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「…本当に早いですわね。」
「まぁ、それなりに慣れてきてるしな。」
魔力こめてイメージして変化させていく。俺にかかればちょろいもん。
「んでこれ長さ調整したいんだけど。」
そう言って立ち上がりレイの方に向かおうとする。
「ちょ、ちょっと。…少し時間をもらいますわ!」
「お、おう。」
レイが慌てて布団をとっぱらって扉をあけて外に飛び出していった。
ポツンと取り残される俺。…別に実際に首の所に持ってって長さ調整するだけなんだけどな。
レイの持ってきた鉱石を見ながら待つ。
んー、やっぱりいいもんばっかりだなぁ。…これ持ってったらいかんよな?
ミスリルももうないし、これだけあったら新装備がいくつか…。
てゆうか女の子の部屋に男一人残していいんか、漁っちゃうぞ?
と、邪な考えが頭を過ぎり始めた頃扉が開く音がする。
「…お待たせしましたわ。」
「まぁ、たいして待ってないけど…。あれ?灯りとかつけるの?」
「…えぇ、暗いと気分が滅入ってきますわ。」
閉め切って尚且つ灯りつけなかったのはお前だろ、とツッコミをいれたくなったが我慢してレイを手伝ってカーテンを開けていく。
「ありがとうですわ。」
「いや、いいんだけどさ。…んじゃそこ座って。」
「…あー、顔を洗った時に水が目に入って痛かったですわー。」
「…なんでちょっと棒読み?」
よく見るとレイの目がほんのりと赤い。
「べ、別にそんなことはありませんわ!…ほら、これでいいんですの?」
レイがソファーに座って髪をかきあげてうなじを晒す。
「うわぁ、…これやばいな。」
「…?どうしたんですの?」
「いや、なんでもない。…少しずつ調整するからいいと思ったとこで言ってくれ。」
不覚にもかきあげる仕草にドキッとしてしまった。その後のかきあげながら後ろを振り向くのもやばかった。
内心ドキドキしながら首飾りの長さを調整していく。
「…このくらいがいいですわ。」
「はいよっと、んじゃ仕上げてっと。…ほい、これで完成。取り外すときはここを押してだな…。」
レイに軽く取り扱い方を説明する。ついでに効果のことも言っておいたがそっちは別に実感がないっていうかまぁ使ってみてって感じだろうな。
「そんなことより、…どうですの?」
「いや、結構じゅう…。…まぁ、似合ってるんじゃない?」
一言でばっさりと切り捨てられてレイが立ち上がりこちらに向き直る。
正直くっそ似合ってる。我ながらいい仕事をした。
さっきのうなじの破壊力といい、今日のレイはちょっとやばい。
「…顔が赤いですわよ?」
「…マジ?…正直滅茶苦茶似合ってますよ。はい、これでいい?」
「まぁ、いいですわ。さっきの顔で満足しましたわ。」
嬉しそうにレイがそう言って微笑んだ。
油断してると表情に出るとかポーカーフェイス失格すぎるだろ…。
まぁ、レイがかなり喜んでるっぽいから首飾りは気に入ってくれたっぽいな。
「…本当に明日出発するんですの?」
「まぁ、そうだな。まだシェリー達に言ってないけど…。あっ、また一人で決めちまってんな。…選択肢がなかったとは言え、シェリーまた怒りそうだなぁ。」
「もう少し考えてもいいんじゃないかしら?」
「いや、…実際長居しすぎてるからな。ここらが潮時ってやつだろ。」
「それにしたって…。」
「まぁ、決まったことだから。…それに俺はレイ達を危険に晒したくはないからさ。」
俺がいるとここが狙われる、そうなるとここにいる皆が危険になるからな。
避けれるならば避けたほうがいいだろう。…召喚の罠?そんなものは知らんな。
「…。」
「…今度はそっちが顔が赤いけど?」
「な、なんでもないですわ!…そうですわね、お父様の判断は正しかったですわ。」
「それがわかってるなら大丈夫だわな。謝っておけよ?」
「当たり前ですわ。…さて、となればリードの送迎会をする準備を早めなくちゃいけませんわね。」
「え?やんの?」
「当たり前ですわ!あまり大っぴらにはしませんけど、それでもやりたいって人は沢山いると思いますわ。」
「マジかよ。もの好きもいるもんだな。」
「リードはここにもたらした功績をもうちょっと誇ってもいいんですわよ?この前だってアトラス公国との新兵の合同練習にうちの兵士達がなんて言われてたか…。」
「そんなことやってたのかよ。」
「近衛兵連れてくるなって怒られてたらしいですわよ?お父様が大笑いして教官も苦笑いするしかなかったそうですわ。」
「マジかよ、確かに確かに実力は上がってるけどさ…。」
それは笑うしかねーわ。…まぁ、俺が丹精込めて育てたからな。普通のやつ相手ならここも安泰だろう。
そのままレイの部屋で少し談笑して自分の部屋に戻ることにした。
女の子の部屋で談笑するとかやるやん俺。
しかし、これからの事をシェリー達に話すのがなー。胃が痛い。