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「フイ盗賊団とか言ってたけど、ティスカ公知ってる?」

「おう、そりゃな。そこの首領と参謀がいい腕しててな。何回か部下にならないか誘ったんだけどダメだったわ。」

見境なしかよ、こいつは。

「まぁ、有名だったらしいから知ってるか。今は見るも無残だったけどな。」

次期首領があれではお世辞にもいいとは言えない。

多分参謀って爺のことだろう、あの中で実力がありそうなのは爺でついでヒューイってとこだしな。

俺にとっちゃどんぐりの背比べだけど。

「ふむ、でも俺の城に潜り込んだんだろ?出来るじゃねぇか。」

「警備がザルすぎんよ、どうも本当に運がよかっただけみたいだったし。」

「ふーん、まぁいいか。それで今日の予定だが、このまま朝食を食べてから広場で迷宮にはいるからな。準備しとけよ。」

「まぁ、準備もなにも済んでるしな。…シェリーも大丈夫だよな?」

「公爵相手ならいつでもボコせますよ。」

「それで十分だ。」

瞬時に頭下げてるティスカ公はさすがだな。

「まぁ、皆で一緒に広場行くからな。食べ終わるまで待ってくれ。」

ちょうどいいタイミングで食事が運ばれてきたのでティスカ公達が食べ終わるのを待つとするか。

それにしてもやっぱ公爵だけあってマナーいいんだよな、食べ方が綺麗だわ。

「…そんなに見られると食べづらいですわ。」

「いや深い意味はないんだが、食べ方が綺麗だなってな。…なぁ、シェリー?」

顔赤くしてレイが言ってくるからこっちも少し照れちまう。

「はぁ?あれくらいなら私にも出来ますけど?」

「すまん、話振る相手間違えたわ。…ていうかお前いつもスプーンじゃん、絶対ナイフとか使えないだろ。」

「楽勝ですって。」

毎回果物しか食ってないからな。必然とスプーンになるわけなんだが。

そういえば俺もこっちに来てからフォークとかしか使ってないな。

箸があればってことを何回か思ったが自分で作ればいいのか、…ミスリル製の箸、か。

ないない、もったいなさすぎる。無難に木で作ろう。


さながら英雄の凱旋のように城の扉から門までは兵士がズラッと並んでいた。

扉開いた瞬間に少し身構えちまったぜ。どこからかファンファーレも鳴ってるしな。

「すごいだろ?」

「流石公爵ってとこですね。」

「まぁ、これで驚かせたかったってのもあるからな、一緒に行くぞって言ったのには。」

ティスカ公が自慢げに言ってくる。確かに驚いた、訳が無い。こちとら気配で丸分かりである。

「こっからもっとすごいぞ。広場までの道に民衆が並んでるからな。」

「まぁ、みたら分かる。パレードだな、もう。」

「だな。」

流石にティスカ公の横を歩くわけにもいかないので後ろに下がる。

一番前に先導の兵士、次にティスカ公で一歩後ろにクラウ夫人、その後ろにレイ、そしてシェリー、俺と銀って感じだ。

そのまま城から広場までパレードである。ティスカ公がいったように道の両側に民衆が押しかけている。

それを兵士が止めてって、もう向こうの世界であったスター選手の入場みたいな感じだな。

「すごいですね、やっぱり。」

いつの間にか隣に来ていたシェリーが話しかけてくる。

「一応順番守ったほうがいいんじゃね?」

「なんか一人で歩くのって嫌じゃないですか、それにあんまりジロジロ見られるのも好きじゃないですし。」

「まぁ、わかるけど。一応シェリーも主役だぜ?手ぐらい振ったら?」

「嫌ですよ、恥ずかしい。」

ティスカ公やクラウ夫人やレイは慣れてるのか民衆に手とか振ってるけど俺らは初めてだしな。

それに俺が手を振ったからって誰も答えてくれんだろう。

「…いいこと考えた!」

「待ってください。凄く嫌な予感がします。」

シェリーの静止を無視して魔力を練る。

街の上、ちょうど広場に向かう方に向かって頭上から雨を降らすように【ウォーターレイン】を発動させる。

広範囲に通り雨程度にだ。ちょうど今日は晴れだ。前に一回やったことあるな、これ。

「ちょっとマスター!」

「余興余興。」

晴れなのに突然降ってきた雨に皆驚いているが、ティスカ公達はばっちり俺見てる。シェリーのせいにしようとアイコンタクト。

「…前もこんなんあったよな。」

「…あの時はもう少しロマンチックでしたけどね。」

そう言って空を指差す。陽の光に照らされて虹が出来上がっている。

その様子を見ていた民衆は、みな驚き騒いでる。

「まったく、しょうがねぇな…。見たか!!今の余興はシェリーの魔法によるものだ!これでこの人の実力はわかってもらえたと思う!」

そういってティスカ公がシェリーの隣に来てシェリーを褒め称えるように民衆に大声でアピールする。

流石ティスカ公、わかってるな。

「なるほど、マスターは私を困らせたいんですね。」

小声でそういいつつ、民衆に向かって苦笑いで手を振ってるシェリー。貴重なシーンだ。

民衆もシェリーを褒め称えるように大歓声を上げる。いい仕事したわ、俺。

「いやー、いい事した後は清々しいな!」

「やるなら事前に言っとけよ。」

「まぁサプライズってことで。」

ティスカ公に耳打ちされるがさっき思いついたんだからしょうがない。

全てはシェリーが民衆に注目されて困るシーンが見たい為だけの行為だからな。

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