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にほんめ
「それで、ティスカ公との会議はどうでしたの?」
「まぁ、結果から言うと明日にはここを発つって感じかな。」
「…まぁ、選択の余地がないですからね。」
シェリーも色々考えて結論を出したので内心ホッとする。…怒られなくてよかった。
「え?なんでそうなるの?僕はどうなるの?」
「ハピさん、話聞いてましたか?」
「き、きいてたよ!でも僕の事なんにも言わなかったし、それにリード達がどっか行ったら困る!」
「…そーいえばそうだな。ティスカ公も特に何も言ってなかったわ。…そのまま帰すって訳にはいかんしなぁ。」
あの場面きっちり見てるしなぁ。それに一応こいつは指名手配されてる奴らの一味だし…。完全に忘れてたけど。
「えぇー!じゃあ僕どうすればいいの!?」
「…洗脳しとく?」
「ひぃ!」
「それはやめてあげてください。」
シェリーに真顔で止められた。いい案だと思ったのに。
「んー、どうすっかなぁー。…いっそのこと、…うーむ。」
「え、僕どうなるの?怖いんだけど…!」
「流石にマスターもそこまで外道じゃないですよ、多分…。」
ハピがシェリーに抱きつく。…眼福、じゃなくて。
「…そういえばハピ達って普段何してんの?」
「え、っと…。僕が冒険者として依頼を持ってきてそれをこなしてるけど…。」
「つまり冒険者としても活動してるって訳だな?」
「そりゃ盗賊団って言ってもいつも悪いことしてる訳じゃないし…。それにこの街の警備最近厳しくなってきてどうにもならないし…。」
「ってことは遠出とかもしてるってこと?」
「基本的に街の外ですることが多いから野宿することもあるけど?」
「ふーむ…。でかい仕事欲しくない?」
「欲しいけど…。なんで今その話になるの?」
「いんやー、ちょっとねー。…ハピはそこで待っててねー。」
「こ、こわいんだけどー!!」
ニヤける顔を隠しながらハピ以外を部屋の外に連れ出す。これなら俺の目的にも通じるものがあるし、何より楽になりそうだ。
「あー、この顔は悪いこと考えてますね。」
「私も見たことあるー。」
「…覚えておこっ。」
「そうなんですか?普通だと思いますけど…。」
おいおい、素晴らしい案を考えたのにこいつらは…。
「てことでハピ達を雇いたいんだけど、どうかな?」
「え、急にそんなこと言われても…。」
「強引ですけど、多分これが一番いいんじゃないですかね。…あまり気にいらないですけど。」
シェリーが不機嫌そうな顔をしてるが一応了承は得てある。
俺が考えた案はこれだ。
ハピ達を俺達の護衛として雇い、野営などのノウハウを提供してもらう。見返りは金。
ついでに裏社会とのつながりも持ちたいってのもあるがそっちは追々ってことで。
ハピをここから連れ出し、口を塞ぎつつ。そして俺達の利益にもなる。
「ぼ、僕だけじゃ決めれないし…。」
「おっしゃ、んじゃ俺がサクっと交渉するわ。」
「これは嫌な予感しかしないですね。」
「いや、言うて俺しか面識ないですし、おすし。」
「また意味のわからない言葉を使って…。ハピ、多分逆らっても意味がないと思います。」
「う、うん…。」
「あれ?俺そこまで信用ない?」
正直ハピの安全の優先度を高くした結果がこれなんだけど。一応指名手配の奴らとつるんでるんだし、最悪消されると考えればこれが最善の一手だと思う。
「それでリー君はその後どうするの?護衛を頼んでも行き先決めてないよね?」
「とりあえず家に帰るかな。本格的に旅立つにしろ、皆に挨拶しなきゃだし。…それにフランも帰らなきゃだろ?」
姉ちゃんの合格祝いもあるしな。…向こう着いたときにサクっと作ろう。
「え?もう家族にはリー君について行くって話付いてるよ?」
「は?えっ?何それ。」
初耳。そりゃナチュラルこの場にいる時点でおかしかったけどさ。
「この前帰った時に付いていきたいってお父さんに話したら行ってこい!って許可得たもん!」
「あの人大概すぎんだろ…。俺の目的ちゃんとわかってんのか?」
「え?そういえば旅するってことしか聞いてないけど…。」
「あれ?マスターの目的って旅する以外に何かあったんですか?」
「んん。俺言ってなかったっけ。旅の最終目的はエンちゃん…、なんだっけ。邪竜なんたらを開放することだって。」
「「「「「「…。」」」」」」
時が止まるとはこの事か。みんな一瞬にして固まった。