇかなって。」
「お前正気か?…、いや待てよ…。」
ティスカ公が爺の方を見ながら少し考える素振りをする。
マーカスが頭を抱え出したのでこれは俺にとっていい方向に進んでいるだろう。
「…、そこの者。ラークスだろ?貴様には散々手を焼いたな…。」
「…昔の話ですがね。」
「あの頃はまさかこうやって話す機会があるとは思わなかったが…、正直捕まることはないと思っていたが。」
「ほそぼそと生計を立てるだけならどうにでもなりますので、…今回のは天災のようなものなんでしょう?」
「あぁ、うん。そうだな…。」
ティスカ公がこちらをチラリと見ながらそう言った。これは褒められてると考えていいのか?いや、ないな。
「んで、リード的にはどうなんだ?その辺考えてるだろ?」
「まぁな。」
玉座に座っているティスカ公に耳打ちするように内緒話を。
「とりあえず、マーカスを楽させたいってのが一番の理由だ。実力的にも申し分ないだろ?」
「そうだが、…。」
「まぁ、言いたいことは分かる。とりあえず、あの人は自分の事よりハピ…、あの女の子とかの事を心配してるから。俺が人質って感じで旅につれてる間は裏切ることはないだろう。」
「ふーむ、なるほどな。」
ティスカ公としても欲しい人材だろう、裏切った時のリスクを考えると大きいがそれでもだ。
少し考える時間を与えつつ更に売り込むように話を進めていく。
「まぁ、俺としてもティスカ公達は心配だからさ。自分の手の者を一人はここに残しておきたいってのはあるから。」
「…それは言っていいのか?」
「俺にスパイなんて必要か?」
「それもそうだな…。」
言うて情報戦は大事だけどな、この場合はこう言っとけばいいだろう。
こっちの手のうちを言って信用を取るってのも大事だ、そこまでしなくても信用はされてそうだが。
「そうだな、後は旅の中であいつらをちょうきょ…、もとい鍛え直して将来的にはこの城で働かせてもいいんじゃないかって考えてる。」
「ほー、…出来そうか?」
「まぁ、俺が鍛えるんだからそこらへんのよりは腕は立つと思うぞ。」
「そうなるとこっちで従えれるようになるかだけか。…そのへんは追々考えればいいか。」
既に許可はもらったようなもんだな。
マーカスも会話を聞いているはずなのに口を出してこないってことは言っても無駄だとわかってるからだろう。それにうまくすれば自分の仕事も減るからな。
「よし、わかった。ラークス、この城で雇おうと思うがどうだろうか?」
「…選択肢はないんでしょう?ならやるしかないでしょう。」
「最初のうちは過ごしにくいとは思うが慣れてくれとしか言えない。後はこのマーカスに任せる。…後の者はリードに着いていくらしいが…、頑張れ。」
ティスカ公がそう言って席を立つ。最後の言葉が投げやりすぎて絶望感が半端ないな。
別に酷いことするつもりないのに…。
「そういうことなんでよろしくね。」
「公爵の最後の言葉不吉すぎんだろ…。」
「ここまで来ら腹を括るしかないじゃろ。」
爺達の傍に行き、声をかける。
「一応言っとくけど、マーカスの言うこと聞いときゃ大抵大丈夫だろうし。爺の実力があればすんなり溶け込めるだろうから。…ここ実力主義的なの結構あるからな。」
「それは朗報なんじゃろうか…。」
一応釘を差すように爺に言っておく、察しのいい爺ならこれで大丈夫だろう。
「本当にリード殿は無茶苦茶するんですから…。」
「まぁ、これもこの国を思ってのことだからさ。」
「それはわかりますが…、対立していた組織の参謀を引き抜くなんて意味がわかりませんよ。」
「少しはこれでマーカスも楽が出来るだろ?」
「そうなるといいんですが…。それではラークスさん、お部屋と仕事の案内をしたいのですがよろしいですか?」
若干不安そうなマーディ。まぁ、そうだよな。悪い方にはいかないと思うが、爺もここで事を起こすなんて真似はしないだろうから大丈夫だろ。
「一応上司になりますので敬語は結構です。案内の方をよろしくお願いします。」
「わかりまし…わかった。…これは慣れないですね。」
「あぁ、少しお待ちを。…一応言っておくがリードの言うことに逆らうんじゃないぞ、余程無茶な事を言われた場合の判断は任せるが…、極力従っておくんじゃ。」
爺がヒューイ達にそう言い聞かせるように言う。
いや、いいんだけど俺がいるのに普通言う?…俺への牽制も兼ねてそうだが、別にそんな無茶な事を言う訳ないさ。ちょっと限界ギリギリまで動かすだけだし。
そしてそのまま爺はマーカスに連れて行かれた。
名残おしいのか変な空気がながれる、だが爺の心配よりも自分の心配もしたほうがいいと俺は思います。
何しろ今から驚きの連続だろうし。多分思考がついていかないと思うけど。
「さて、んじゃ俺の部屋に行くか。皆に紹介もしなくちゃならんしな。」
「…お前の他にも化物じみたやつがいるのかよ…。」
「んっ。皆いい人だよ?シェリーは綺麗な人だし、フランは話しを聞いてくれるし、銀ちゃんはモフモフだし、エルとルクはまだよくわかんないけど悪い人じゃないし!」
「どれだけ大御所なんだよ。」
「いやー、俺もなんでこうなったか…。」
げんなりとした顔のヒューイとそれと正反対のハピ、不安そうなロイとよくわからない顔のメルを連れて部屋に戻るとしますか。