外伝3
どのくらいの時間が経っているのだろう。
ここでは時間の経過が明確ではない。
暗闇の中で思考を続ける、我はもう二度とここから出ることが出来ないのだろうか、否、必ず封印を解いてみせる。
何千回、何万回と繰り返してきた自問自答。その答えは未だに見つけられない。
(おぉ、また一人我の力を与えるに相応しい者が現れたな。…人族か、珍しいな。)
もはや呼吸をするように拠り所探す作業をしていると一人見つけた。
人族がこのような力を持つことは非常に珍しい、ましてや自身は邪竜である。
魔族ならいざしれず、人族が闇の者の力を持つのは希である。
(最後に人族に力を与えたのはいつだったか。国がひとつ滅んだ時だったか。)
昔を思い出す。闇の力を極めたと言われていた生粋の魔法使いに力を与えた時のことだ。
この邪竜にすれば極めるなど勘違いもほどがあったがそれなりに力はあった。
結局力に耐え切れずに暴走してしまったが。
(今回もダメであろうな。声をかけるだけかけてみるか。)
邪竜にすれば気まぐれであった。元々人族にはすぎたる力だ。耐え切れないだろうと。
力は十分にあるのだ。もしかしたらと思うところはあった。
(答えよ、力が欲しいか?)
(うっせ眠いんじゃ、力なんて有り余ってるんでセールスお断りです。)
心底驚いていた。このあと何回も念喋を送るもすべて断ち切られてるようだった。
まず反応が普通とは違う。普通は、おぉ、神の声が聞こえる、とか…力が欲しい。…すべてを壊すような力が!とか反応するところだ。
眠い?力が有り余ってる?そんなことで一蹴されるなんて露程にも思っていなかったからだ。
(力いらないんですか?)
(ふふふ…我の力を授けようというのだ!)
(我が問ふ、汝は力を欲するか?)
色々なアプローチをかけて見たがダメだった、すべてあしらわれる。
邪竜は思った。今までにないことだ、興味が惹かれる、と。
素質は十分なようであったので根気よく念喋を続けることにした。
(…お話きいてもらえませんでしょうか?力いらないですか?)
(しょうがねぇな、聞いてやるよ。)
この頃は下手に出ていた、屈辱的だったが色々なアプローチをするためだ。
予想外の反応が帰ってきたのでびっくりしつつも念喋を返す。
この出会いが邪竜を変えることになるとは知らずに。