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にほんめっ!
そのまま木片も錬金でちょうどいい大きさに変えていく。
そして二つ合わせて錬金っと、いつものように効果をつけて…。
「はい、一本完成。」
「流れる様に作業するんだな、思わず魅入ったじゃねぇか。」
「10本だけでいいのですか?」
「とりあえずだな。そんなに数もないし。」
そう言いながらちゃっちゃと一つ、また一つと矢を作っていく。
「ふー、とりあえずこれは秘密兵器ってことにしとくか。」
出来上がったものを宝物庫にしまう。
「…どうせそれも効果ついてんだろ?」
「そりゃな。つっても木の矢と同じ効果だけどな。木の矢の方射ってみる?」
「射つ射つ~。」
「魔力こめろよ。」
そう言ってティスカ公が弓矢一式を机から取り出し試し打ちをする。…あれ、デジャブ…。
「そら、よっと!」
ティスカ公が見事な構えで弓を放つ、流石に様になってる。
シュッと矢が飛んでいき、音を立てて少し遠くにある家の壁が半解する。
「なんですのー!今の大きな音はー!!」
「あー!!すまんすまん!!ちょっと実験してただけだ!!お前、こんな威力あるなんて聞いてねぇぞ…。」
「それでゴーレム倒してんだからな。」
「そういえばそうか…、これ俺に贈り物として贈ってくれない?」
「却下。」
レイの声が遠くの方から聞こえた。まぁ、そりゃびっくりするわな。近くで轟音がしたら。
「もうこれで十分だろ、一種の攻城兵器だぞ。」
「貫けない魔物がいるんだから仕方ないだろ。…そうだな。次は最終兵器作っとくか。」
そう言いながら半分残った鉄を手に取る。
魔力を込めながら念じる。…これでどうだ。
「…また矢ですか?」
「まぁ、そうだな。でも全部鉄製だしな。…ちょっと見とけ。おっさん、弓よこせ。」
「お、おう。」
椅子から立ち上がりティスカ公から弓を受け取る。
ギリギリと音を立てながら鉄の矢を引き絞り建物に向かって放つ。
ビュッと空気を切り裂く音を立てて矢が飛んでいく。それをうまくコントロールする。
緩やかに上に向かってホップさせ、屋根を貫くように軌道を確保。
ズカンと音を立てて屋根を貫通、そのまま左下に進路を向けさせて次の家に標的を定める。
上から屋根を貫通、そのまま横の壁を破って矢が出てくる。それをまた次の家に。
二軒ほど家を貫いてからゆっくりとなった矢をこちらに戻る。
「…よし、こんな感じだな。」
「ちょっと!!うるさいですわよ!!!」
「…意味分かんね、なんで矢が途中で曲がるの?俺は夢でも見てんのか?」
「主様、最近やりすぎなのでは?」
「え?そうか?でもこれコントロールするのめっちゃ苦労するぜ?」
矢に俺の魔力を通してリンクさせて俺の思い通りに動かせるようにした。
しかし思ったよりも速度が乗ってると制御しにくい。それでも建物とか盾にされても関係なくなったのはでかいな。
鉄の矢をふわふわと頭上に浮かべながら椅子に座る。
「あぁ、それデフォルトで浮かべられるんだ…。」
「ん?まぁ、威力高めたいから射っただけだけど一応動かせるよ。」
ヒュンヒュンと頭上で矢を回転させる。完全にサイコミュ兵器だなこれ。
「…後2本くらい作ろう。」
「まだ増えるのかよ、これ…。」
力なくティスカ公が椅子にうなだれながら座る。それを横目に次の鉄の塊を使い二つ程同じのを作り出す。
「…よし、完成だな…。」
合計で三本、俺のファンネルが完成した。
「…むむ、結構、難しいな、これ。」
「いやいや、それって両手両足で違うことやってるようなもんだろ?当たり前じゃねぇか!」
「さっきからうるさいですわね…、なんですのそれ?」
「マスター、また変な物作ったんですか。」
「いや、最終、兵器を、作ったんだが。」
三つ同時に動かすのはかなり辛い、どこか少しでもバランスを崩すとフラフラしてしまう。
その姿を水浴びから帰って来てすっきりしたシェリー達に見られる。
集中してこれなので3本同時は無理だな。
「これのどこが最終兵器なんですの?さっきの音はこれですの?」
「おい、レイ!。マジで危ないからやめとけ!」
レイがツンツンと浮かんでる矢を突く。それを必死の形相で止めるティスカ公。
「えぇ…。このふわふわ浮いてるのがそんなに?」
「リードが言った通りだ。…最終兵器ってのはマジだ。」
「…ふぅ、無理。三本は無理。」
机の上に矢を落とす。ドスっと音を立てて机に突き刺さる。
「あ?え?そういえばなんで浮いてたんですの?」
「…そういうことだ。」
さっと顔が青くなるレイ、神妙な顔で頷くティスカ公。
まぁ、最終兵器だししまっとくか。…一本はいつでも出せるようにしておこう。