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にほんめっ!
「もしかしてあんたって物凄い人なの?」
「まぁ、色々やってるからな。否定はせんよ。」
ルクがひそひそと俺に話かける。なんか堂々と言ってしまうと恥ずかしいな。
「お姉ちゃん、私達とんでもないのに買われちゃったかも。」
「えぇ…、私もまだ心の整理がついてない…。」
兵士達に返事をしつつ、城の扉を開けて中に入っていく。メイドにティスカ公の場所を訊いて今なら広間にいるとの返事が帰ってきたので広間に突撃するとしよう。二人の滞在の許可もらわんといかんしな。
「お城なんて初めて入りました…。」
「これから嫌って程入ることになるから…。とりあえずティスカ公のとこいくぞ。」
「え?そんな軽々しく会えるものなの?」
「お前達の滞在の許可得なきゃいかんだろが。」
「…あぁ、国に入るのに公爵直々の許可がいるのかしら?」
ルクが首を傾げてそう言うが全然的外れだ。
「ちゃうちゃう、ここに住むんだから。その許可。」
「はぁ?何言ってんのあんた。」
「ちぃーっす、ティスカ公に許可貰いにきましたよっと。」
そう言いながら広間の扉を開ける。中にはティスカ公と数人のメイド達しかいないことは把握済みだ。
「おう、リード!許可ってなんのことだ?レイとの交際の許可か?」
「あほか、この二人メイドとして俺が買ったからその滞在の許可を貰いに来ただけだ。」
「なんだ。それなら全然いいぞ。」
すたすたとティスカ公の方に向かいながらそう話す。後ろではエルとルクが跪いてるが俺を見てまた目を丸くしてる。
「何してんだよ、こっちに来て挨拶しなきゃ。」
「そんな!恐れ多いです!」
「…。」
「あらら、借りてきた猫みたいに縮こまっちゃってまぁ。」
「いや、これが普通の反応だからな?お前がおかしいだけだからな、リード。」
エルは反応してくれてるがルクはショックなのか固まってる。
「右の髪の毛が長い方がエルで左の短い方がルク。ほら、ちゃんと挨拶。」
「は、はい!この度ご主人様に買っていただきました、エルと言う者です!作法も何も、」
「長い長い、ティスカ公はあんまり偉くないからそんなにかしこまらなくていいから。」
「いやいや、偉いから。俺普通に偉いから。」
「ルク、です…。」
「キャラ逆じゃね?ルクはもっと喋ってただろ。」
「普通この状況でベラベラ喋らないからね?俺そんなのお前以外に見たことないからね?」
確かにティスカ公は玉座に座ってて偉そうにしてるが言うほどか?
「許可は得たってことで。あっ、あとさ。どうせだからこの二人明日からここの城で使ってもらえない?どうせ俺と一緒に居てもやることないだろうしさ。それなら仕事させて覚えてもらった方がいいかなって。」
「あー、どうだろな。おい、どうだ?」
「かしこまりました。こちらで準備しておきます。」
「大丈夫だってさ。…もう戻った方がいいんじゃないか?後ろの二人が完全に混乱してるぞ。」
ティスカ公がエルとルクを見ながらそう言う。びっくりさせたかったがやりすぎた感。
「そうだな。それじゃ、行くわ。あの件についてなんか進展あったら教えてくれな。」
「お前くらいにしか対処出来ないだろうしな。また、他のとこでも現れたらしいから気をつけないとな。」
「またか…。まぁ、基本的に俺はここしか守らねぇからな。他は知らん。」
「それだけでも助かってるんだがな…。」
そう言いつつエルとルクを連れて広間を出る。二人とも完全に混乱しているので俺が引っ張っていくしかなかった。
「主様、お帰りなさい。…本当に買ってきたんですね。」
「銀だけか、ただいま。」
「い、犬が喋ってる…?」
「可愛い!!抱いてもいい!?」
エルとルクを引っ張って部屋までやっと帰ってきた。銀はいたけどシェリーの姿がない。マーカスのとこかレイのとこにでもいるんだろう。最近忙しいからな。
銀が喋ったのを見て、エルは俺にしがみついてきたがルクはサササーっと銀に近寄って、もうすでに触ってる。扉を閉めて部屋の中に入る。
「はいはい、自己紹介をっと。」
「私ルク!ワンちゃん、お名前は?」
「我は一応狼なのですが…。銀牙と言います、銀とお呼びください。」
「わ、私はエルです…。」
「あれ?エルは動物苦手とかか?まずったな、最初に聞いておくべきだった。」
「い、いえ、そうではないのですが。喋ってるのが…。」
「…あれ?そういえば犬が喋ってる!!」
「今頃かよ、…あと言っとくけど銀は犬じゃなくて狼だからな。しかも超つええから。」
「こんな可愛いのに?」
「元の姿に戻ったら凄く凛々しいからよ。…これ以上いきなりびっくりさせるのはやめるか。銀は俺が使役してる魔物でな、今はそのサイズだけど本来はメチャデカイから。」
「ま、魔物ですか…。え?使役?」
「そ、使役。あともう一人、いや一匹?いるんだけど…。」
そういいながら扉の方を見る。シェリーが来る気配がする。
「ふー、レイったら流石に…。…マスター!!どういうことですか!!!」
扉を開けてシェリーが中に入ってくるやいなや叫んだ。うん、予想はしてた。