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庭の人気のないない場所に移動して、地面に座り込んで魔力を練って集中する。
最近時間があまり取れなくて忘れていたが精霊召喚をしなくては。
結局呼び出したのは水の精霊だけだし、本契約もまだっぽいし。
ていうことでサクっとウンディーネを呼び出そう。前ので感覚は掴んだし、今回は俺だけに姿見えればいいから楽だろう。
魔力を込めて呼び出す、詠唱はもちろんカットで。
「…。」
「はい、こんにちわ。」
「またか。今回は用があるんだろうな…。」
「え?別にないです。」
「はあぁぁ…。」
深い溜息を吐かれた。別に悪いことはしてないのに…。
「あぁ、一応あったわ。前に本格的な契約してなかっただろ?それをしようかなって。」
「あぁ、それか…。いいだろう。…って言っても私の真名を教えるだけだがな。」
「そんな簡単なことなの?」
「確かに行為をしては簡単だが。真名を知ってるだけでその精霊との繋がりが深くなり、呼び出すのに苦労しなくなる。…お前には無意味かもしれんがな。」
「なるほどな。…いや、無意味じゃねぇよ?」
「軽々しく呼んでおいてそれはない。…私の真名はヒックス、…これでお前との契約は完了した。」
「簡単!…あれ?特に変わってないけど?」
「実感はないだろうな、呼び出すときなどに関わってくるものだからな。一応酷使するときの魔力の減り方も変わっているがな。」
言われて気がついたが、若干減りが遅くなってる気がする。いや、回復していってるからわかんねぇ。
「ふーん。…んじゃ次いきますか。」
「はっ!?」
そう言って意識を集中させて次の精霊を呼び出す。
「おぉう!?どこのどいつらだ!俺様を呼び出すなんて大した…、え?」
「はい、こんにちわ。」
「…呆れたわ、こいつまで呼び出すなんて…。しかも同時に…。」
目の前に小さな炎の様な塊が現れたかと思うと、それは急激に大きくなり、やがて大きな人型にになっていった。
全身が大きく、筋肉モリモリのおっさんである。体が炎で包まれていてゆらゆらと揺れている。
「はっ!?なんでお前がここに!?っていうか、こいつがお前の言ってたやつか!」
「暑苦しいわね。見ればわかるでしょ?」
「見ればわかるっつったてよぉ…。異常だぜ?これは…。」
「なんか盛り上がってるとこ悪いんですけど…。」
「…まさかこの坊主がな。お前が言ってたのは本当だったとは…。」
「王が二人も呼び出せるとは思っていなかったがな。しかも同時に。」
あら、また王様なのか。なるほどな。
「はい、じゃあ自己紹介します。俺はリード、そっちは?」
「こいつ…、場慣れしてんのか?…俺はサラマンダーの王。真名は…、イフリートだ。手合わせするまでもねぇなこれは…。」
最後は小声で耳打ちするように言われた。他の人に聞かれたらやっぱりまずいのか。
ていうか炎がちらついて怖い、熱くないんだけど…。逆に新鮮で怖いわ、これ。
「はい、契約完了っと。…まだいけるか?」
「あぁ、もう…。」
「何言ってんだこいつ?」
まだギリギリ回復量のが勝ってる…、魔力もまだ半分以上残ってる。急げば後二回くらい呼び出せそうだ。
「おっしゃ、じゃあ連続で!サモン!サモン!!」
ぽんぽんと呼び出していく、連続で魔力を込めていく。
周りの風が集まり、徐々に形を作っていく。その横で土が集まり、四足の魔物みたいなのが出来上がっていく。
「マジかよ…。」
「これほどとは…。」
「ふぅ…、きっつ。」
カツカツだ、もう徐々に魔力が減ってるし、これ以上は無理。
「はー、久々に外に出れた!僕を呼び出したってことは…!?」
「んー、ここの土はあまりよくないんだな。おいらの出番は…。」
パッと、昔のシェリーくらいの大きさの妖精っぽい物が周りを飛び回り、その下では四足のかわいいどせいさんっぽいのがいる。
「「「「…。」」」」
全員周りを見て絶句してる。きついから早く契約して帰そう。
「はい、俺の名前はリード。君たちは?」
「あぁ、ウンディーネの言ってたのはこの人だったの。それにしても僕達四人共呼び出すなんてね…。それも同時に…。」
「んー、よくわかんないけど、契約すればいいのかなー?」
「早くしないときついんだけど。」
「…。面白そうだし、いいよ!これだけ呼び出すってことは実力は計り知れないからね。…シルフの王のジンだよ。」
「戦っても結果は見えてるんだなー、…ノームの王、ピグミーだよー。」
「よっし、契約完了っと。流石にもう出せねぇわ。」
契約が完了してので後はもういいかな。このまま消すのもあれだし、魔力がなくなったらどうなるかだけ見ておこうかな。
「…それにしても、な。」
「えぇ、これだけ一遍に我々が揃うところが見れるとは…。」
「それだけこのリードが異常ってことでしょ?前大戦の時は別々のとこで呼ばれてたりしてたけど。」
「んー、用もないのに呼ばれるのがまず異常なんだなー。」
「へー、どれくらい前か知らんが呼ばれてるんだな。」
「かなり昔だけどな!あの時は楽しかったぜ?」
「どこを見ても戦争で嫌になりましたけどね。」
「空気も澱んでたねー。」
「土も血で汚れてたんだなー。」
よくわからんが、サラマンダーが好戦的ってのがわかった。
そのままプチ同窓会みたいに四人で喋っていたがそろそろ俺の魔力がつきそうで気持ち悪くなってきた。
「うぇ…。そろそろダメっぽい。」
「よくぞここまでもったものです。」
「呼び出した瞬間弾け飛んだ奴もいたからな!…あれは道具に頼ってたからか。」
「次呼び出すときは何か用ある時にしておいてね。」
「んー、帰るんだなー。」
スーっと姿が消えていく精霊達。4人が限界か、後光と闇もいるんだっけ?
後日また挑戦するか。
その時後ろで気配がした、魔力込めることに集中していたので気がつかなかった。
気分が悪い体にムチをうって柄に手をかけて後ろに一気に振り向く。
「うわっ、びっくりした!」
「…なんだ、ルクとエルかよ…。」
思いっきり殺気を込めようとしてやめる。今襲われたら魔力ない状態で戦わなくちゃいけないから焦ったが、周りの気配を探り大丈夫だと確認する。
「驚かそうとして近づいたのに…。」
「ほら、ご主人様にはそんなの無駄って言ったでしょう。」
「独り言喋ってる奴くらいどうにかなると思ったんだけどなー。」
「聞いてたのかよ。…独り言じゃないんだけどな。」
凄い寂しいやつになってしまうじゃないか。まぁ、精霊の姿見えないようにしてたからこうなるのもしょうがないか。
「んでどうしたよ。」
「シェリー様にお聞きしたところ外で何かやってるとおっしゃっていたので。」
「外で独り言なんて寂しい人ね。」
「はっ、ルクに言ってもわからんだろうがあれは高度な魔法なんだよ。ルクに言ってもわからんがな。」
「くっ…。」
「…二人きりだといい感じに話せたって言ってたのに、私がいるとそうなるのですか?」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」
「話せてたか?オカリナずっと吹いてただけだけど。」
ルクが慌ててエルに歩み寄る。俺としてはあんまり話してなくてオカリナ吹いてただけの様な気がするが。