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「これなら別に俺たち手伝わなくてよくない?」
「アホか、序盤だからな。それに魔法の援護って凄くいいんだぞ。怪我したらどうすんだよ。」
「まぁそうか。シェリー出来そうか?」
「前の依頼の時みたいにすればいいんでしょう?楽勝ですね。それにマスターから聖魔法もならってますからね、治癒も大丈夫です。」
確かにあの時みたいにやればいいか。力を出しすぎないようにすれば大丈夫だし。
前に言ってたようにシェリーには聖魔法を覚えてもらっていた。俺だけが回復出来るってのは非常にまずいしな。
基本後衛にいるシェリーにも覚えてもらった。そのうち銀にも覚えてもらおうと思ってる。
「まぁ、基本的にシェリーは毎回その位置で戦ってもらおうと思ってるからな。ティスカ公を生贄にささげて戦い方覚えてくれ。」
「わかりました。」
「それわかっちゃうの…?」
傍から見ると作戦会議してるように見えるんだろうな。実際作戦っていうかただの世間話だけど。
「まぁ、ここから先まだまだ魔物が出てくるからな。それなりに援護してくれ。」
「わかってますよ。」
「シェリーさんが本気出すとそれだけで終わってしまうので何か縛りを設けたらどうですの?」
「確かにな。いい案だな、レイ。シェリー、出来るだけティスカ公達の動きをサポートするように魔法を使ってくれ。もちろん妖精魔法は使わないで。」
「めんどくさいですね。まぁ、マスターの命令なら仕方ないですが。」
ニヤリとレイが笑った気がした。そういえばこいつが活躍したら作ってあげるって約束したんだよな。策士かよ。
「そうと決まったら行くぞ。あんまりもたもたしてたら終わらねぇからな。」
そう言って道なりにティスカ公が歩いていく。それに俺たちも続くように歩いて行った。
それなりに道中は楽しかった。
まず、普通に生活してたらお目にかかれない罠が新鮮だった。ティスカ公達は流石と言ってよく、すぐに罠に気がついて教えてくれた。
微妙に目を凝らすと土を掘り返してあるような見た目の落とし穴。見つけたら俺がバレないように土魔法で穴を塞ぐ。
鳴子の罠。別に消耗してないので経験値稼ぎの為にわざと利用させてもらう。主に俺が勝手に発動させる。
スイッチ式の矢や槍などが飛んでくる罠。どこかしらに連動している発射口があるのでそれを見つけて対処する。ティスカ公がブリッジで避けたのは流石だと思った。
それに魔物の種類も豊富だ。レイが説明してくれたがそれなりにこの辺りでよく見る魔物らしい。
俺も森でゴブリンやらオークやらを蹴散らしてきたが見たことないのもそれなりにいた。
その中でも少々特殊なのがシャドーと言う魔物だ。
「お、シャドーか。…厄介だな。」
ティスカ公が毎回の如く一人で偵察してきて報告をする。どうやら厄介な奴がいるらしい。
「今回は誰ですの?」
「お前だな、クラウ。まぁ、サクっと終わらすか。」
「何?シャドーってなんなの?」
勝手に納得してるティスカ一家に質問する。
「あぁ、知らねぇのか。シャドーって魔物がいるんだが、そいつらは人に化けるんだ。」
おい、かなり厄介じゃねぇか。はぐれたりしたら化けられて後ろからグサッなんてシャレにならんぞ。
「それヤバくない?」
「大丈夫だ。基本的にあいつらは言葉を発しない。それに姿を見ればわかると思うが…。ほれ、来たぞ。」
そう言ってティスカ公がシャドーがいる方向を指差す。
黒い、黒いクラウ夫人だ。なんていったらいいんだろな、本当に影が実体化したらあんな感じになりそうだ。
だからシャドーなのか。
「あぁ、なるほどな。んで実力は?」
「ランクにもよるが基本的に本人を超えることはないな。戦い方は本人そっくりだが。」
ジリジリと距離を詰めてくるシャドー。てことはダガーとバックラーを使ってのヒット&アウェーか。
「まぁ、問題ないか。」
「知り合いの姿を攻撃するのは少し気が引けますが。…【ウォーターボール】」
「シェリーさん、俺攻撃するときいつもウキウキしてますよね…?」
シェリーがシャドーに向かって【ウォーターボール】を放つ。それを合図に前衛が走り出す。
あくまでシェリーの魔法は牽制だ。よけられる前提で撃ってるので当然横によけられる。
そこにティスカ公が走り込んでいき、おお振りの一発。これも躱される。
しかし、そこにクラウ夫人がダガーを足に向かって投げ込み体勢を崩す。
レイが懐に潜り込んでの一撃。流石にこれは避け切れまい。シャドーはかろうじてバックラーでガードするが大きく吹っ飛ばされる。
「…【ウォータースピア】」
そしてシェリーが止めに地面から水の槍を突き出し、吹っ飛ばされたシャドーを貫く。ゲームセット。
敵が一匹の場合、大体の流れがこれだ。
シェリーの牽制、ティスカ公の一発、クラウ夫人の翻弄、レイの潜り込み。
シェリーの牽制で吹っ飛ぶやつもいればティスカ公の一撃で真っ二つになるやつもいるが基本はこれ。
複数の場合はまた全然違う戦い方なんだけどな。
ちなみに俺と銀は暇すぎてしりとりしてる。