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とりあえず腰につけていつでも出せるようにしておくために鞘的なのでも作っておこう。
木片を取り出して錬金で加工していく。
「マスター、あまり派手なことしないでくださいよ。」
「あん?何が?」
「あの竜巻ですよ、どう考えても大魔法なんですから…。」
「あれは見てちょっとひいたぞ、マジで。」
「まぁ、あんなことやるのリードくらいなので居場所がすぐわかりましたけどね。」
「あぁ…、あれは失敗だったな。瓦礫の山作っただけだったし。」
あれは反省すべき汚点だな。ただ轟音立てて山作っただけとかなんの役にもたたねぇ。
みんなそれぞれの椅子に座りつつ、俺の鞘を作る作業を見てる。
「…見てて楽しい?」
「んー、やることがないので見てる感じですね。」
「リードのこういうやつ見るとワクワクするから俺は好きだぜ?」
「私も普段はあまりこのような作業はみませんからね。それなりに楽しんでますわ。」
「わたくしも暇つぶしですわね。」
「主様のやることは毎回驚きなので見てて楽しいですよ?」
「バラバラじゃねぇか、まぁいいけどさ。」
形を整えながらそう言う。
実際に矢を入れてみて取り出しさやつけ心地を確かめてみる。
んー、それなりにいいけどもう少し出しやすいようにしたいな。
「…リードってそういうとこマメですわよね。」
「そうか?」
「やることなすこと雑なんですけどね、なんでか自分の装備とかは作り込むんですよ。」
「…まぁ、名残かなぁ。」
ネトゲ時代は服装にも気を使ったものだ。…もちろんキャラクターのだが。
この防具にはこの武器が似合うとか色々と想像を働かせて組み合わせを作ったものだ。
…懐かしいな。
「まぁ、装飾は大事だよな!」
「そういえばおっさん、公爵なのにあんまり着飾ってるとこ見たことねぇな。」
「まぁ公の場でもない限りはそんなにな。…それに動きにくいしな。」
「右に同じですわ。」
「以下同文ですわ。」
「…まぁ、今の格好のが似合ってそうだしな。」
パッと見は公爵なんて言われてもわからんだろう。
クラウ夫人もレイも姫って感じじゃなくて普通の冒険者って感じだな。
これは別に今回に限ったことじゃなくて普段着からこんな感じだ。動きやすく、それでいて優雅さを兼ね備えてるドレスみたいな。
むしろシェリーのが姫っぽい格好である。普段から後方支援なのでそんなに動かない為動きにくそうな服を着ている。
そして旅人の服な俺。アンバランス。
鞘の調子を見るために操作して取り出したりしてみるがいい感じだ。
それを見てまたシェリー達が呆れた顔をしていたのはもはや言う必要はないな。
「さて、そろそろ寝るとするか!」
ティスカ公がベッドにダイブするように飛び込む、一応土で出来てんだから痛いと思うんだけど。
「そうね、明日もあるんだから寝るのがいいですわね。」
クラウ夫人もベッドに移動する。それぞれ皆ベッドに行くようだ。
「まぁ、俺もこれ以上することないし。寝るとするか。…一応、銀に頼んどくけど敵が来るようだったら虐殺しといてね。」
「大丈夫ですよ、主様。」
ベッドというかソファにうずくまった銀がそう言った。せっかくベッド作ったのにそっちで寝るか、まぁいいけど。
シェリーも流石にここで一緒のベッドに入ってくることはなかったのでゆっくりと寝れそうだ。
ゆっくりと目を閉じて、そして魔力消化するの忘れてたのでひたすら頭上で作っては消しての作業をして寝た。
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「なんですか…、あの子供は…。」
簡易用の水晶の前でポツリと呟く。広場の水晶はそのまま映すのではなく一旦別の部屋で映像に問題がないかチェックしてから流すのだが…。
「絶対ここの映像はながさないでくださいね。」
「わかってますよ…、こんなの流せるわけないじゃないですか…。」
「リード殿…。」
となりでマーカスさんが頭を抱えている。
「流石先生だな!」
「俺あの竜巻来てもすぐに伏せてやり過ごせるようになるまで2週間くらいかかったからなー。」
「それにしても銀さんも凄いよな、やっぱり元の姿だと迫力が違うぜ!」
「シェリーさんと結婚したい…。」
後ろで水晶を見ていた兵士たちが口々にリードを褒め称える。
「皆さんは知っていたんですか?この子供の事を…。」
「…まぁ、そういうことです。今回少し気になることがありまして。それで助っ人を頼んでいたのですが…、完全にやりすぎてますね。」
「はぁ…、何者なんですか?あのリードって子供は。」
「さぁ?…我々に言えるのは敵ではないってことだけです。」
「まぁ、先生は先生だよな。俺たちも随分世話になってるけどあんまり自分の事はなさないしなー。」
「銀さんも先生に使役されて強くなったんだっけ?元々強かったって先生言ってたけど。」
「シェリーさんと個人的に契約を結びたい…。」
また口々に兵士たちが答える。
「そんな…、どう考えてもおかしいじゃないですか!あんな子供があんな大魔道を扱えるなんて!!」
「先生は魔法だけじゃないんだけどなー。」
「最初なんて10対1で攻撃カスリもしなかったしな!」
「銀さんとも互角以上に格闘戦するしなー。」
「シェリーさんと一緒にベッドで寝たい…。」
確かに、ティスカ公をも凌ぐ戦闘をあの子はしていた。
完全におかしいのだ、接近戦も一流の剣士そのもので魔法もおとぎ話に出てくるような魔法を放つなんて…。
「…、まぁ言いたいことはわかります。あれはそういうものだと割り切らないとダメですよ…。」
ポンっと肩に手が置かれる。苦笑いのマーカスがこちらを見ていた。
「そう言われても…。」
「直になれます。…リード殿が迷宮についてしりたがってましたからね。きっと、目をつけられてますよ。」
「そんな…、どうすれば…。」
人生始まって以来のピンチだ、あの子とこれからどう接していけばいいんだ…。
後半はダン視点です。




