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俺が黙々とご飯を食べてる間に話は終わったらしい。

んー、この。

なんとも言えない立場になってるな、と思いつつもご馳走様をしたらエルに呼ばれた。

「ご主人様、ちょっとよろしいですか?」

「んぁ?何?」

話しかけられてちょっと嬉しくなってしまい変な声が出た。

そのまま皆は部屋に戻っていき、食堂に取り残される俺とエル。ルクが二人きりは危ないとかぬかしたが、エルが窘めて大人しく帰っていった。

「ルクの事なんですが…。」

「あのバカがなんだって?」

エルが物凄く申し訳なさそうにしているが俺はあいつは好かん。

まぁ上下関係について別にとやかく言うつもりはないが完全にナメられてるのが気に食わん。一日でシェリーとか仲間にして後ろ盾まで作りおって。

「すいません…、あの子もまだ色々と戸惑ってるんだと思います…。」

「あの戸惑い方は正直どうなのよ…。」

「それは…。」

「…まぁ、わからんでもないが。」

いきなり雇われて、意味がわからんうちに他国に連れてかれて、そんで城に住んで、挙句に俺って言う規格外がちらほらと。うーむ。

「ご主人様は優しいお方なので我慢してらっしゃいますが…。」

「そりゃ、俺の心はこの大陸より広いからな。」

お世辞と分かっていても反応してしまう、悲しい男の性。

「買ってもらった身でこんな事言うのは…。」

「待った。…昨日から思ってたんだけど、その買ってもらったとか言うのやめにしない?」

「え…?」

「俺としてはエル達を買ったって感じではなく、雇ったって感じなんだけど。」

「でも、それは…。」

「なんか嫌にならない?自分を商品として扱われるのは…。」

「それは…、そうですけど…。」

「そうだな…。うん、こうしよう。俺が救ったってことにしよう。…だからエルもこれから買われたなんて言わないで。救われたとか、救ってもらったって言おうな。」

「え…?凄い別の意味になってしまうんですが…。」

「まぁ、いいじゃん。俺が嫌なの、買ったとか言われるのが。これもうご主人様命令だから絶対聞くように。」

「…はい。」

前々からちょっと食い違ってた部分が修正出来た。少しエルとの距離が縮まった気がした。

正直、元の世界でも奴隷なんていなかったし、ミューも奴隷って言うよりも家政婦、いやもう一人の姉って感じでもう家族の一員だったから今のエルの自分を妙に下に見る態度が少し気になっていた。

ミューとは軽口も言い合ってたし、悪いことをしたら叱られたし、時には内緒話もする仲だった。

エルにもそんな感じのメイドで居てほしいと俺は思ってる。

だが、問題は。

「それで…、ルクの事なんですけど…。」

「あぁ、そうだったな。」

「差し出がましいんですが…。」

「いや、いいから。言ってみてくれ」

「では…、一回ご主人様からルクと話してみてくれませんか?元々あんなに言う子じゃなかったんです…。今までは少しルクが言い争って契約が白紙になるパターンが多かったので…。」

「…まぁ、エルが言うなら話してみるけどさ。」

正直、口喧嘩になる構図しか思い浮かばない。むしろ話が出来るのか?

「お願いします!私の方からも言っておきますので!」

「わかったわかった。近いうちに話しておくよ、それにルクと一対一の話はまだしたことなかったしな。」

「ありがとうございます!」

エルの顔が笑顔になってくれた。…姉って大変だな。姉ちゃんもこんな感じだったんかな?いや、俺はあんまり迷惑かけてないはず。多分…。

エルとは少し話したがルクとは二人で話したことなかったしな。…エルとももうちょい二人で話した方がよさそうだけどな、料理が得意って事くらいしか知らねぇし。

その後二人で部屋に戻ろうかと思ったが、エルは仕事について訊きに行くと言ったので一人で部屋に戻ることに。…さて、ここからが鬼門だな。


「ただいまっと、…あれ?シェリーだけ?」

「おかえりなさい。皆もう自分達のやることに取り掛かりましたよ。フランがすぐに帰ってくるって言ってましたよ。」

部屋に戻るとシェリーだけがいた。大方シェリーがうまいこと言って早めに取り掛からせたんだろう。

「…まぁ、いいけどさ。」

「なんですか、その目は。…それで何処に連れて行ってくれるんですか?もちろん決めてますよね?」

「…まかせろぃ!」

「あぁ、これは考えてないですね。…まぁ急だったし、仕方ないですが。」

「まぁ、待て。…そうだな、アトラス王国に買い物なんてどうだ?」

「あら、珍しくまともな意見ですね。…まぁ合格点でしょう。」

「せやろ?ウォードに連れてってもらったからすぐにでもいけるで?」

「たまにはあの人も役に立ちますね。…では行きましょうか?」

特にすることもないのでそれに承諾する。

「そうだな。…あぁ、一応置き手紙でも書いとくか。…あいつら字読めるよな?」

「読めるし書けますよ。…なんでマスターが知らないんですか?」

「…。しょうがないじゃない!昨日はお前らばっかり喋ってたんだし!」

「ふふふ…、楽しかったですよ。」

「やめて!」

シェリーが俺のトラウマをエグっていく。涙目になりながら手紙を書いて置いておく。

「…では、いきましょうか。マスター。」

「…まぁ、デートだしこのくらいはするか。」

シェリーが手を差し出して繋げとアピール。色々とリードする側が逆な気がするがしょうがない。リードだけに、リードされる。なんちゃって。

さて、死にたくなってきたのでキチンと手を繋いで出かける事にしましょうかね。

「…なんで緊張してるんですか?」

「べ、別にしてねぇよ!?意味わかんね。」

「ほら、してるじゃないですか。」

「いやいや、ないない。」

「手繋いだだけで緊張するなんて、どんな童貞ですか。」

「ははは、面白い事を言う奴だな。…手離すぞ。」

「さっ、いつまでもこんなことしてないで行きましょうか。」

どうってことないと思ってたがいざこの場になってしまうと多少は緊張してしまうな。

振り払おうとした手をギュッと握られ、またシェリーに連れられて部屋を出る。

アトラス王国の方だと知り合いいないし、恋人に見られても問題ないな。

…多分姉弟に見られるけど。

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