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「どうしたんですの?急に黙り込んで…。」
「いや、ティスカ公とかと比べると俺ら貧弱だなってさ。」
「それは嫌味かな?俺らに喧嘩売ってるのかな?」
「あぁ、ちゃうちゃう。実力云々じゃなくて装備面とかさ。」
勘違いされたので否定しておく。
「俺公爵だぜ?そりゃいい武器くらい持ってなきゃな。それにリードも材料さえあれば作れるんだろ?どうせ。」
「まぁ、そうなんだけどさ。今回の報酬で俺特注の装備作るから見とけよ。」
「くっそ、ちょっと羨ましい。」
「おっさんはその武器似合ってるから使い続けるのがいいと思いました。」
ティスカ公はニヤリと笑いながら満更でもないのか少し素振りをする。
「まぁ、ここで話してるのもなんだし。進むか。先頭は俺、次にクラウとレイ、そしてシェリー、そんでリードと銀な。」
「後ろから来られたらどうすんだよ。」
「そりゃお前…、頑張れ。」
「無責任!いやまぁ後ろから接近なんて許さねぇけどさ。俺がシェリーに知らせてシェリーが処理すればいいか。」
「それで決定な!」
そう言ってティスカ公が武器を構えて先頭を進む。…このまま一人で行かせても面白いな。まぁ皆ついていくけど。
ちょうど入ったところが門付近だったのでそこから街に進むようにできているらしい。
「今回の迷宮はちょっと特殊なので普通はこうはなってませんわ。多いのが洞窟風ですわ、塔などをモチーフにしてあるものもありますわ。」
レイが補足のように説明してくれる。
「へー。あっ、おっさん。その角曲がったとこに3匹くらいいるぞ。」
「俺だって気配くらいそれなりによめるわ!3匹ね、了解。」
門から進みながら街の中を歩く。街の中のいたるところに魔物がいる感じだ。
ティスカ公が俺たちに止まれと合図をし、曲がり角から警戒しながら顔を少し出す。そして、下がってくる。
おびき出すつもりだろう。戦いやすい場所に誘い込むのは基本だな。こっちは既に臨戦態勢に入ってる。
「…くるぞ。」
そう言ってティスカ公が剣を構える。案の定誘われた魔物はのこのことこちらの通路まで入り込んできた。
神眼で確認するが、ただのゴブリンファイターだ。ちょっと慎重すぎないか?
とりあえず、ティスカ公達の戦いを見る為にシェリーには魔法は使わないように言っておいた。
「おっしゃ、いくか!」
ゴブリンファイターがこちらに近づいてくるのを見つつティスカ公が走り出す。
続いてクラウ夫人とレイも走り出す。
「おらぁ!」
ティスカ公が先頭のゴブリンファイターに向けて大剣を横薙ぎに払う。ゴブリンファイターは持っていた槍で慌ててガードする。
しかし、流石ティスカ公。槍ごとゴブリンファイターの体を引き裂き、まずは一匹目。
その後ろにいたもう一匹のゴブリンファイターがティスカ公を狙って動こうとする。
そこにティスカ公の後ろからクラウ夫人が飛び出しゴブリンファイターがティスカ公目掛けて降ってきた槍を盾でいなす。そしてダガーで足を突き刺す。
「本当に危なっかしいですわ。」
「まぁ、そんな奴の攻撃なんて効かねぇけどな。」
3匹目のゴブリンファイターが横にずれてクラウ夫人を攻撃する。それをバックステップでクラウ夫人が距離を稼ぎつつ躱す。
「無駄ですわ!」
レイがクラウ夫人を攻撃してきたゴブリンファイターの懐に飛び込む。その距離なら槍はもう無意味だな。
ボディに一発レイのストレートがめり込む。すかさず、手甲を発動させゴブリンファイターを吹っ飛ばす。うん、死んだな。
「なんか、レイが張り切ってんな。」
「大方リード関係で何かあるんですわ。」
ティスカ公が最後の一匹の槍を叩き壊し、クラウ夫人が足を傷つけ動けないようにする。最後には頭上からティスカ公に真っ二つにされたゴブリンファイターがそこにはいた。
「あれがチームプレイってやつだよ。シェリーさん。」
「いやいや、主に一人でやるのはマスターですよね、いつも。」
「確かに、あの連携は厄介そうですね。」
のんびりと観戦してた俺らはティスカ公達の戦いぶりに感心する。
戦いの基礎が出来てるよな。俺らブッパするだけだもん。
「お前ら休んでんじゃねぇよ!」
「いやー、どんな戦いするか見たかったんで。シェリーに待機命令しときました。」
「まぁ、いいけどさ。どうだったよ?俺らの戦いっぷりはよ?」
自信たっぷりにティスカ公が言ってくる。どや顔うぜぇ。
「え?素直に言っていいの?」
「待った。弱いとか言われたら立ち直れない。」
「いや、素直に感心した。やっぱチームプレイの基礎が出来てるよなって。」
「…よかった、本当によかった…。」
これが歴戦の戦士だぜ?戦ってる時はかっこよかったけどさ。