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食堂の扉の前でルクが待っていた。
「…いらっしゃいませ。」
「なんでちょっとふくれっ面なんだよ。」
仕事中なので言葉遣いがちゃんとしてる。新鮮だ。
ルクが扉を開けて皆を中に招く。席に座りいつもの様に注文をする。
フランも俺と同じ物を頼むみたいだ。
「かしこまりました。」
「…別に俺達しかいないし、言葉遣い戻してもいいんだぜ?」
「仕事中ですので。」
「そーですか。」
ルクが敬語使ってると凄く違和感があるし、何よりお堅い感じがする。
そのままルクは厨房の方に注文を伝えに行った。
「…違和感あるねぇ。」
「仕事中ですから仕方ないんじゃないですか?けじめってものがあるでしょうし。」
「そんなもんかねぇ。」
「リー君が適当なだけだよ。」
「それは認める。」
「認めちゃうんですね。」
「それよりも、楽しみだな。エルの初料理。」
「ふふふ、エルったら色々聞いてきましたからね。マスターの好みとか。」
「あー、魚の方が好きとか色々教えてあげたよねー。」
「あぁ…、あの夜の出来事ね…。」
あの時に色々聞いてたんだろう。仕事熱心でいいことだ。
そのまま、どんな料理が出てくるのか楽しみにしながら話していたらルクとエルが料理を運んで食堂に入ってきた。
「お待たせいたしました。」
「おっしゃ、待ってました!」
美味しそうな匂いに釣られてテンションがあがる。
エルとルクがテーブルに料理を置いていく。メインは魚の蒸し焼き、それにスープとパン。見た目もそうだが、匂いも美味しそうだ。
シェリーと銀はいつも通りの物を、フランと俺はそれを。
「あれ?エル達は食べないの?」
「…私達もですか?」
「食事は皆でって言ったじゃん、いけるだろ?」
「片付けとかがありますが…。」
「それは後でも出来るだろ?」
「そうですが…。すいません、まだ仕事中ですので…。」
「…そっか。まぁ、それなら仕方ないな。」
そのへんはかなりしっかりしてるらしい、夕食は仕方ないか。
それでは失礼して、いただくとしようか。
「…。おっ、旨いな。味がちゃんと染みてるし、それにこっちではあんまりしない味付けだな。」
メインをいただき、その後にスープを飲む。いつもと違う味付けなので新鮮で更に美味しく感じる。
「私達の故郷の味付けにしてみました。気に入っていただけるといいのですが…。」
「うん、美味しいよ。」
「嬉しいです…。」
素直に感想を言うと、エルが嬉しそうにはにかんだ。
「マスター、見てください。切り方にも凝ってますよ。」
そう言ってシェリーが果物を見せる。確かに、星型など、色々な形の果物がお皿に乗ってる。
「シェリーさんは見た目でも楽しめるようにしてみました。」
「いいですね。」
シェリーもいい感じだ。
銀はいつも通り、夢中で食べてるし。気に入ってるんだろう。
「あれ?これって…?」
「フランさんは嫌いな物が多いといってましたので、それを克服するために少し工夫をしてみました。」
そう言われて、よく料理を見てみるとフランが以前嫌いで食べれないと言っていた、野菜が細かく切ってあって混ぜてある。やりおる。
「へー、確かにこれだとフランも食べれそうだな。」
「うん、普通に気がつかないで食べてたよ。」
「よかったです。」
うん、皆の反応を見る感じかなりいい感じだ。もちろん俺も大満足である。
皆で完食をする。エルもそれを見て、かなり安心したようだ。口では褒めても態度でわかるもんだしな。
エルとルクはまだ片付けの仕事があるのでそれをしてから食事を取って部屋に戻るらしいので、俺達は一足先に部屋に戻ることにした。
「正解だっただろ?エル達雇ったの。」
「結果でみれば、ですけどね。マスターは運がいいのか悪いのか…。」
「…私、エルに料理習おうかな?」
「かなり夢中になって食べてしまいました。反省です…。」
「皆満足した様で俺も鼻が高いですよ。」
「なんでマスターが威張ってるんですか?」
「いいじゃん。」
威張りながら部屋に戻る。これは俺の功績にいれていいですよね?いや、いれちゃうね。
部屋に戻った俺達はそれぞれ定位置に行き、寛いでいたが俺はふと思いついて一人で窓から外に出ていこうとした。
「どこ行くんですか?」
「ちょっと訓練かな?」
「あぁ…、いってらっしゃい。」
「関心なさすぎでしょう。」
「リー君のやってることに一々ついていけないもんね?」
「そうですね。どうせまたわけのわからないことしますし。」
「失礼な。そんなことするわけないじゃないか。」
「はいはい、いってらっしゃい。」
シェリーがひらひらと手を振る。まぁ、ちょっと一人で集中したかったし。いいだろう。