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「さて、転送石使って移動するけど。もう何もないよな?」

「戻るんですか?確かにここですることはもうないですけど…。」

ちょっと不満そうなシェリー。戻るとしたらもう終わりだからな、戻らないんだけど。

「まだ城の方には戻らんな。…んじゃいくか。」

「え?」

「トラベルワープ。」

転送石に触りそのまま移動する、目指すは故郷だ。


「…あれ?ココリ村…ですか?」

「そうだな。」

「おっ、リードじゃないか。帰ってきたのか?」

「ん、まぁそんなとこです。」

「ほー、そういえ…。いや、なんでもない。」

転送石で自分の故郷、ココリ村へと帰ってくる。見張りの人が話しかけてくるが、多分姉ちゃん関係なんだろうなと察する。

そこにいた人達と挨拶を交わして、目的の場所に向かうとする。

「…あぁ、なんとなくわかってきました。」

「まぁ、俺とお前の二人ってなるとあの場所しかないわな。」

「最近は行ってなかったですからね。」

「忙しいしな。それに人数も増えてきたし。」

「誰のせいですか、誰の。」

「…俺?いや違うよな…、誰だ?」

「本気でそう言ってるなら救いようがないですよ。」

「まぁ、それはしょうがなかったってことでな。」

「しょうがないで済ますのがマスターの悪い癖ですよね。」

「人生を悟ってるからな。」

「よくわからないですね。」

しょうがない、うん。

MMOでレアドロップロット負けも、ボス張り付きで寝落ちも、ラグで頭打ち抜かれて即死も、垢ハックされて装備全ロストも、バグ使用で強制BANも、全部しょうがないことなんだ。後半違う気がするけどそうなんだ。

だらだらと話ながら目的の場所に、途中で会う人皆にシェリーの事を聞かれたがうまくはぐらかす。シェリーが恋人だとか言ってたけど、まぁデートだし許すとしよう。


「久々だけどやっぱいいなー、ここは。」

「自然で溢れてますからね。」

お気に入りの岩にシェリーと一緒に座り込んで森の方を見る。

あの頃より、俺は成長してるがここから見る景色は何にも変わってないな。サッと吹いてくる風もあの頃のままだ。

「…本当に懐かしいですね。」

「あぁ、そうだな。」

「…今から作るんですか?」

「うん、ちょっと練習したいし。ちゃちゃっと作るよ。」

宝物庫からオカリナと木片を取り出す。形などをよく見て、錬金で自分のオカリナを作り出していく。

【風のオカリナ】か、いい感じだろう。魔力込めて演奏すると風に乗って音色が遠くまで届くように作ってみた。

「ぴゅー、ぴー、…。うん、ちゃんと音も出るな。」

「綺麗な音ですね。」

「笛は音色が綺麗なのがいいよな。…。」

しばらく音を出してどこがどんな音かを試す。

…そろそろ慣れてきたし、何か一曲演奏するか。

「…あ、この曲…。」

シェリーと最初に会った時の曲、オカリナヴァージョンである。

最初はゆっくりと吹いてミスも多発したがそれなりに上手く吹けたんじゃないだろうか。練習が必要だな。

「んー、まだ練習する必要があるなー。」

「やり始めてそこまで吹けたら十分でしょう。」

「まだ人に聴かせるような演奏じゃないからな。」

「…、そうですね。」

シェリーが少し悲しそうな顔をする。オカリナを吹きながら少し考える、何故最近シェリーは時折こんな顔を見せるのか。…考えてたらミスった。

「…。マスター吹きながらでいいので聞いてくれませんか?」

「ぴっ!」

「返事まで笛でしなくていいと思うんですが…。」

しなくていいと言われたのでそのまま練習を続けてシェリーの言葉を待つ。

「…私はマスターに使役されてる妖精です。」

まぁ、そうだな。それは俺もわかってるし、シェリーもわかってるだろう。

「前にレイが魔族に攻撃された時…、マスターは凄く怒ってましたよね。」

あー、あの時はキレてたな。うん。

「あの時始めて見ました。…あんなに怒ってるマスターの顔を。」

そんなに怖かったか?よく覚えてないけど。

「…その時思いました。私がレイと同じように怪我した時にもこんなに怒ってくれるのかな?と。」

うん?そりゃ何かに襲われて怪我したら怒るだろうな、怪我するのかはさておいて。

「マスターはレイが人だからあんなに怒ったんじゃない…。」

「それはないな。」

練習をやめて即答する。

「あれがシェリーでも俺は同じように怒ってただろうし、例え銀が同じようになってたとしても同じ行動をしてただろうな。」

シェリーの目を見て、はっきりとそう答える。

「銀ちゃんはあまり関係ないんですが…、本当ですか?」

「あぁ、いつも適当なこと言うけどこれは本当だ。」

「そうですか…。」

シェリーが嬉しそうに顔を綻ばす。

うーむ、最近シェリーが突っかかってきてたのはこれか。

つまり、…不安になってたってことか?妖精でもある自分も人と同じようにしてもらえるか。

「心配しなくても、シェリーも銀も俺は守るっての。」

「そうですよね…。マスターは強いですからね。」

「まぁ、一人で出来ることなんてたかが知れてるけどな。」

「マスターは100人分くらいなんで大抵どうにかなるでしょうに。」

「流石に言い過ぎだけどな。」

笛の練習を再開する、シェリーは心のつっかえが取れたのか俺の笛の音色に鼻歌を合わせる。

「今回のデートでわかりました。まだ私も狙うチャンスがあるってことですね。」

「…うん?なんのチャンスだって?」

「なんでもないですよ。ほら、早く続きを吹いてくださいよ。」

シェリーが小声で何か言ったが笛吹いてて聞き取れなかった。

よくわからんがシェリーが楽しそうだし、俺も笛の扱いに慣れて来て楽しくなって来た所なのでどんどん練習していこう。

日が傾くまでシェリーと俺のセッションは続いた。観客がいたら拍手喝采だろうが誰もいない。まぁ、この場所はこれでいいんだ。

ここは俺とシェリーの思い出の場所だ。…フランと出会ったのもここだけど、まぁ別にいいよね。

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