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「何がピンチなんですか?」
ちょっとムスっとしたフランがレイに訊く。言葉にトゲがあるような。
「ちょっとリードのだらしないところが見えるってだけですわ。」
「それって…、部屋が汚いとかですか?いやでも、リー君案外綺麗好きだし…。」
「そういえばリードって案外綺麗好きですわよね、雑な事が多いですのに。」
「それとこれは話が別って言うか、俺一人だったらくちゃくちゃになるだろうけどシェリーとかいるしな。」
俺だけだったら自分がわかるところに色々おいておけばいいけど、そうはいかないからな。
シェリー結構姑みたいなとこあるし、グチグチ言われるのも嫌だしな。
「シェリーさんはまだあの格好なの?」
「あー、かなり気に入ってるからな。ずっとあれだな。」
「そうなんだ…。」
そういいながら自分の胸の辺りを見つめるフラン。まぁ、言いたいことはわかる。反則だからな。
「じゃあ、早速参りましょうか!」
「なんでレイが仕切ってんだよ。それにその顔やめろ。」
「楽しみですわ。」
「…?」
ノリノリなレイと不思議そうな顔のフラン。
俺はちょっとげんなりしてる。まぁ、フランだし大丈夫だろう。
「あら、マスター。…あぁ、フランさんのことでしたのね。」
「あれ?誰?」
「ご主人様の恋人でしょうか?」
「主様、エルとルクはどこで寝ればいいんでしょうか?」
そのままレイに引っ張られて部屋に連れて行かれる。
フランも大人しく付いてきたが部屋の扉を開いてから固まってる。
「えぇ…、リー君、これどういうこと?」
「…料理が出来る人いなかったからメイド雇ったら二人増えた。」
「あれ?私が馬鹿なのかな?言ってる事がわかんない…。」
「またマスターは適当な事を…、まぁ言ってる事は本当なんですけど。」
フランは俺の言ったことを理解しようと必死に頭を働かせてるようだった。
これ以外に言いようがないじゃない!
「…私が料理出来るよね?」
「そりゃフランも出来るけどさ。俺の目的にいつもついてくるって訳にはいかないだろうし…。」
「私はリー君とずっと一緒のつもりだよ?」
「お、おう。」
直球投げられると反応に困る。
「…フラン様、私はエルと言います。今日ご主人様に買われました。」
「私はルク、お姉ちゃんと一緒に買われたわ。」
「これはご丁寧に…。私はフランシス、フランって呼んでね。」
「さて、自己紹介も済んだし。」
キリのいいとこでうまく切ったと思ったがフランがこちらに詰め寄ってきた。
「リー君…?毎回女の子を連れてくるのは癖なのかな?しかも今回は二人も。」
「えぇ?いや、しょうがないんだよ。」
「レイさんの時もそんなこといってたよね?それにその後こっちに来ちゃうし…。」
フランに捕まって部屋の隅まで連れて行かれての言い訳タイム。
「やっぱりご主人様の恋人ですか?」
「何言ってるんですか。マスターの恋人は私です。」
「あー、あいつ色々やってんのね。」
「思ったとおり、面白いことになりましたわ。」
「エルとルクの寝る場所は…。」
「そうでしたわ、…一緒の部屋で寝るんですの?」
「えぇ、そうなの?」
「ご主人様に聞いてみませんと…。」
「私もずっと寝てますし、今更です。どうせあのチキンマスターは手なんて出してこないです。」
「それでも一緒の部屋ってのはちょっと…。」
「ご主人様の決めた事にしたがいましょう。」
「最近来客が多いので空いてる部屋の数が少ないですわね。」
「それならやっぱりここで寝た方がいいですよね?」
「そうしましょうか。どうせマスターもそれで問題ないって言います。」
「それならベッドを持ってこなくちゃですわ。」
「そんな!私達は床でも十分ですので…。」
「うちのメイド達もみんなベッドですわよ?それにこの分だとフランさんのベッドもいりますわ、そのついでですわ。」
「それなら私達も手伝います。ルク、いきましょう。」
「ほら、銀ちゃんもいきますよ。どうせマスターはこのまま捕まってますわ。」
「わかりました。…部屋が一気に狭くなりませんか?」
「…どうせならもう少し広い部屋にしましょう。確か、一番広い部屋ならまだ空いてますわ。」
「いいのですか?」
「お父様には後で言っておきますわ。部屋のランクは少し下がりますけど、それは仕方ないですわ。」
「今まで普通にいましたけど、ここって本来それなりの方を持て成す部屋ですよね?」
「まぁ、リードの功績を考えたらここを使っていいと思いますわ。一応この領地を救ったことになるんですもの。」
「へー、あいつってやっぱり色々やってんのね。」
「この前迷宮に現れた魔族倒したのもリードですからね、あれは本当にリードがいなかったらダメでしたわ。」
「えぇ?あれはティスカ公様がなんとか退けたって訊きましたけど…。」
「表向きはそうですね。マスター目立ちたくないらしいので。」
「えー、てことはティスカ公よりも強いってことなの?」
「強いどころか実力がわからないですわ。リードは銀ちゃんよりも弱いって言ってますけど。」
「我を従えてる主様が我よりも弱いはずがないんですよね。」
「強さがよくわかんない…。」
「私達の訓練を見ればわかりますわ。…って言っても何やってるかわからないと思いますが。」
「そんなにハイレベルなの!?…更にわかんなくなってきた。」
「さぁ、さっさと引越ししましょうか。持ち物は大体マスターの宝物庫に入ってますし、楽ですね。」
それなりに仲が良さそうで何よりです、俺の意見がなくて引っ越すことになりました。
「リー君!聞いてるの!?」
「あっ、はい。すいません。」
「大体リー君はいつもいつもそうやって…。」
引越しの準備が進んでいく中、俺はいつのまにか部屋の隅で正座させられてフランに説教されていた。
誰も救いの手を差し伸べないってことは全体的に俺が悪いんだろう。うん、わかってる。
その後2時間くらい説教された。