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手を繋いだまま城の中を闊歩する事になってしまったが、大丈夫だ。

恥ずかしいと思うから恥ずかしいのだ。今までも街中で手を繋いだことなんてあったし、デートだと思うから恥ずかしいのだ。

そう考えたら幾分か楽になった。途中兵士に野次られたが訓練を倍にすることで許してやろう。

「それじゃ、いくぞ?」

「いつでもどうぞ。」

城の前の転送石でシェリーに確認をしてトラベルワープで移動する。

サッと目の前の景色が変わり城下町に着く。…そういえばこの街の名前なんだろ、アトラス街でいいのかな?

「うわー、なかなか賑やかなとこですね。」

「せやろ?俺も少ししかいなかったけど、なかなかノリのいい住民だったで。」

「…また何かしたんですか?」

「おいおい、毎回俺が問題起こす訳ないだろ?」

「むしろ起こしてないんですか?」

「…ちょっとだけ。」

転送石の周りには兵士がチラチラといたが普通の冒険者と思われてるらしく、こちらには声をかけてこなかった。

ガヤガヤと街を独特の喧騒が包み込んでいてシェリーも流石に驚いていたが、すぐにジト目に変わっていた。

「まぁ、今更ですけどね。」

「最近なんかあっさりしてるな。」

「…色々あるんですよ、色々。」

「ふーん。まぁ、まずはどうしたい?」

転送石の前に陣取るのも迷惑なので広場の隅の方に向かいながらシェリーに今後について話す。

「そういうのは普通男の人が決めるのでは?」

「確かにそうだけど、うーむ。」

そうなると非常に困る、何しろノープランだ。そして俺はここの地理にも詳しくない。

ゴルスク商会しか知らねえからな、なんたって。

かと言ってあそこは別に買い物にも向かないだろうな…。小売店みたいなのがあればまた違うが。

「…まぁ、ここでボーっと突っ立ってるのもあれですし。適当に見て回りましょうか。」

「…そうだな。」

結局と言うか当然と言うか、とりあえず歩く事にした。

仕方ないね。


「へー、大きいとこだとこんなのもあるんだな。」

「確かに、ティスカ公国だとあまり見ませんでしたね。」

目の前の大道芸人らしき集団を眺める。

広場の一角で人が飛び跳ねたり、魔法を使ったり、魔物を操ったりなどして人々の注目を浴びてる。見物客は皆興奮して驚いたりで結構盛り上がってる。それに稼ぎもよさそうだ、お金入れらしきものが見えるが半分くらい埋まってる。

「いいなこれ、リードサーカスとかどうよ?」

「センスないですね。それにマスターだと一人で超人的なことするから逆に人が集まらないんじゃないですか?」

「センス…。いや、まぁそうか。」

一人空中浮遊とか一人大魔術とかオーク対オーガの戦争とかすることになりそうだしな。

まだ少し見ていたかったがその集団の長らしき人がこっちをジッと見てくるのに気がついた。

「やばっ、…逃げとくか。」

「はぁ、何かやらかしたんですね?」

「昨日の今日じゃ流石にバレるな、いかんいかん。」

慌てて人ごみに紛れるようにシェリーの手を引いて逃げる。シェリーも察してくれたようで何より。…なのか?

「こっちの方は何があるんかな?」

「ごまかしきれてないですが…。」

「兵士に訊けば何かしらいい情報がもらえるかな?」

「…はぁ。」

シェリーから大きなため息が聞こえるがいつものことだしな。

早速見つけた兵士に話を聞いてみるとこの街は大体3つのエリアにわかれてるらしい。

人々が住む住宅地、買い物などをする商業地、加工や職人たちがいる工場地、そして現在いるのがその中心らしい。

「だってさ、とりあえず買い物出来るとこ回るか。」

「そうですね。」

「エル達と会ったゴルスク商会の方らしいな、てことはあっちだな。」

「はぁ…。マスター、デート中に他の女の名前を出すのはやめてください。」

商会の方を指差しながら言ったらシェリーにまたため息を吐かれた。

「あー、…すまん。」

「…、いきましょう。」

変な空気になったが変わらずに手を繋いでくれてるし、セーフか?

商会の方に向かいながら沈黙なのも嫌なのでなんとか話題を出す。

「シェリーは何か欲しいものあるか?」

「…何も。」

「またまたー、こっちに珍しい果物とかあるかもしれんよ?」

「じゃあそれでも見に行きましょうか。」

若干つめたいシェリーさん。まぁ、さっきのは俺が全面的に悪いわな。しかもまた物で釣ろうとしてるしな。…なんも言えねえ。

「…そういえば、マスターはここで何をしたんですか?」

「ん、あぁ。ちょっとそこの広場で歌ったんだよ。…割と気持ちよく。」

「なるほど、それで目をつけられてるかもしれないってことですね。」

「ちょっと調子に乗りすぎたからな。」

「まぁ、マスターの歌は格別ですからね。…エル達もまた聞きたいって言ってましたよ。」

また沈黙かと思われたがシェリーから話しかけてくれた。

「んー、一回思いっきり歌ってみたいってのはあるな。」

「ティスカ公に頼んで舞台でも作ってもらいます?」

「それもいいかもしれんな。…でも目立ちたくはないなぁ。」

「何を今更…。そういえば毎回思うんですけど、色々な歌ありますけど言語が違う時ありますよね?」

「よく気がついたな。」

「ずっと昔から聴いてますからね。」

「…そういやシェリーとの出会いも歌がきっかけだったか。」

「最近あの曲歌ってませんよね?マスターのレパートリーってかなり多いですよね。」

「そうだなー。…それだけ俺が才能に満ち溢れてるって考えれば妥当だな。」

「そうですね。」

「真顔はやめて。」

話してるうちにいつもの調子になってくる。やっぱりシェリーとの関係はこうじゃなくちゃな。変にギクシャクしてるとどうにもならん。

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