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「だから私のせいじゃないんです…。」
「あの子が勝手に言ったってことですか?」
「それにしては親しそうですわね。」
「それならそうって早く言ってよー。」
30分くらい弁解してやっと言い分を聞いてくれた。
滅茶苦茶冷や汗が出た、プレッシャーが強すぎる。
事の発端の本人は銀で遊んでる。
迷惑そうな銀の顔と楽しそうなハピの顔が見えるがお前のせいなんだぞ、と。
「お前もそっちで遊んでないで話に参加しろよ!」
「へ?…なんで?」
「お前がこの状況作ったんだろ!」
「あらあら、八つ当たりはダメですよ?」
「まぁ、言ってる事は間違ってないんですけどね。」
「それよりもさっさと着替えたいかも…。」
ようやくプレッシャーが解除され始めたので立ち上がりハピをこちらに呼ぶ。
銀も後ろからこっちに歩いてくる。
兵士達もこれは見ものとさっきからこっちを皆で見てるのですごく恥ずかしかった。
「ウォード!ちょっとこっち来てくれ。」
「え?別になんもやってないっすけど…。」
笑いながら見てたウォードを呼び出す。
「別に見てても面白くないからな。ほら、これで風呂でも入ってこい。」
「いや、めっちゃ面白かったですけど。…なんすか?転送石?」
「あぁ、迷宮で風呂作ったから皆に入らせろ。使い方は中に入れば色々書いてあるからわかるだろ。」
こそこそとウォードに話ながら転送石を渡す。一番風呂は俺が頂いたのでもう別にいいや。
「はー、また凄い事やってますね。…お言葉に甘えますかねー。」
そう言いながらウォードは兵士達の方に戻っていった。
ウォードが戻ると喝采が起きたので喜ばれてると思う。
「何渡したんですか?マスター。」
「まぁ、ちょっとな。…んでハピが言いたかったのはな。」
適当に流して、話を戻す。
「リード、バトルウルフってどこにいるの?使役してたら傍にいるんじゃないの?でも大きいから目立つと思うんだけど…、どこにも見当たらないね。」
「…、この通り空気が読めないんだ。」
「…あぁ、マスターが馬鹿って言ってたのがわかりました。」
「え?どういうこと?」
「ちょっとハピは黙っててくれ、な?んでこいつが言いたかったのは俺が仲間になったら盗賊団としての名が上がるから俺を仲間にしたい、それで引き抜くためにさっきの発言が出たってとこだな。…なんであんな言い方になるのかわからんけどな。」
ハピを黙らせて説明する。これは爺さんも苦労しますわ。
「それにしてもよく正面から城に入れましたわね。」
「俺の知り合いって言ったみたいだからな…。自分で言うのもなんだけど、俺がいるから大抵の事はスルーされてる気がするわ。」
「…確かに。」
「あれ…?もしかして姫様…?え?ちょっとどうしよう…!」
「今更かよ。なんもしないから黙ってそこに居てね。」
ハピが身構えるがそれを止める。
レイが言う通り普通に正面から入ってこれたってことはハピは別に顔が知れ渡ってるってわけではなさそうだな。
「うん、色々わかったけどなんでここに連れてきたの?」
「ん、もう俺には皆がいるからそっちの仲間になれないって事を伝えたら、こいつが説得するって言い出してな。しつこいから連れてきたんだが…、逆効果すぎたな。」
「なるほどー。リー君を盗賊団にってのは無理があるよねぇ…。」
「色々とな、ってことで仲間にはなれません。」
ハピの方を向きながらはっきりとそう言う。