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「る…、る、るる…。あっ!ルイズ・フランソワーズ・○・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールたん!!あっ待った!たんはなしで!」
「…それ人の名前ですか?」
「名前っていうか…、概念…かな?」
「主様のしりとりはよくわからない言葉が出てきて難しいです。」
「…おーい、終わったんですけどー。」
「見てる見てるって。次、銀は、る、な。」
目の前で流れるようなコンボでシャドーを倒したパーティーを見ながらのしりとり。なかなかに乙なものである。
「マスター、なにげにさっきの話だとシャドーやばくないですか?」
「あん?そりゃ厄介だとは思うけど、姿がちょっと似てるだけだぜ?」
「そうじゃなくて、戦い方までそっくりだったんですけど。…もしマスターに化けられたら?」
「…盲点だった。」
そうだった。俺が二人になったらやばい。いや俺よりもどうせずっと弱いんだろうけど戦い方までそっくりはまずいな。
何しろ中継されてるからな。広場の連中に俺の戦い方を見られるのは非常にまずい。
「あぁ、大丈夫だろ。お前ここに来てから戦ってねぇだろ?流石に見なきゃシャドーだって真似できねぇよ。」
ティスカ公がこちらに来ながらそう言う。
「なら安心だな。…念の為にやれることはやっとくか。」
情報操作で俺と銀とシェリーのステータスを書き換えておく。
俺の予想が正しいならこれで大丈夫だろう。ステータスまで真似されたらシャレにならんしな。
シャドーは厄介、りーどおぼえた。
「…暇だなー。」
「ですね…。」
「【ウォータースピア】!!」
「吹っ飛びなさい!」
「おら!はっはー!もっとこいや!」
絶賛暇してる俺と銀、対照的に戦い組は皆頑張ってる。
魔物の大群とやりあってるって言ったほうがいいかな?
誰かさんが興味本位で魔物呼ぶスイッチ連打しちゃうからこんなことになる。
連打してたら結構な数の魔物が現れちゃった。総勢30匹くらい。
「がんばれー。」
「誰のせいだと!もう、【ウォーターカッター】!」
「まぁ、こうして治癒魔法使ってるんだし。ちょうどいい訓練になるだろ。」
俺と銀は屋根の上で見物である。シェリーの水魔法で屋根の上に乗せてもらった。
これなら戦いの邪魔になるので避難させたって感じに見えるはずだ。
「それでも!体力は減りますわ!」
何体目かのゴブリンを吹き飛ばしたレイがそう言う。
「まぁ、若いうちの苦労は買ってでもしろって言うし。…しょうがねぇな、手伝うか。」
「リードが戦ったらシャドーに真似されんだろうが!」
「あぁ、忘れてた。危ない危ない。」
まぁでも俺がやってるの見てもコピー出来るとは思えんけどなぁ。なにもしてないのに魔法使ってます状態だしな。今現在も。
「ふぅ…、いい訓練になりますわね!」
クラウ夫人は姿勢を低くしながら魔物の間を走り抜け、的確に足を狙い機動力を奪っていく。
「さっきからヌルかったしな!これくらいの激戦がちょうどいいわ!」
ティスカ公は持ってる両手剣を振り回しクラウ夫人が機動力を奪った魔物を真っ二つにしていく。
「はぁはぁ…、本当にリードって、余計な事、ばっかりしますわね。」
「レイ、息が上がってんぞー。」
「うるさいですわ!」
ティスカ公が仕留めそこなった魔物をレイが狩るのだが息が上がってて動きがちょいと鈍い。
「まぁ、マスターのことなんて今に始まったことじゃないですから。」
それをカバーするようにシェリーが魔法を放つ。乱戦になってるのにちゃっかりシェリーも屋根の上の安全な場所で魔法使ってる。
「悪かったと思っている!でも反省はしてな、あぶな!」
胸を張って言ってたら魔物に魔法を撃たれた。今消滅させることもできんからな。避けるしかない。
「そんなとこで威張ってるから…。」
「銀はちゃっかり見えないように伏せてんだな。」
「我が動いたら問題になりそうなんで、なら最初から隠れてますよ。」
確かに、銀なら癖でバッと飛んでかわしそう。
「おっしゃラスト!」
ティスカ公の威勢のいい声が響く、どうやら終わったようだ。
「よーし、後2回くらい繰り返すかー!」
「やめろ!」
「シャレになりませんわ!」
「はぁはぁ…。」
「一発食らっときますか?」
「それは流石にないと思います。」
一斉にみんなから殺気の篭った目で見られた。冗談だから…。