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「えぇ…、そんなこと言われても…。」
「捕まえないだけありがたいと思いなさい。一応ここお城だからな、俺が兵士に声かければ一発で捕まるぞ。」
「まぁ、わたくしが言えばいいんですけどね。」
「うぅ…。」
ハピはそのままいじけて銀にしがみつく、銀が嫌がると思ったがそうでもないっぽいのがなんとも言えない。
「なら…、バトルウルフだけでも見せてよ!」
「はぁん?見ても別になんもならん…、って言うかなぁ。」
銀を見ながら微妙な空気になる。見るどころか既に触ってるしなぁ。
銀がどうします?って感じでこちらを見てくる。
「んー!前にもういないって言ってたけどリードが使役してるならいるんでしょ!?」
「そんな睨むなって…。はぁ、見たら帰れよ?」
「マスター?甘すぎませんか?」
「しょうがないやろ、こいつ言ったら聞かないだろうし。」
「リー君が甘いのはいつものことだよねー。」
「はいはい。んじゃ、銀頼んだ。」
「…はぁ、主様がそうおっしゃるなら。」
「ん!!」
ハピが今まで抱きついていた銀がいきなり喋ったので驚いて銀との距離を取る。
そして銀がパッと距離を取ると、その姿を元の姿に戻す。
「う、うわぁ…!何これ!え?今までちっちゃい犬だったのに!すごい!え?なんで?どうやってたの!?」
てっきり驚いて距離を取るかと思ったが、ハピはそのまま銀の足元まで走っていき銀に質問をぶつけていく。
「こちらが本来の姿ですので…、これでよろしいですか?」
「すまんな。ほら、これが…今は違うけどバトルウルフだ。…これで満足したか?」
「へー!凄い大きい!絶対強いよね!あー、この子がうちの仲間になってくれれば力強いのになー!」
ぴょんぴょんと銀の周りを飛び回りながらハピが羨ましそうにそう言う。
「まぁ、それなりには強いと思いますが…。」
ちらりと俺の方を見る銀。
「まぁ、その先は予想出来る。…これで満足だろ?ほら、さっさと歩いておかえり。」
「んー!…実際に見ちゃうと、欲しいなぁ。」
「ほら、マスターが甘いからこうなるんですよ。」
「こうなったらもう追い出すしかねぇか。」
流石にもう甘やかしませんぞ。このままここで話し合っても無駄なので城から追い出すことにしよう。
ウォードに渡した転送石を受け取るくらいまでの時間はしょうがないから居させてやろう。
「いやー、凄いっすね。これ。うちの城にもくれませんか?」
「せやろ?…別になんも不具合起きてないよな?」
「めっちゃ快適でしたけど…、もしかしてテストさせたんっすか?」
「いや、一応俺が最初に使ったけど。一応な…。使い方わかったか?」
「それなら安心っすけど…。書いてある通りにやれば問題なかったっすね、皆満足してましたよ。」
上機嫌なウォードから転送石を受け取る。まぁ、出てきた兵士達が一々お礼を言ってきてたので大成功なのは間違いなかったが。
「まぁ、これは非売品…。いや、これ量産したら売れっかな?」
「間違いなく売れますね。公爵とかめっちゃ欲しがるんじゃないっすか?他の国のお偉いさんも欲しがるんじゃないっすかね…。」
「そうか?主に自分が満足するために作ったからな…、自信作ではあるけど。」
「いや、普通にこんな設備の風呂なんてないっすよ。至る所に魔力で動く仕掛けがしてあるなんてそうそう作れるもんじゃないっす。」
「ふむ…、一応量産して売ることも視野にいれておくか…。」
「もう、マスター。いつまで話してるんですか?」
ここでシェリーが会話に入ってくる。
「あぁ、後で実際に使うと思うけどこいつについてちょっとな。」
そういって転送石を見せる。
「そういえば迷宮作ってましたね。…お風呂とか聞こえましたけどそれがそうですか?」
「せやな。先に兵士達に使ってもらったけどかなりよかったらしい。」
「あぁ、だからさっきからマスターにお礼言いに来てたんですね。」
「うむ。…まぁ、こっちの用事が終わったら堪能してくれ。」
いつの間にか皆との会話に花を咲かせているハピを見ながらそう言う。
…悪い奴じゃないんだけどなぁ。普通に皆と会話が出来てるとこを見ると。
「さてと、んじゃハピを追い出しますか。」
「えー!今ちょっといいとこなんだから!リードがどうやってここに来たかって話聞いてるんだから後ちょっと待ってよ。」
「確かにようやく銀ちゃんが合流したとこでしたわね。」
「あの戦いは今でも油断してたのが悔やまれますね。…全力でやっても結果は変わりませんでしたが。」
「わたしもこの話聞きたい!リー君ってあんまり自分の事話さないから…。シェリーさんも早く続きを!」
「えっと、どこまで話しましたっけ?マスターが油断して怪我したとこでしたっけ?」
「お前らもハピのペースに飲まれてんじゃねぇか!後そこの話恥ずかしいからやめて!」
なんだかんだ言って普通に溶け込んでるハピに違和感がない。
「…ふぅ、ここで話しててもしょうがないし。ハピを帰らすにしろ、話すにしろ、部屋に戻った方がいいだろ。…ほら、いくぞ。」
「…まぁ、歩きながらでも話は出来ますからね。…それで怪我したマスターがですね。」
「ああああああああ、きこえなーい。」
耳を塞ぎながら訓練所から部屋に戻る為来た道を戻っていく。
まぁ、みんなが楽しんでるならいいんだけどね。