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「買ってきた。」
「買ってきたって…。今日は下見だけって言ってたじゃないですか!!それをこんな…、二人も買ってきて!何させるつもりなんですか!!」
「まぁまぁ、訊けよ。俺としても二人も買うつもりじゃなかったんだよ?でも付属品が付いてきてだな。」
「付属品って私のこと!!?ちょっとひどいわよ!」
「そんなことはどうでもいいです!!すぐに返して来てください!」
「おいおい、無茶言うなよ。もう契約交わしてきたんだから…。」
「私を無視しないでよ!!」
「ちょっとルク…、ご主人様達の問題だから、ね?」
シェリーが俺に寄ってきて鬼のように捲し立てる、それをのらりくらりと躱す俺、ルクが怒りで俺に向かってくる、それをエルが押さえる、銀が欠伸をする。修羅場である。
「…それで?納得のいくような説明を求めます。」
シェリーの猛攻をまぁまぁと宥め、全員を椅子に座らせる。
ここで第二回リード家会議が始まるわけだな。
「料理がうまいって訊いたから雇ってきた。そしたら付属品もついてきた。」
「…。」
「きゃあ!?」
「きゃっ!!?…え??今詠唱は?それに魔法が消えた?」
シェリーが無言で風魔法を放ってくる。流石にそうなるよなって思いつつも遮断で消し去る。
「ほら、エルとルクが驚いてるだろ?」
「マスターがちゃんとしないからです!!」
「まぁ、簡単に言うとさっき言ったやつなんだけどさ。…ちょっとね、気になったんだよ。エルの目がさ。」
そう言ってエルの方を見る。今は濁っていないが出会った時は本当に死んだ目をしていたからだ。
「私の目…、ですか?」
「そう、なんか絶望してるような目だったからさ。今はそうでもないんだけど。」
シェリーは腕組して聞いてくれてる。続きをどうぞって感じだ。
「なんか訳ありなのかなーって思ってさ。それで雇ってみたらルクが付いてきたんだけど、それでなるほどってね。」
「何がなるほどなのよ!」
ルクが反発するようにこちらに噛み付く。
「それだそれ。大方今までの雇おうとした人達にもその態度だったんじゃないか?それで話が流れて…ってパターンが何回かあったんじゃないか?」
「…だってお姉ちゃんが変な奴に雇われたら嫌じゃない!!」
「ルク…。」
「そうだな。それをルクは考えていたんだろうけど、エルの方はこのまま雇われなかったらどうなるのかわからない。…って考えて絶望してたんだろうよ。俺の推測だけどな。」
「…はい、ご主人様の言う通りです。…このまま二人共雇われなかったら処分されていたか、それとも…。」
ポツリとエルがそう言った。お互いにお互いを守ろうとした結果がこれだな。
「…話は分かりました。けれど、急に買わなくてもよかったんじゃないですか?また後日って手もあったはずです。」
「まぁそれは…、すまん。」
「マスターの事だからとは思いましたが、一言くらい欲しかったです。銀ちゃんもそうですよね?」
「我は別…。はい、欲しかったです。」
「すまんて。それと銀を脅すなよ。」
シェリーが渋々といった感じで認めてくれた。銀は元からどっちでもいいらしい。
「それでは改めまして、私はシェリーと言います。マスターに使役されてる妖精ですがマスターとは相思相愛なのでそこのとこはよろしくお願いします。」
「後半がおかしい、けど前半は合ってる。」
シェリーが自己紹介をする。
「あ、私はエルです。シェリー様もご主人様と同じように接していきます。」
「私はルクよ、…妖精って本当?どうみても人間にしか見えないんだけど?」
「おとなしい方がエルでかしましい方がルクですね、わかりました。」
「かしましい方って何よ!」
「ほら、…それと妖精は本当ですよ?…ね?」
そう言ってシェリーが本来の姿に戻る。俺も久しく見てなかったので懐かしい。
小さな体に戻り、ふわふわと宙を舞ってから人間の姿に戻る。
「…、ご主人様が使役しているんですよね?」
「まぁ、そうなるな。」
「ちょっと、あんたおかしいんじゃない?ティスカ公とも知り合いで、しかも妖精を使役してて…。」
「マスターはおかしいですよ。」
「ぐぬぬ、否定はせんがその言い方はトゲがありすぎる。」
これで一応は全員の自己紹介が終わったな。
「まぁ、当分はここで過ごすとは思う。一応さっきティスカ公に頼んどいたから二人は城で仕事の手伝いをしてもらうから。」
「はい、精一杯頑張ります。」
「えー?私もやるの?」
「お前は俺に買われたってことをもうちょい自覚しような?…さて、二人にもうちょい俺の事を知ってもらうか。これからやる事に一々驚いてもらってたら身がもたんしな。」
そう言って宝物庫からミスリルの塊を取り出す。
待ちに待った俺の武器の作成を兼ねて色々説明していこう。