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「意味のわかんない事いってないでさっさと飯食おうぜ。」
「なんでも好きなの食べてもいいの!?」
「いいんじゃね?俺はいつもおまかせだけど。」
「私は…、ご主人様と一緒の物で…。」
「えー、折角だからいい物食べたらいいのに。」
「安心しろ、ここのは全部いい物だから。」
結局ゴチャゴチャ言ってたがルクも俺と同じもので。
これが一番安定する気がする。
「わー、美味しそうですね。」
「まぁな。」
「なんであんたが威張ってるのよ。」
出てきた料理を眺めてエルが嬉しそうにそう言う。
「…、メイドも一緒に食べるんですのね。」
「あっ、…すいません。」
「いいんだよ。うちの決まりってことで、みんなで一緒に食べたほうがうまいだろ。」
「…リードが決めたことならいいのかしら?」
「お姉ちゃん!これ美味しいよ!」
「流石ルク、動じずに食べる姿に惚れ惚れするわ。」
「はっ!?こっち見んな!」
エルは少しすまなさそうにしていたがルクはもう既に手が出てる辺り流石だ。
「あぁ、食べる前にいただきますしような。」
「…?なにそれ?」
「…儀式みたいなもんだ。」
「ふーん、で?どうするの?」
「こうやって、手を合わせて…、いただきます。…これだけ。」
「…変なの。」
そう言いながらもルクは合わせてやってくれる。エルも同じようにしてくれる。
「前から思ってましたが、それっているんですの?」
「まぁ、命ある物を食べるからいただきますって感じだな。」
「あぁ、ちゃんと意味はあったんですのね。」
レイはそう言いながらもそのまま食べ始めた。やるんじゃないんかい。
シェリーと銀はいつものように食べる。
エルは何かブツブツ言いながら時折頷きながら食べてる。多分、ちゃんと味わって食べて、研究してるんだろう。いい子だ。
ルクはうるさい。一口食べてはエルに何か言ったり、俺にもこれ美味しくない?とか聞いてくる。そりゃ美味しいに決まってる。
「…、流石にこのくらいの料理を作れとは言わないが、どうだった?」
「…はい、とても美味しかったです。」
食べ終わり、エルに感想を聞いてみる。
「色々学ぶことが多そうで楽しみです。」
「そりゃよかった。…料理が美味しいとそれだけで幸せになるからな。」
「そうですね…。」
エルは向上心が高そうでなにより。それよりも…。
「お前も色々頑張れよ?」
「いきなり何よ、…そりゃ、買われたんだから最低限のことはするわよ…。」
「それならいいけどさ。」
それなりに頑張ってくれるならいいんだ。
食後に少し雑談していたら。
「リード様、お客様がいらしています。」
「え?俺に客…?誰だ?何にも約束なんてしてないしな…。」
城のメイドが俺に来客を知らせてくれる。
「珍しいですね。マスター、知り合いそんなにいませんのに。」
「なんか心に来るな。…まぁ、行ってくるか。先に部屋戻ってていいぞ。」
「…そうですね。戻りましょうか。ほら、行きましょう。」
シェリーがみんなを連れて部屋に戻ってくれた。残されたのは俺とレイと城のメイド。
「さて、いきましょうか。」
「え?レイも来るの?」
「この城のお客様でもありますわ。」
「そうか?…まぁいいけどさ。」
ちょっとよくわからんがレイが言うならそうなんだろう。
メイドに案内されて、そのお客様とやらが待っている客間までレイと一緒に行く。
「えぇ…、なんでここにいるの…?」
客間の扉の前で思わず口に出してしまう。
部屋の気配を探ると懐かしい気配が一つ。
何故このタイミングで、最後に話したのは迷宮入る前だっけ?
「何を言ってますの?開けますわよ?」
「ちょっと!…久しぶりだな、フラんぶぁ!」
「リー君!!」
心の準備が出来てないのにレイが扉を開けてしまった。
精一杯かっこよく再会を演出しようとしたがフランが飛びついてきたので台無しだ。
「どうしたんだ?ていうかなんでここに?」
「あー、リー君ー。」
「何何、なんなのさ。」
そのままフランが俺にしがみついて離れようとしない。そして話を聞いてくれない。
「…。」
「えぇ…、なんで俺をそんな目で見るの?やめてよ。」
「…はっ!久しぶりに見るリー君に興奮しちゃって…。」
レイが物凄く冷ややかな目で見てくる、俺なんもしてないのに。
ようやく離れてくれたフラン、顔が真っ赤だがいつものフランだ。
「んで、どうしたのさ。急にこっち来るなんて聞いてないぞ?」
「驚かせようと思って…。」
「驚いたけどさ…。」
「それに魔族が出たんでしょ?…心配になっちゃって。」
「あぁ、そうか。」
とりあえず、椅子に座らせて色々聞いてみると。
村にも迷宮に現れたと言う魔族をティスカ公が倒したと言う知らせは飛んでいたようで、俺がいるので絶対に関わってるだろうとフランは思ったらしい。
確かにそうなんだけど。
それで心配になって、念喋ではなく直接こっちに行く事にしたらしい。
フランのお父さんはすぐにでも行けと言ったらしいし、うちの父さん達も行ったらどうだと背中を押したらしい。
そこからは色々準備して、村に来た冒険者にここまで転送してもらった。そんな話をしてくれた。
「そうだったんか。まぁ、俺はこの通りピンピンしてるし。レイ達も無事だ。シェリーも銀もいるぞ。」
「よかった…。…それで。」
「ん?あぁ、レイの事か。」
「リードのお客様ってことはわたくしのお客様でもありますから、ここにいますわ。」
そこまで話してフランはレイの方を不思議そうに見ていた。
俺もレイがここにいるのはちょっとよくわからないけど、そう言うならそうなんだろう。
「そうなの?」
「わからんがそうらしい。」
「なんでリー君の隣に座ってるの?」
「わからんがここしか席がないからじゃないか?」
二人がけのソファーの向かい側にフラン、そして隣にレイ。
「…。」
「…。」
「え?何、この間は。」
レイとフランがお互いに見つめ合ってる。お互いに静かなのでなんとも言えない雰囲気だ。
「…リー君の部屋はどこ?」
「え?来るの…?」
「シェリーさん達に挨拶したいし…、ダメなの?」
「いや、ダメじゃないけどさ…。」
「あらあら、早速ピンチですわね。」
今部屋にエルとルクがいるしな。また説明しなきゃいけない…。
後レイがニヤニヤしてんのがすっごいムカつく。