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「奴隷…ですか?」
「そうそう、ここのメイドって優秀じゃん?そういうのってどこで仕入れてんのかなーってさ。」
一人忙しく机に向かって書類を書いてたマーカスが顔をあげる。
机には紙の束がドンっと置かれている、一人でやるには大変そうだな。
「ふむ、それならばゴルスク商会に頼んでみましょうか?しばらくお待ちを。」
「助かる。そっち方面には疎いからさ。」
「リード殿は基本的に疎いような気がしますが。」
「その分戦闘で頑張るさ。」
マーカスが苦笑しながら新たな紙を出しつつ何やら書き込んでいる。多分紹介文を書いてくれてるのだろう。ありがたい。
「よし…。」
マーカスが呼び鈴を鳴らしてメイドを呼ぶ。
「すまんがウォードを呼んできてくれ。リード殿、これを商会に渡せば悪いようにはされないと思います。ウォードがゴルスク商会まで案内してくれるでしょう。」
「さんきゅー。…それでお金なんだけどさ、金貨50枚くらいで大丈夫かな?」
「令嬢でも買うおつもりですか?値段はピンキリですがそこまでのはなかなかないかと。」
あら、もっと安いのね。それならそれでいいけども。
「呼びましたかー?あ、リード君ちっす。」
「ちーっす。」
「ちょっとリード殿をゴルスク商会まで案内してほしい。」
「了解です!それじゃあ、行きましょー。」
「マーカスさんありがとうございます。」
ウォードが扉を開けて入ってきて、マーカスが事情を説明する。
ウォードは基本軽い奴なのでなんだかんだ気が合うからいいな。
ウォードにつれられて部屋を出る。ちゃんとマーカスにお礼を言ってからだ、このあたりがモテる秘訣なのかも。
「それにしてもゴルスク商会なんてなんで行くんすか?」
「ちょっと奴隷を買いたくてな。」
「…シェリーさんいるのにまたなんていうか。」
「そっちじゃないからな?メイド的なのが欲しいんだよ。」
「あぁ、なるほど。」
城を出て城の前にある転送石のある建物に向かう、違う街にあるのか。
そして、なんで皆そっちにもっていくんだ。俺別に飢えてないっつうの。
「んじゃ、飛びますよー。トラベルワープ。」
「はやっ!」
部屋に着くなりウォードが転送石に触り俺の手を持って呪文を唱える。
一瞬で別の風景になる、転送されたようだ。周りを見渡すと広場みたいだ。見張りの兵士達がこちらを見るがウォードの姿を見て大丈夫だと判断したのか特に何も聞かれなかった。
「速くないっすかね?」
「こっちも忙しいんすよ、パパッとやっちゃわないと。」
ウォードがサッサと移動を開始する。遅れないようについていかなくては。
「すぐ正面のデカイ建物がそうっすよ、後ここはアトラス王国の城下町なのでそこんとこよろしくっす。」
「ふぁっ!?ここがそうなのか、ていうかここに店構えてるって相当だな。」
「そりゃ、ドデカイ商会ですからね。今後世話になるんじゃないすか?」
「そうなのか。ま、すぐそこにあるし。ここまででいいよ。」
「そうっすか?一応ついてったほうがいいんじゃないっすか?舐められるといけないっすし。」
「一応紹介文あるし、大丈夫だろ。」
ウォードも忙しそうだしここからは俺一人で大丈夫だろう。紹介文をチラッと見せる。
「それなら大丈夫っすかね、…じゃあ帰りますよ?」
「おう、仕事頑張ってな。ありがとう。」
「どういたしましてっと。」
ウォードが転送石で帰っていく。
さて、ここからは俺一人だ。まぁ、これくらい一人で出来ないとシェリー達に笑われちまうしな。
正面にあるデカイ建物を見上げながら気を引き締める。
「いらっしゃいませー。ご用件はなんでしょうか?」
扉の前に門番がいて、用件を聞かれる。流石にしっかりしてんな。
「あー、ちょっと欲しいモノがあってですね。これ紹介文っす。」
そう言って手紙を門番に渡す。
「開けても?」
「どうぞ。」
「…、かしこまりました。…この方をゴルスク様のとこに案内を。どうぞ、お入りください。」
「どうもっす。」
「こちらでございます。」
門番が紹介文を流し読みして、頷いた後。扉の向こうにいるメイドに案内を頼んだ。
ゴルスクってことは一応オーナー的な人に繋いでくれるのか。凄いな、ティスカの威光。
メイドの後についていく、中をザッと見るがかなり人がいる。
「だから!こっちで頼んでたのはそれじゃないだろ!?」
「そう仰られましても、こちらの証明書にはそう書いてあるのですが。」
やら。
「ありがとうございます!これでなんとかなりそうです!」
「いえいえ、我が商会としてもこれからお世話になりますのでこれくらいは。」
とかあちこちで商談がされているようだ。普通こういうとこでやらんと思うけど、何しろ人が多い。
ロビー的なとこには机と椅子が沢山あって軽い商談はここで済まして、大きいものなどは奥に通されるって感じかな?
「こちらでございます。」
「あ、はい。」
などと思っていたらメイドが扉を開けて奥の廊下に進むように促してきた。コミュ障っぽい受け答えだわ…。
メイドが扉を締めて廊下の先を進む。通る途中にいくつか部屋があって、若干声が聞こえてるとこを考えたらここでデカイ商談されてるんだな。
…情報盗んで金にならんかな?いや、その情報売るツテがねぇか。
「こちらでございます。…向かい側のお席にお座りになってお待ちください。」
「どうも。」
「失礼しました。」
数ある部屋の中の一つの扉を開けて中に案内される。メイドは扉を閉めて出て行った。
立派だ、ティスカ公に貸してもらってる部屋程じゃ流石にないけど、大体10畳くらいか?それに飾ってある物や椅子などもセンスがいい。…このツボ高そうだな。
ざっと周りを見渡してから向かい側の椅子に座る。さて、どれだけ待たされるとこやら。
暇だし、フィンネルでも飛ばして遊んでおこう。