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「…リードだけど入っていいか?」
公爵達との話し合いは終わった。対策らしい対策もとれないと結論が出てしまい、とりあえず俺が即席で作った念喋がなくても念喋と同じように話すことの出来るピアス。
ぶっちゃけ通信機のようなものを作り、もしあいつがまた来るようなら俺に連絡が来てすぐにでも転送石で帰ってこれるようにはしておくことに。
皆がとんでもないもの作ったぞこいつって顔してたけど、念喋が出来る奴にしか繋げれないからな。ほぼ俺専用だ。二つ対にしてそれで通信できるようにするって手もあったがそれは別の機会に作るとしよう。
そして、現在レイの部屋の前。会議室を出て行ったレイの場所をメイドに訊いたり走り回った訳だが、どうやら部屋に飛び込んでいったらしい。
「もしもーし、聞いてますかー。」
扉をノックしながらレイに話かける。
「…鍵なら開いてますわ。」
中からレイの声がした。年頃の女の子の部屋に入っていくのは少々気が引けるが別になかったわけじゃないしな。フランの部屋とかも入ったことあるし!姉ちゃんの部屋にも入ったことあるし!
「じゃあ、入るぞ…。」
扉をあけて部屋の中に入る。窓とか全部カーテンで締め切っていて灯りもつけていないので薄暗い。てゆうか部屋がデカイ。前の俺達の部屋くらいある。
そのデカイ部屋のこれまた大きなベッドの上にレイが布団をかぶって座り込んでいた。
「…。」
扉を閉める。見方によっては夜這いだな、これ。夜じゃねぇけど。
「…なんの用ですの。」
「んー。いや、なんか来なきゃダメかなって。」
「なんなんですの、それは…。」
呆れたようなレイの声、とりあえず立ってるのもなんなのでソファに座ることにした。
「…わかっているんですわ。あぁ、するしかないってのは。」
「まぁ、そうだな。」
「リードも色々考えて結論を出してましたし、元よりここから去るのは決定していたことですわ。」
「予定とちょっと違うだけだな。…世話になりっぱなしで去っていくってのは正直嫌だけどさ。」
「それは違いますわ!あの場でもいいましたけど、リードはここに大きく貢献していましたわ!」
ガバっとレイが布団を飛ばす勢いで中腰になる。
「そう言ってくれるのはありがたいな。」
「本当のことですわ…。わたくしが魔法を使えるようになったのもリードのおかげですし。それに新兵の訓練だって…、メイド達も仕事が捗るようになったって言ってましたわ!」
「言ってもそれは本人たちの努力もあってのことだからな。俺はそれを手伝っただけだ。」
「…背中を押すのって凄く大変なことですのよ。」
「…まぁ、そうかもな。」
なんとなく二人共沈黙してしまう。…来なきゃいけないって思ったのはいいけど言葉が見つからんな。
「…そうだ、前の約束。覚えてるか?」
「もちろんですわ!…リードの方が忘れてると思ってましたわ。」
「ま、まぁ、この頃ゴタゴタで時間が取れなかっただけだから…。」
「…忘れてたんですのね。」
薄暗くてわからないがレイのジト目がこっちを見てる気がした。
「いや、まぁ…。」
「…まぁ、約束を守ってもらえるならいいですわ。…今から作るんですの?」
「そうだな…。材料はあるのか?」
「もちろんですわ。」
レイがすくっとベッドから立ち上がり、タンスらしき物の方に向かい何やらごそごそとやっている。
「灯りつけたほうがよくないか?」
「ダメですわ!!…そこの机の上にある小さいやつならいいですわ。」
よくわからんがダメらしい、なので傍にある小さな灯りをつけることにした。
全然レイの方に光が届いでないので意味がないっぽいが。
「…これですわ。」
ダンっとレイが机に箱を置く。…結構な音がしたから相当色々入ってるんだろうな。
しかし、何故か箱を置いたレイはそそくさとベッドの方に戻っていった。
「え?なんでそっちいくの。」
「…別に、深い理由はないですわ。」
「いや、まぁ、いいんだけどさ。…見なくていいのか?」
「ここからでも見えますわ。」
よくわからんが見えるならいいか。こっちからはレイの輪郭くらいしかわからんが、また布団かぶってるし。…嫌われてんのか?
「…まぁ、作りますか。」
箱を開けて中身を取り出していく。銀、金、銅など様々な鉱石が出てくる。…ミスリルもあるし、これ全部でいくらするんだよ…。
「色々と揃えましたけど、それで大丈夫ですの?」
「十分すぎる…。あぁ、そういえば…。」
このために買ったルビーを宝物庫から取り出し、レイにも見えるように灯りに翳す。
「それは…?」
「いや、全部そっちに用意してもらうのもあれだしって事でメインのやつはこっちで用意したんだけど…。用意してもらった中にあるんだよなぁ、しかも立派なのが。」
悲しいかな、予算の違いが出てしまってる。
「リードのがいいですわ!!」
「え?でもこっちのが立派だぜ?メインにするならこれくらいの方が…。」
「そんなことないですわ!わたくしはリードの持ってるやつが気に入りましたわ!」
「そうなん?ならこっちので作るけど…。そういえば、作る物は髪飾りでいいのか?」
前は確か髪飾りだったけど一応注文を聞いておく。
「…ゆ、ゆっ…。…いえ、やっぱり首飾りでお願いしますわ。」
「ゆ?首飾りで本当にいいのか?」
「…いいですわ!シェリーさんと一緒なのも面白みがないですからね。」
「ふーん。」
そうなってくると、んーむ。レイは胸がでかいからな、どうやっても首飾りより胸に目がいくだろうしなぁ。あれに対抗して首飾り作るとなると大きくなって不格好になりそうだな…。
メインになるルビーもその役目を任せるのはつらいし、ここはワンポイント的に目立たせるようにしよう。
まず鎖の部分は金で作るとして…、首のサイズがわからんな。とりあえず長めに作って置いて付けてから調整。
んでメインは…レイは公族だしなぁ、公の場に付けていくとは思わんが立派なやつにしておいて損はないだろう。何しろ素材はあるしな。
台座になる部分はミスリルを使って、中央にルビー、周りにサファイヤ…いや、これだとちょっといやらしい感じになるな。シンプルにルビーだけでいくか。
頭の中で構想は出来た。後は錬金で組み立てつつ効果をつけるだけだが…。
…レイが付けるんだし、ちょっとくらい派手な効果でも大丈夫だよね?
てことでわりかし強力な…、そうだな。テンションの一族だし、テンション上がるにつれて力も上がっていくようにすればいいんじゃないか?ティスカ公の剣みたいな効果。おっしゃ決まり。
そうとなったら魔力をこめて作るだけ。…一応念入りに外に魔力がもれないように隠蔽しておこう。
「…出来たっと。」
我ながら完璧な仕上がり。こいつにも名前を授けたいとこだが、持ち主はレイになるからな。いい名前をつけてもらうんだよ、フローレンス(仮名)