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ロユラスの母

「フローイは蛮族タレヴォーを積み、ルージは馬を積む」

 アトランティスにそんな言葉があった。過去の海外遠征で、アトランティスの国々は各地の財貨や領土を求めて転戦した。現在のアトランティスの様相を現すように、各国は連携がとれず一致団結して戦ったわけではなく、各国国王の望むままに戦をした。その中で、たまたま、王の気質が合ったフローイ国とルージ国は共に戦うことが多く、この二国は比較されることが多い。

 銀山など鉱物資源に富むフローイ国は、それを採掘する労働力を欲し、戦で得た捕虜や降伏を拒んだ各地の小部族の民を鉱山奴隷としてフローイに送った。一方、もともと勤勉で労働を苦にしないルージ国の人々は、日々の生活の補助に使う奴隷など欲しなかったし、大規模な採掘をする鉱山もなかった。ただし、ルージの人々は異国で初めて見た馬に興味を示した。慣れれば人に忠実に仕え、人や物資に運搬に、人の何倍も役立つというのである。彼らは帰国の船に奴隷ではなく馬を積んだ。

 その差は現在の両国の姿の違いに繋がっている。フローイは奴隷たちのおかげで銀を始めとする鉱物の採掘量を増やし、財力で潤っている。ルージはアトランティスにおいて、馬の一大産地となった。

「銀細工を求めるならフローイへ。名馬を求めるならルージへ行け」

 現在の商人たちから両国はそう語られる。


 ロユラスの母はギリシャの小部族出身の女性だが、奴隷という身分ではない。二十年以上にわたるアトランティスの海外遠征の最後の年に、リダルと共にルージにやってきた。強引に連れ去ってきたのだろうと噂されていたが、ロユラスはリダルからそのいきさつを聞いたわけではない。

 母を故郷に帰して懐かしい景色を見せてやりたい。それがロユラスの密かな願いである。ただ、その故郷を母に問うた時、母は哀しげな顔をするのみで痛ましい記憶を封じるように思い出話をすることがない。触れてはならない事らしい。

 ロユラスに出来ることは、母の言葉を学ぶことだけである。母にとって懐かしい言葉を交わして母の心を慰めるのである。


 そんな中、ロユラスはふと気づいた。母のフェリムネは偶然に当時ルージ王子だったリダルと出会い、アトランティスに渡ってきた。同じ時期、同じ土地で捕らわれた人々が奴隷としてフローイに渡ってきたはずだった。その奴隷の人々の中に母フェリムネの故郷のことを知る人々が多数居るに違いない。母の故郷のことを知りたい。ロユラスはそう考えたのである。

(フローイへ行かねばならない)

 ロユラスはそう決心してこの地へやって来た。もちろん、その目的は母には伏せて銀細工の商売を考えているとだけ伝えている。


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